累計発行部数650万部を突破するヤンキー漫画「OUT」を、品川ヒロシ監督が脚本も手掛け実写映画化。
原作は、品川ヒロシの中学からの友人・井口達也の青年時代を詰め込んだ実録物語。 “狛江の狂犬”と恐れられた伝説の超不良・井口達也が、少年院から出所し、地元から遠く離れた叔父叔母が営む焼肉店・三塁で働きながらの生活を始め、保護観察中の達也に関わってくる暴走族の抗争、新しい仲間・家族との出会いを描き出す。
主人公・井口達也を演じたのは、現在様々な作品に出演し大きな注目を集めている俳優・倉悠貴。ヤンキーとは全く縁がなかったという彼がどのように役と向き合っていったのか、撮影を振り返りながら作品への思いを話してくれた。
― 最初に本作の役が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
まさかこんな役が自分に来るとは・・・という思いでいっぱいでした。ヤンキー映画やドラマはもちろん観ていましたが、ヤンキーとか、喧嘩とか、自分自身には全く縁がなくてただの憧れでしかなかったので、まさかお話をいただけるとは思っていませんでした。
― ヤンキー役は初めてとのことですが、演じるにあたり何か準備されましたか?
クランクイン前から品川さんに誘っていただいて、ジムにほぼ毎日通っていました。撮影現場にもダンベルやベンチプレスがあって、「暇があればお前はやれ!」と言われていました(笑)。
― ここまで(体を)作ってほしいというようなリクエストはあったのでしょうか? 役作りについて監督からの要望はありましたか?
正直、時間もあまりなかったので、できるだけ頑張るという感じでした。品川さんが「筋肉は裏切らないから」って仰って。水上くんと3人で(ジムに)通ってたので、その中で生まれたものもあって、「今のは達也と要の会話っぽいね」とか「達也だったらもっといけるよ!」と言って追い込んだりしていました。そうやって徐々に役と関係性を作っていった感じがしました。
― 体を鍛えていくなかで、ご自身の体がどんどん変化していると感じましたか?
僕はあまり(筋肉が)つきにくいみたいで・・・。少しは変わったと思いますが(笑)。でも、ジムへ行きながら、アクションもやって、体を動かす生活になったので、それだけでも凄く良いことだったと思っています。筋トレのシーンの直前では腕がはちきれそうなくらいパンプアップしましたし、上半身裸のシーンでは体から湯気を出すために、サウナに12分くらい入ってから演技をするということもありました。
― 原作のキャラクターはどのくらい意識しましたか?
もちろん大人気漫画ですし、人気のあるキャラクターだと思うので、ファンの方を裏切らないようにしたいと思いました。でも、映画だから見せられるところもきっとあると思うし、ガッツリキャラクターに寄るというよりは、ちゃんとその場を生きてる人間として、役が地に足をつけて立っていることを意識しました。
― 次にまた喧嘩したら少年院に戻る状況で、おじさんやおばさんにも迷惑をかけられないという葛藤もある役です。内面を表現することの難しさやこだわりはありましたか?
達也は暴れ犬、狂犬といわれていて、これまでもあまり内面が見えないキャラクターでもありましたが、実はナイーブで繊細な部分もあり、この作品は達也の成長物語でもあると思っています。それには3段階くらいあって、演じ進めていくと、ここが転換点だろうなと感じたところもありましたし、初めに役をいただいた時のイメージが、実際に演じていくなかでどんどん変わっていき、より人間らしい人物にしたいなと思って演じました。
― 今回は立ち回りシーンもたくさんありましたが、いかがでしたか?
初めてのことばかりで、現場でも終始ご迷惑かけたかもしれないし、自分との戦いでもありました。本当に周りの方に支えていただきながら精一杯やりました。常に反復前進で、頭も体もいっぱいいっぱいでしたが、むしろそれが達也っぽいんじゃないかなと今は思っています。できないからこそ泥臭さも出るので、それが作品に出ていたらいいなと。楽しみながら演じることができたので、いい仕上がりになっていたら嬉しいです。
― 「筋肉は裏切らない」と言う言葉は品川監督より、庄司さんが言いそうなイメージがありますが、今作では庄司さんとの共演シーンもあります。筋肉について何かお話しされましたか?
筋肉について会話することはなかったです (笑)。庄司さんとのシーンはとても印象に残っていて、セリフもリアルで凄く嫌なことを言ってくるんです。“こういうヤツいるよな”と思いながらムカついていました(笑)。
― 醍醐さんや水上さんの印象はいかがでしたか?
