映画『女が眠る時』の完成会見が1月16日、東京・丸の内TOEIで行われ、主演のビートたけしをはじめ、共演の西島秀俊、忽那汐里、新井浩文が出席した。
『スモーク』や『メイド・イン・マンハッタン』で知られる香港出身の巨匠ウェイン・ワン監督の最新作『女が眠る時』は、オール日本人キャストで望む監督初となる日本映画。スランプに陥っていた小説家の健二は、海辺に佇むホテルで出会った初老の男・佐原と若く美しい女・美樹の謎めいたカップルと出会い、脳裏から離れなくなっていく。二人の姿をのぞき見るうちに、やがて常軌を逸した行動へと変化していく・・・。小説家・健二を西島、謎めいたカップルの佐原をたけし、美樹を忽那が演じる。
自作映画以外では『血と骨』以来12年ぶりの映画主演となるたけしは、「最初は西島くんが主役だったんですが、台本のミスプリかなんかで、いつの間にか主役になってしまいました」と笑うと、「実に時代のニーズに応えていない映画です。『007』や『スター・ウォーズ』などディズニーランドに行くような映画が製作されている昨今、ワン監督が直木賞や芥川賞に匹敵する知的映画を製作して・・・」と敬意を示すも、「すべて私のお陰です(笑)」と続けて会場を沸かした。
さらに、「自分の初期の作品では、今までの映画をぶち壊す意識で作っていたけど、あまりにも観客の動員数が少なくて、つい暴力やお笑い映画に走って損失を取り戻していたけど、今回は他人の映画ですから、損失を出しても俺のせいじゃない。自分の理想とする難解だけど知的な作品に、喜んで出演させていただきました」とジョークを交えて出演理由を説明。ハーヴェイ・カイテルやジュード・ロウから手紙などをもらったことも明かし、「俺もまんざらでもないなと思った」と笑った。
また、本作は第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品されることが決定。「国際映画祭に参加するということは、それだけに厳しい評価を受けることもあるかもしれませんが、映画というのはお客様に観ていただけるがベスト。今回は特に良い意見も悪い意見も出ると思うけど、そこが映画の面白いところ。昨今は興行収入ばかりが取り沙汰されますが、映画の良き時代をもう一度思い出させてくれるような作品ということでも、参加できるのは良かったと思っています」とコメント。
西島も、「目の肥えた観客のみなさんに楽しんでもらえたらいいなと思う」と語り、完成作品を観て「台本を読んだ時よりも、(完成作品は)サスペンスが増している。知的なワンさんのゲームにまんまと乗せられたなと思いました」と振り返り、作品の完成度に満足げ。
色々な別パターンを撮影したと語る忽那は、「出来上がりはどうなるんだろうと思っていた。なんとも長い間消化できなかった感覚が残って、すごく考えさせられました」と振り返った。
たけしの俳優としての魅力について、西島は「監督の指示に120%真摯にむかう、一俳優として入る姿勢が素晴らしい」と絶賛。新井が、「今作では絡んでいないので、なんとも言えないんですけど・・・(笑)。セリフがなく、無言でいるだけで狂気や色気が伝わるところがすごい。好きです!」と伝えると、「ありがとうございます。出来たら現金を送りたい」とたけし。「隣にいて悪くは言えないだろうよ。すみませんね(笑)」と笑わせた。
会見のあとに行われた試写会での舞台挨拶でもたけし節は止まらない。
「映画のキーワードをひとつ挙げるとしたら?」という問いに、「SMAPのトラブルです」と答え、会場は大爆笑。劇中でワンシーンしか出ていないという新井は「『あいつあんだけしか出てねえのによく舞台挨拶来たな』と思われるでしょうから、先に謝っておきます」と挨拶。すかさず、たけしが「私の『MOZU』よりいいでしょ。宣伝の方が多かった」と言って自身が出演した映画『劇場版 MOZU』で演じた役がらを引き合いに出すと、MCから「『女が眠る時』の話でお願いします」とたしなめられ、頭をかく場面も。
作品のテーマから、「自身の抑えられない好奇心」を問われると、「パンツの中身」と即答するたけしだったが、「かつて巨匠と呼ばれた人の作品を見ると、どういう発想でこんな絵が描けたり、作品がつくれるのかと思う。黒澤さんやピカソなど、素晴らしい芸術家たちにも大きな好奇心があって、そうやって文化は脈々と流れて大きなものになっていくんだと思う」と真摯に語った。
一方、西島は「新しい甘いものが世の中に出てくると、気になります」とゆる~い答えに。「なんだか役割が逆になっちゃったな」と真面目な答えをした困り顔のたけし。そんな西島に対し、「日本を代表する役者さんと同じ画面に出ることが光栄でございます。死んだお袋に見せたかった」と共演を喜んでいた。
新井が「抑えている好奇心ですが」と前置きをして「人を殺してみたいです。死んでみたいし、生き返ってみたいです。そういう経験できたら、(俳優の仕事に)活かせるんじゃないかなと。もちろんやっちゃいけないこととですが」と語ると、たけしは「怖い、この人」と新井から遠ざかった(笑)。
また、1月18日がたけしと新井の誕生日ということで、2人に忽那から花束をプレゼント。嬉しそうにしながらも「デヴィッド・ボウイも死んじゃったし、次は俺の番かと・・・」と、照れるたけし。最後まで笑いにつつまれたイベントとなった。
『女が眠る時』
出演:ビートたけし 西島秀俊 忽那汐里
小山田サユリ 新井浩文 渡辺真起子 / リリー・フランキー(特別出演)
監督:ウェイン・ワン
原作:ハビエル・マリアス「女が眠る時」
脚本:マイケル・K・レイ シンホ・リー 砂田麻美
(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会
公式サイト:http://www.onna-nemuru.jp/
2月27日(土)全国公開