映画『ミッシング」の公開記念舞台挨拶が、5月18日、東京・新宿ピカデリーにて行われ、主演の石原さとみをはじめ、共演の中村倫也、青木崇高と、吉田恵輔監督が登壇した。
吉田恵輔がオリジナル脚本でメガホンをとった本作は、幼女失踪事件をきっかけに、情報の荒波に巻き込まれ翻弄されていく母の姿を描きながら、失ってしまった大切なものを取り戻していく人々をリアルに繊細に映し出す物語。
石原さとみが母親・沙織里に扮し、沙織里の夫・豊を青木崇、TV局の記者・砂田を中村倫也が演じ、他にも森優作、小野花梨、細川岳、有田麗未(ありたつぐみ)、小松和重、カトウシンスケ、山本直、柳愛、美保純ら豪華実力派キャスト陣が集結した。
4月に開催された完成披露試写会では、開始5秒で涙した石原だったが、この日も満席の会場を見渡し感慨深げ。中村に「ハンカチは大丈夫?」と心配されていた。
監督が「石原さんと3~4年くらい前から企画をして、長い時間がかかってやっこ公開することができました。余韻が残るような作品にしようと思って作りました」と言い、「きょうは余韻が残るように喋りたいんですけど、たぶん僕と中村さんは無理だと思います(笑)」と挨拶し、会場を沸かした。
様々な視点から観ることができる本作だが、「自身が好きなシーン、注目してほしいシーンは?」と問われると、石原は「美羽の(尋ね人の)チラシの目に画びょうが刺さっているところを見て必死にはがそうとするシーン」を挙げ、「美術が揃って、段取りのために現場に入ったときにはもうその状態になっていて、もう本当に苦しくなって、涙が止まらなくて・・・」と話し、「そのシーンが終わって車に戻ったら青木さんがいらっしゃっていて」と続ける。
すると、青木が「俺も(そのチラシを)見ちゃった。同じシーンじゃなかったけど、偶然見ちゃったんです。なんかね、ほんとに鬼過ぎる!」と言葉を詰まらせると、石原も「監督の発想が怖すぎる!」と言葉を重ねて、監督をちらり。監督も「俺も、病気だと思ってる」と認め、思わず中村が「え?こんなにディスられる日でした? 褒め言葉ですよ」と、あくまで作品の演出ということをフォローする場面も。
同じ質問に、中村は「会社の打ち上げシーン」と答え、「(砂田が)マジレスムードに入ってしまうんだけど、自分でもそういう瞬間がたまにあって、この描き方やふとしたときにちょっとした共感性を感じる」と、自分の中にあるものを感じたと話す。石原も「中村さん、そういうところありますよね。取材を受けていて思うんですけど、ちゃんと受け続けるとおもったら、凄い鋭く冷静に突っ込まれたりして、びっくりします」と同調。「自分の中でバランスを取っているのかもね」と屈託ない笑顔を見せる中村だった。
中村しかり、石原、青木とも役にぴったりとハマっていることに、監督は「嗅覚には自信があるから」とキャスティングに自信をのぞかせ、「人間観察の鬼ですね」と言われていた。
さらに、「最近自分が優しい気持ち、幸せな気持ちになったエピソードは?」という質問に、石原は「自分の子供にピッタリあったサイズの机を探していたんですが、どこにも売ってなくて。そうしたら義理の両親が手作りで名前入りのテーブルを作ってくださったんです。溢れる優しさを感じて凄く嬉しかったです」と微笑ましいエピソードを披露すると、中村が「俺に言ってくれたら作ったのに」と言い出す。実際にDIYを趣味としているという中村は「今度は親御さんと張り合いに行きます(笑)」と。石原に「ちょいちょいウソを言うから・・・本当だったんですね(笑)」と、驚いていた。
中村は「石原さとみ先輩」とし、「自分はちょけたくなる性分があって、(石原さんにも)恐る恐るちょけるんですが、毎回毎回つっこんでくれて、めちゃくちゃ優しいじゃんと思った」とニッコリ。青木は「昨日、この映画を観てくれた先輩俳優の友人からメールが来て、『本当に泣けて、いい作品に出られたね』と言ってくれた。その優しさが広がってくれたらと思いました」と語る。監督は「僕はポケモンGOを70代くらいのおばさんとよく一緒にやってるんですが、僕の自転車のかごに色々入れてくれるんです。先週はミスタードーナッツが入っていました(笑)」と笑い、会場もほのぼのムードに。
最後に、監督は「この作品は僕と石原さんにとっても大事で分岐点になった作品。1人でも多くの方に観ていただきたい」とアピールし、石原は家族と出かけたときのエピソードを披露しながら、「大きな公園でピクニックをしていたら、迷子のお知らせの放送が耳に入ってきて。大きな声でお母さんが叫んでいた。怖くなって私も40分くらい探して・・・、そうしたらサービスセンターで大号泣しているお母さんがいたんです。何か協力できることがあればと思ったら『たった今、見つかりました』と。安心した涙だったんだなと思って・・・。1年以上経っても沙織里が自分の中に住み着いているんだなと思った。これからご覧になる皆さん、どうか少しでも彼女の苦しさ、辛さが伝わったらありがたいし、誰かに優しく温かい言葉をかけてくださるような出来事、そういう人が1人でも増えていったらいいなと心から願っています」と声をかけた。すると、石原の言葉に隣に立つ青木が涙をこぼし、子を持つ父親の顔になっていた。
映画『ミッシング』
【STORY】
とある街で起きた幼女の失踪事件。あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。
娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。
そんな中、娘の失踪時、沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていく。
一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。
それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。
その先にある、光に———
石原さとみ
青木崇高 森優作 有田麗未
小野花梨 小松和重 細川岳 カトウシンスケ 山本直寛
柳憂怜 美保純 / 中村倫也
監督・脚本:吉田恵輔
音楽:世武裕子
製作:井原多美 菅井敦 小林敏之 高橋雅美 古賀奏一郎
企画:河村光庸
プロデューサー:大瀧亮 長井龍 古賀奏一郎
アソシエイトプロデューサー:行実良 小楠雄士
製作幹事:WOWOW
企画:スターサンズ
制作プロダクション:SS工房
配給:ワーナー・ブラザース映画
コピーライト:©︎2024「missing」Film Partners
公式HP:missing-movie.jp
公式X:@kokoromissing
※吉田恵輔監督の「吉」は<つちよし>が正式表記。
5月17日(金)全国公開