醍醐さんのシーンはいつも現場で笑いが起きていました。毎回何を仕掛けてくるのかわらかないんです。僕も面白おかしくやらせていただきました。喋りかたもそうですし、台本を読むだけでは、あのキャラクターにはならない。間の取り方や声の出し方など、醍醐さんだからできることが伝わってきて、僕も凄く勉強になりました。アクションシーンでも、自分がどこでどう入ればいいのかを監督と何度も話し合われていました。たぶんご自身のなかで相当組み立てられていたと思います。凄いなと思いました。
水上さんは現場でどんどん要っぽくなっていました。最初にお会いしたときは、腰が低くて「よろしくお願いします・・・」という感じだったんですが、だんだん「オイ!達也!」って呼んできて(笑)。ご自身が意識されていたことだとは思うんですが、なんかオレなめられてるのかなって思ってきて(笑)。それが彼の狙いだったんだと思います。彼のおかげで良い関係性が築けてありがたかったです。
― 品川監督から、特にアドバイスや褒められたことなどありましたか?
アクション練習から色々と僕を見て下さって、一緒に作り上げていったという感じがあります。監督からは“ナイーブな部分がいいね”と言われました。これまでの達也は明るくて愛されているけど、狂犬・・・みたいな印象のキャラクターだったので、影の部分はあまり出ていませんでした。そういう意味でも倉くんを選んで良かったと言っていただけました。
― この作品はアクションはもちろんですが、みんなとの掛け合いが生み出す笑いも難しいところだと思います。ボーリング場でみんなに囲まれているシーンも印象的です。
あのシーンは結構労力を使いました。もちろんリハーサルはしましたが、1回で終わらせようと思って頑張りました。本読みをしている中で、どんどんセリフが増えていって最終的に倍くらいになっちゃって。もともとけっこう分厚い台本だったので、そこは大変でしたね。
― 達也を演じる上で、ご自身と重なる部分はありましたか?
ヤンキーの部分はやっぱり違うので、家族や友情を大切にするという部分は似ていると思ってもらいたいですね(笑)。達也は本当に優しくて、実はバカなだけで義理堅くて、真っ直ぐな男。本当に魅力的なキャラクターだと思うので、正直あまり似ている部分はないです・・・(笑)。
― 「達也はバカだけど、クズじゃない」というセリフも何度か出てきますが。
あ、僕もクズじゃないです!(笑)。
― 撮影以外で皆さんとコミュニケーションを取ることはありましたか?
現場では、誰かと誰かがよく一緒にいるようなところはありました。例えば、目黒と、田口は仲良く一緒にいました。僕は割と孤立派で、現場でもみんなに「お前は“斬人”じゃねぇから」って言われてました(笑)。
― その一方で、おじさんとおばさんとのシーンにほっこりさせられます。杉本さんと渡辺さんとご一緒されていかがでしたか?
初めて共演させていただきましたが、本当に温かいお二人で、そこだけちょっと別の映画を撮ってるような気分になりました。全体的にテンポがいい映画ですが、そこだけはゆっくりとした空気が流れていて、別の現場に来たんじゃないかと思うくらいの安心感ありました。ヤンキーというより反抗期の息子と両親みたいな感じ。杉本さんは俳優の大先輩なので、僕は背中を見て追いかけるだけなんですが、お芝居も細かいし、肉を切るシーンでも前から練習されていたり、それでいて芝居中はフラットでいる。その姿を拝見して凄く勉強になりました。あと、杉本さんから「デビルマンの実写版をやったほうがいいんじゃない?」と言われました(笑)。ちょっと強面ですが、チャーミングで優しい方でした。
― 与田祐希さんも初共演だったと思いますが、演じる前と後で印象が変わったことはありますか?
すごく大人しい方ですが、どんどんユニークな部分も見えてきて、千紘と同じように強い部分と繊細な部分の両方を持ち合わせてる方なんだろうなと思いました。あと、ビンタをされてもの凄く痛かったことを覚えています。「慣れてないからどうしよう」と言われたんですが本当に痛くて、達也としても僕としても切れそうになって、ある意味ファインプレーでしたね(笑)。現場ではよく芋を食べてましたよ(笑)。ほかのみんなはキャラクターを背負って現場にいまいしたが、そんな中で一番自然体でいられて、とても柔軟性のある方だなと感じました。演技について特に話をすることもなく、彼女の持っている空気感があったので、自然体で演じることができました。
― 倉さんはこれまでも色々な監督さんご一緒されていますが、品川監督ならではの違いはありましたか?
たぶん全部の役を品川さんがやった方が面白いんじゃないかと思います(笑)。笑いという点でも芸人さんの観点で、どうしたら面白いかを一番理解されてるし、アクションもできる。一番現場を盛り上げてくれているけれど、一番冷静に見てくれているし、なにより『OUT』に対しての思いが凄まじかったです。この人についていけばこの作品は間違いないんだと感じました。コメディシーンでは、現場でどんどんセリフが増えていって1.5倍くらいにはなってました。こんなに変える監督はあまりいないのではないでしょうか。そのお芝居も演技というよりノリツッコミ。実際に「こんな感じなんだけど」と見せてくれて、「お!プロじゃん!」と思いました。間の取り方とかが本当に絶妙なんです。
― 今作では普段とは違う雰囲気の倉さんで、特に目力が凄いです。どのように気合いをいれていたのですか?
