映画『幼な子われらに生まれ』の完成披露試写会が、8月2日、東京・ニッショーホールにて行われ、主演の浅野忠信をはじめ、共演の田中麗奈、宮藤官九郎、南沙良、鎌田らい樹、新井美羽と、三島有紀子監督が舞台挨拶に登壇した。
直木賞作家・重松清の小説を原作に、荒井晴彦が脚本、三島監督の手で映画化された本作は、バツイチ子持ちで再婚した44歳のサラリーマンが、現在の妻とその連れ子、元妻と実の娘、妻の元夫、そして新しく産まれる命を巡って葛藤し成長していく姿を描いたヒューマンドラマ。主人公・田中信役を浅野、妻・奈苗役に田中、奈苗の元夫・沢田役を宮藤が演じる。
三島監督は「お芝居に見えないようにやろうと思った。本当にそこに存在する登場人物を見せていきたかったんです。セリフや動きは(台本通りでなく)変わってもいい。その場で感じた気持ちを大切に表現してほしいと思ったので、ワンテイクで撮ることを目指しました」と本作へのこだわりを明かし、浅野の印象について「浅野さんはお芝居という瞬間が一瞬もないんです。こんなにむき出しで向かって来られる役者さんは初めてでした。浅野さんに全て投げれば返してくれるだろうと思っていました」と語り、浅野への絶対的な信頼を明かした。
それを受け、恐縮しきりの浅野が「とても感じるものがある台本だったので、台本にしがみついてしまった。監督に色々と意見したり、どんどんわがままを言って困らせてしまいました」と述べると、監督は「それがよかったんですよ。一人ひとりの気持ちを確認しながらぶつかり合った化学反応を記録していったんです」と微笑んだ。
続けて浅野は「最終的には監督がとてもおもしろい形で着地してくれましたし、子どもたちに救われました」と、子役たちの活躍にも感謝の気持ちを示した。
田中は、自身が演じた奈苗役について「“家庭がすべての世界”というような女性」と伝える。「今まで演じたことのないような女性で難しかったです。映画を観ながら、自分でも『これ、誰?』と思ったほど」と話すと、監督は「今までとは違う、新しい田中麗奈が見られると思います!」と太鼓判を押し、田中の演技に期待を持たせた。
一方、宮藤は「なかなかひどい男の役ですので、映画を観ていただくと僕の株は下がると思います。なので(映画を観る前の)今が一番好感度がある状態です。映画を観ても嫌いにならないでください!笑」と観客に懇願。「今まで、死んだ人、死んでいる人などの役が多くて、生きている役は久しぶりでした。でも生きていてもクズでしたね。奥さんや娘の悪口ばかり台本に書いてあるので、言ってて気持ちよかったですよ」とあっけらかんと話し、会場を沸かすと、浅野も「この役が僕でなくて良かったなと思いました」と笑った。
イベントでは、小学5年生の新井の夏休みの宿題を登壇者たちが手伝うという企画も実施。大人キャストも真剣に問題に向かい健闘。国語と算数の問題が出されたが、算数では浅野が見事に正解を導き出し、計算式を使って説明を入れると、子役たちと会場から大きな拍手が。恥ずかしそうに照れる浅野だったが、その笑顔は娘たを見る父親そのものという感じだった。
『幼な子われらに生まれ』
<STORY>
「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」―娘に言われた時、妻には新しい命が宿っていた。
バツイチ、再婚。一見良きパパを装いながらも、実際は妻の連れ子とうまくいかず、悶々とした日々を過ごすサラリーマン。田中信(浅野忠信)。妻・奈苗(田中麗奈)は、男性に寄り添いながら生きる専業主婦。キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことを楽しみにしているとは言えない。
実は、信と奈苗の間には、新しい生命が生まれようとしていた。血のつながらない長女はそのことでより辛辣になり、放った一言、「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」。今の家族に息苦しさを覚え始める信は、怒りと哀しみを抱えたまま半ば自暴自棄で長女を奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会う決心をするが…。
出演:浅野忠信 田中麗奈/南沙良 鎌田らい樹 新井美羽 水澤紳吾 池田成志/宮藤官九郎 寺島しのぶ
原作:重松清「幼な子われらに生まれ」(幻冬舎文庫)
監督:三島有紀子(「しあわせのパン」「繕い裁つ人」)
脚本:荒井晴彦
配給:ファントム・フィルム
(2016年/日本/ビスタサイズ/5.1ch)
ⓒ2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
公式サイト:http://osanago-movie.com
8月26日(土)テアトル新宿・シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー