映画『ラブ&ピース』の公開を記念して、7月10日(金)TOHOシネマズ新宿 スクリーン6にて特撮トークナイト開催された。園子温監督が初めて特撮を取り入れた本作。“特撮”に焦点をあてたトークイベントとあって、会場は多くの特撮ファンで埋め尽くされた。イベント冒頭、サプライズで劇中に登場する巨大特撮怪獣着ぐるみのラブちゃんが登場!ラブちゃんの巨大さに一瞬会場がどよめきに包まれるも、ファンからの「ラブちゃ~ん!」とのかけ声に手を振ってこたえるなど、一瞬でファンの心をつかんだ様子。
特技監督を務めた田口と音楽の福田を中心に、撮影中の秘蔵写真をスクリーンに映しながらのトークがスタート。進行役の大月から、本作での特技監督としての苦労を聞かれた田口は「園さんの演出を目の前で見れたのは楽しくもあり苦労もあり、実になりました。これまで低予算が多くてこんなに贅沢に特撮をしっかりやらせてもらったことがなかったので、結構いろんなことをやらせてもらって、実験みたいにできてよかった」とコメント。
ラブちゃんの撮影について、福田が田口に「しつこいくらい演技させてたよね。歩いていくだけのシーンを『はいもう一回』と30回くらいやらせていた」と投げかけると、田口は「特撮は普通1日40、50カットとか撮らなきゃいけないことが多いけど、3~4カットくらいしか撮らなかった」とコメント。また、「都庁が崩れるシーンは3日かかった」としつつ、「都庁は石膏でできているけど。中には紙や石膏、鉄筋が入っているものもあって、どういう風に崩れるかも計算してやった」と特技監督としてのこだわりをのぞかせた。
「シナリオを読んだら『ウルトラQ』みたいでこれは怪獣映画だと思った」という音楽の福田は、「実は57曲くらい書いてはボツをくらいまくったんです」と園監督とのエピソードを披露。「園さんは納得がいかないとずっと食い下がる。あるシーンで一時間くらい『あそこは俺の中では『時計じかけのオレンジ』なわけ」と、有名なベートーヴェン交響曲第9番の再現を熱望する園のこだわりを受け、「(第9とは)違うけどそういうようにしなきゃいけない。一つ一つ説明して、やっと納得してもらった。そのシーンだけで映画1本分くらいかかった」と苦労を吐露。「だけど、映画を見るとやっぱり泣けるんだよね」と苦労の末の仕上がりに、満足そうに語った。
特撮研究家の氷川は、本作について「連綿とつちかってきた毒のあるメルヘン。特撮でないと表現できないのを見せてもらった。一番グっときたのは、新宿都庁にむかうシーン。序盤の人生ゲームのシーンと重なった演出と、さらに最後に特撮シーンに集約していくお話なのがよかった」と大絶賛。また、長谷川博己演じる鈴木良一の同僚役を務めた大沢は、撮影がなかった日も現場に遊びに行っていたと言い、「西田(敏行)さんが出る地下のシーンでは、ぬいぐるみたちを後ろで動かす仕事を手伝っていた。他にも長谷川さんや神楽坂(恵)さんも一緒に後ろでぬいぐるみを動かしていて、みんなで作ったというか、それこそ映画の撮影現場だなとすごく楽しかった」と撮影中のエピソードを披露した。
また、『ラブ&ピース』を観たという樋口真嗣監督から田口へのメッセージが読み上げられ、「カメの怪獣が東京をメチャメチャにした映画の代表がこの一作で変わる!のかよ?ちくしょう!田口め!やりたい放題じゃねえか!悔しいが、でかした!」との熱いコメントに、田口は「平成ガメラを観てこの道を志した人間としては、カメのこの映画でこう言ってもらってうれしいですね」と感無量の様子だった。
この日は客席からの撮影もOKということもあり、イベント後にはラブちゃんがファンで囲まれる一面も。人気者のラブちゃんの姿に、福田は「今が特撮の撮影をしているみたい」とコメントし、大月も「『ウルトラQ』のピーターっぽいね」と満足げな様子。最後に田口は、「自分でもこの作品の特撮はけっこういけたなと思います、劇場で絶対みた方がいい特撮なので、見逃す特撮ファンがいないように、ぜひ連れてきてください」と会場にアピール。特撮ファン垂涎のエピソードが飛び出すトークに、ところどころ会場が大拍手に包まれるなど、大盛況のイベントとなった。
『ラブ&ピース』
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6月27日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国公開中
公式サイト: http://love-peace.asmik-ace.co.jp/
配給:アスミック・エース
(C)「ラブ&ピース」製作委員会
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監督・脚本:園子温
主題歌:RCサクセション「スローバラード」
特技監督 :田口清隆
出演:長谷川博己、麻生久美子、西田敏行ほか
【STORY】
うだつの上がらない日々を過ごすサラリーマン・鈴木良一(長谷川博己)。ある日、良一はデパートの屋上で一匹のミドリガメと目が合い、運命的なものを感じる。あきらめたロックミュージシャンへの道、まともに話せないが恋心を抱いている寺島裕子(麻生久美子)への想い・・・彼の人生を取り戻すのに必要な最後の欠片(ピース)、それが・・・そのミドリガメだった!