2004年の「王の帰還」日本公開から20年の時を経て、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ最新作『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』が、12月27日(金)より全国劇場公開中。
本作は、〈一つの指輪〉をめぐる壮大な冒険を描き、アカデミー賞®最多受賞を果たした『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の200年前に遡る物語。J・R・R・トールキンの原作「指輪物語 追補編」に記された、その始まりのエピソードを、3部作を監督したピーター・ジャクソンが製作総指揮をとり、「精霊の守り人」「東のエデン」の神山健治監督がメガホンを握り長編アニメーションとして映画化。SOLA ENTERTAINMENTがアニメーション制作を担当。全米で3000館以上、全世界で数万スクリーンに及ぶ拡大公開が決まり、日本語吹替版での上映を希望する国も複数あるという本作。日本語吹替版声優は、王女ヘラ役を小芝風花、ヘルム王役を市村正親、ウルフ役を津田健次郎が務め、他にも豪華声優陣が顔を揃えた。
この度、アステージではヘルム王役を務めた市村正親さんにインタビューを遂行! 王として民を守り、父として娘を思うヘルムを力強く演じ切り、自身も1人の父親として気持ちが重なる部分があるという彼に話を聞いた。
― 収録を終えて、手応えはいかがでしょうか?
ヘトヘトでした (笑)、でも、達成感はあります。あれだけのたくましい男の役ですから、なかなか難しかったけれど、予告編収録のときになんとなくイメージは湧いていたので、エネルギーを蓄えながら、本番では集中して臨むことができました。途中で声を枯らしてはいけないので、そこが一番気を使ったところです。最後に監督から「OK!」が出たときはホッとしました。
― 映像をご覧になっていかがでしたか? (インタビュー時は映像のみ鑑賞済みでした)
素晴らしい映像なので、それに負けちゃいられないと思って必死でした (笑)。
― ヘルム王の印象、魅力をお聞かせください。
まず、見栄えが良くてカッコいい。娘のために命をかけ、王として民を守るのですが、それが壮絶。民を想う気持ちが全面に出ていて、裏切りや非道は許さない男です。本当に凄くて、僕がこの役をやるのにふさわしいのかと、考えてしまいました。凄い仕事を受けちゃったなと・・・(笑)。それでも、1つ1つ監督と相談しながら積み重ねていきました。娘との別れのシーンでは、僕も舞台に立っているような気持ちでやっていました。
― そんなヘムル王役を演じることが決まったときのお気持ちは?
いつもお受けする仕事は、いい仕事をしたいなと思っています。僕は体はあまり大きいほうではありませんが、俳優は50年以上やってきているので、社長とか親分とかの役も多いし、僕の思っている魂と心意気でこのヘルム王を作ろうと思いました。自分自身も父親なので、娘を絶対に守るという気持ちはよくわかりますし、最後に放つ言葉は特に印象的ですね。
― ヘムル王の父親として特に印象的なシーンやセリフはありますか?
フレアラフに対して怒る場面があるのですが、危うくヘラが奪われて死にそうになるんです。その時にヘルムが非常に狂気になります。でもそれは、やはり親だからこそだと思うので、気持ちはよくわかります。あとは、ヘラに向かって「お前だけは守りたかった。そこまで強い娘に育っていたとは。私には見えてなかった・・・」というセリフが凄く染みてきました。
― 今回は声優として臨まれていますが、声の仕事の面白さと難しさをどこに感じていらっしゃいますか?
自分の体型がどうであろうと、自分の魂がその役になれば、その役ができる。魂がその役になっていればヘルムもできるし、(「サザエさん」の)タラちゃんもできると思うんです。なので、声優さんや俳優さんのイマジネーション、想像力が役に反映していくんじゃないかな。俳優はそういうことをするのが好きな人なんです。他人の人生を生きてみたいと思って、僕はこの世界に入ってきました。疑似体験でも目をつぶっていれば、自分がそこのヘルムとして存在していると言い切れるんです。こんな強烈な役ができるなんて。そこが楽しいから難しければ難しいほどトライのしがいがある。難しいから前に行こうとするんです。
― 舞台は目の前にお客様がいらっしゃいますが、今作では画面の向こうにお客様いらっしゃいます。声だけのときも観て下さる方のことを考えて演じられているのでしょうか?
舞台のときもお客さんのことは考えていません。お客様はお金を払って観に来て、自分の想像力を働かせているんです。杉村春子さんは、幕開けにとっても小さな声で話すらしいんです。与えないでお客様の想像力の中に入っていく。僕も1000人、2000人の前だろうが関係ないです。声はマイクで音響さんがやってくれるので。僕はそこで生きていればいい。だから本当はね、(今回も)もう少し10日くらい稽古してから収録したいくらいでした(笑)。
― 今作は、シェイクスピアの舞台劇にも似たイメージを感じますが・・・。
そうですね。僕はこれまで「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「ヴェニスの商人」「マクベス」「リチャード三世」を演じてきましたが、今作は親子の話でもあるので、ちょっと「リア王」の布石なのかなと感じます。リア王も三女のコーデリアに対する思いが強いので、ヘルム王の娘ヘラに対する思いには似たものがあるんじゃないかと。あと他の裏切りもあるし。シェイクスピアは室内劇ですが、今作では大自然の舞台の中で、とてもシェイクスピア劇的な部分をたくさん感じることができました。
― 正門の扉でのシーンはとても感動的です。強い父を見てヘラ王女も強くなっていたと思います。市村さんご自身はお子さんたちにどういう姿を見せていきたいと思われてきたのでしょうか?