ジャンプしたり、走ったり、自分のことを叩いてみたりしていました。他のキャストで、痛がってしまう場面のときに自分で自分を殴ってる方を見て、「それいいな」と思って真似していました(笑)。いつもより本番に向けて気持ちの切り替えは大変でしたが、現場全体がそういう人ばかりで、みんな目がキラキラしていたので僕も自然に気合いが入っていきました。
― 熱い現場だったのですね。
そう思います。同世代の俳優が集まっていたので、ライバル意識ということではありませんが、みんな胸の奥には「絶対にこいつらよりいい芝居してやるぞ」と思っているんじゃないかと思って、言葉にはしなくてもみんなの覚悟や熱量をひしひしと感じていました。僕は自分のことで精一杯でしたけど(笑)。
― 倉さんが演じられていて一番好きなシーンや思い入れのあるシーンはありますか?
全部喧嘩が終わって、千紘とあっちゃんと空を見上げるシーンが僕は好きです。相当な立ち回りが全部終わったあとなので、清々しい気持ちでした。あとは、相撲を取るシーンがお気に入りです。気合いを入れて撮りました。
― 映画のタイトルにちなんで、倉さんが一番“OUT”だなと思う人間はどんな人ですか?
難しい質問ですね・・・。一線を軽く超える奴ってたまにいて、それがたぶん丹沢敦司みたいな人間だと思うんですが、色々な捉え方があるので難しいですね。でもお店に入って店員さんに横柄な人は嫌いですね。
― それでは本作をご覧になる皆さんへ、映画の見どころポイントとメッセージをお願いします。
この作品は約2時間の映画ですが、1時間半くらいに感じられるほどテンポ感もいいですし、いま皆さんが一番観たい作品ではないかと思います。アクション、コメディー、ヤンキーと、見どころはたくさんありますが、達也という人間を描いた作品にもなっています。その人間ドラマだったり、アウトローな世界に踏み込むか踏み込まないか、その瀬戸際が結構リアルに描かれているので、そこに共感できる方もいるかもしれません。ヤンキーというのは一見別世界のように見えるけれど、僕らと共通することもたくさんあってちょっと熱くなれる映画です。達也たちの人間らしさや成長していく姿を、ぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。
【倉 悠貴/Yuki Kura】
1999年生まれ。大阪府出身。2019年ドラマ『トレース科捜研の男』で俳優デビュー。主な出演作にドラマ『連続テレビ小説 おちょやん』『かしましめし』『犬と屑』ほか、映画『人数の町』『夏、至るころ』(20)、『樹海村』『まともじゃないのは君も一緒』『街の上で』『スパゲティコード・ラブ』『衝動』(21)、『KAPPEI』『N号棟』『窓辺にて』(22)、2023年には『禁じられた遊び』『こいびとのみつけかた』『コーポ・ア・コーポ』『OUT』のほか、『市子』(23年12月8日公開)が控えている。
撮影:松林満美
映画『OUT』
<あらすじ>
“狛江の狂犬”と恐れられた伝説の超不良・井口達也が、少年院から出所した。地元から遠く離れた叔父叔母の元、焼肉店・三塁で働きながらの生活を始めるが、保護観察中の達也は、次喧嘩をすれば一発アウトだ。そんな彼の前に現れたのは、暴走族「斬人」副総長の安倍 要。この出会いが達也の壮絶な更生生活の始まりだった。暴走族の抗争、新しい仲間・家族との出会い、守るべきものができた達也の進む道は── 。
倉 悠貴 醍醐虎汰朗 与田祐希 ⽔上恒司
與那城 奨(JO1) ⼤平祥⽣(JO1) ⾦城碧海(JO1)
小柳 心 久遠 親 山崎竜太郎 宮澤 佑 長田拓郎 仲野 温
じろう(シソンヌ) 大悟(千鳥) 庄司智春(品川庄司)/渡辺満里奈 杉本哲太
原作:井口達也/みずたまこと『OUT』(秋田書店「ヤングチャンピオン・コミックス」刊)
監督・脚本:品川ヒロシ
音楽:武史
(山嵐/The Ravens)
主題歌:JO1「HIDEOUT」(LAPONE Entertainment)
制作:吉本興業 制作協力:ザフール
配給:KADOKAWA
Ⓒ2023『OUT』製作委員会
公式HP:https://movies.kadokawa.co.jp/out-movie
公式X:@out_moviejp
公式TikTok:@out_moviejp
Instagram:https://www.instagram.com/out_moviejp
11月17日 (金)より全国劇場公開中
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