息子が僕の芝居を観始めたのは、ミュージカル「ミス・サイゴン」からです。「ミス・サイゴン」は僕の代表作でもありますし、トニー賞を獲っている素晴らしい作品です。それを観始めたところから、僕の父親業が始まったような気がします。それから「スクルージ」「ラ・カージュ・オ・フォール」「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」などを観ている中で、息子は、父親として家にいたら普通の親父だけれど、板の上(舞台)に上がった僕を見て、『パパってカッコいいね』って言っているそうなんです。僕が仕事を大事にていねいに仕上げていくことが、僕にとって親としての教育なのかなと考えています。
― 最初はヘラが戦いに巻き込まれていくことに心配もし、それゆえの怒りさえあったと思いますが、市村さんのご子息も同じ道を進まれて、13歳のときにミュージカルで共演もされています。同じ道を進むと聞かされたときはどんなお気持ちでしたか?
僕の狙い通りだなと思いました(笑)。子供のころから舞台を観せて、「いつかこの舞台の真ん中に立つんだぞ」と3歳くらいのときから話していたので。息子も「それは今でも覚えている」と言っていました。これから色々な体験をしていく中で、不安や心配はありますが、それは生きていく上で困難なことには当然出逢うわけだから、それを乗り越えなければいけませんし、1つずつクリアしていけば、また次に登る山が見えてくるはず。徐々に進んでいって、自分が「これだ!」と思うものを見つけてくれればいいなと思っています。僕はその成長を見守るだけです。
― 市村さんから見た本作の一番の見どころは?
やはり、ヘムル王の娘に対する愛情、その気持ちが詰まったセリフが一番の見どころじゃないかと思います。娘の成長を見て、いろんな複雑な思いが出ていると思います。
― では最後に、これから映画を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
「ロード・オブ・ザ・リング」の実写版シリーズも素晴らしいですが、このアニメ版も本当に面白いです。実写版では表現できない、アニメ版ならではの迫力も楽しめると思います。ぜひ、劇場でご覧ください。
【市村正親(Masachika Ichimura)】
1949年1月28日生まれ、埼玉県出身。
1973年に劇団四季の「イエス・キリスト=スーパースター」でデビュー。以後、退団後もミュージカル、ストレートプレイ、一人芝居など様々な舞台を中心に実力派俳優としてテレビ、映画でも活躍。1月からミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」、3月からミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」が公演予定。
撮影:ナカムラヨシノーブ
映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
【ストーリー】
騎士の国ローハンは偉大なるヘルム王に護られていた。しかし突然の攻撃を受け、王国の平和が壊されていく。すべての運命は、一人の若き王女ヘラに託された!最大の敵はかつて共に育ったヘラの幼馴染ウルフ。果たしてヘラは、国の民の未来を救えるのか!? “あの指輪”をめぐる壮大な冒険へと繋がる、まだ誰も知らない伝説の戦いの幕が開ける!
原題:THE LORD OF THE RINGS:THE WAR OF THE ROHIRRIM
監督:神山健治(『東のエデン』『攻殻機動隊S.A.C』「精霊の守り人」)
製作:フィリッパ・ボウエン、ジェイソン・デマルコ、ジョセフ・チョウ
製作総指揮:フラン・ウォルシュ、ピーター・ジャクソン、サム・レジスター、キャロリン・ブラックウッド、トビー・エメリッヒ
脚本:ジェフリー・アディス&ウィル・マシューズ、フィービー・ギッティンズ&アーティ・パパゲオルジョウ
ストーリー:アディス&マシューズ、フィリッパ・ボウエン
日本語吹替版キャスト:市村正親(ヘルム王)、小芝風花(王女ヘラ)、津田健次郎(ウルフ)、中村悠一(フレアラフ)、本田貴子(オルウィン)、坂本真綾(エオウィン)、斧アツシ(フレカ)、森川智之(ハレス)、入野自由(ハマ)、山寺宏一(ターグ将軍)、沢田敏子(老ペニクルック)、田谷隼(リーフ)、大塚芳忠(ソーン卿)、飯泉征貴(シャンク)、村治学(ロット)、勝部演之(サルマン)
字幕版キャスト:ブライアン・コックス(ヘルム王)、ガイア・ワイズ(王女ヘラ)、ルーク・パスクァリーノ(ウルフ)、ミランダ・オットー(オルウィン)ほか
ワーナー・ブラザース・アニメーション and SOLA ENTERTAINMENT制作作品
映画公式サイト:http://lotr-movie.jp
映画公式X:https://x.com/LotR_JP ハッシュタグ:#LotR #ローハンの戦い
配給:ワーナー・ブラザース映画
クレジット:LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI
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