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映画『アウト&アウト』遠藤憲一インタビュー! 「いつも落ち込みながら新しい挑戦を続けています!」

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「藁の盾」「ビー・バップ・ハイスクール」などで小説家、漫画家として知られる木内一裕の小説「アウト&アウト」を、原作者自ら“きうちかずひろ”の名で監督を務め完全実写映画化。本作は、元ヤクザの探偵と、血のつながらない小学生の少女(白鳥玉季)がバディを組み、ある殺人事件に巻き込まれていく様を描く、一癖も二癖もある魅力的なアウトローたちが織りなすクライムエンタテインメントだ。

主人公・矢能役を演じるのは遠藤憲一。その出で立ちから渋い役のみならず、近年はコミカルな役やバラエティー番組で見せる素の姿で、そのギャップに若い女性からも大人気を博している。栞役の白鳥玉季と絶妙な関係性を表現し、常に演じることに真摯な姿勢を見せる彼に話を聞くことができた。

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― 元暴力団幹部の側近で、その後私立探偵をなる矢能ですが、物語では彼の過去をあまり明かしていません。演じるにあたって彼がどのようなバックボーンでいきてきた男をどう理解されましたか?
あまり「元ヤクザ」ということは意識しませんでした。孤独な探偵で、過去には色々あったいわく付きな男ですが、細かな説明をしていないところがいいんじゃないかな。なぜ栞を引き取ることになったのかなどは考えず、歳の差はあっても孤独を抱えている同士、その距離感を上手く表現していくということが一番のテーマでした。

― 栞についても多くを語られていません。この子はこの年齢で一体何を抱えてきたんだろうと思わせます。
そこがきうち監督の原作が面白いところではないでしょうか。作り手が多くを語らず、観客の皆さんが想像する・・・その余白があるところがいいんですね。

― 栞と矢能の関係性がとても興味深く、幼い栞に母性を感じる瞬間も。栞役の白鳥さんと共演されていかがでしたか?
彼女とても頭が良くて大人。役の設定でお母さんみたいなことを言うのですが、もともと大人びた感じの子で「私は女を振りまくような子とは合わないの」なんて言うし、周りの人を鋭く見ているんです。「玉季ちゃんの歳で女を振りまくような子ってどんな子なんだろう」とは思いましたけど(笑)。きうち監督が上手にキャスティングしたなと思いました。日本の子役さん全てに会っているわけではないですが、実際に会ってみて天才的な子役だなと思ったのは、玉季ちゃんと(NHK連続テレビ小説「わろてんか」で共演した)新井美羽ちゃんです。子役が凄いのは、意表もつかないことが起きてくるところ。俳優として凄く刺激をもらいます。

― それでは、相手とどのように対峙しようかということは現場で考えるのでしょうか?
芝居は相手役があってこそなので、相手が起こすことに自分が溶け込んでいくことが一番なんです。あまり役作りは考えない。監督に要求された玉城ちゃんが出してくる芝居に、愛おしく思いながらもベッタリすることなく、ぶきっちょなところを自然に表現できたと思います。本当に子役が玉季ちゃんで良かったと思いました。最初に挨拶したとき、私が「敬語はやめてね」と言ったらしいんです。自分は忘れてたんですが、彼女はずっと覚えていて、その言葉をすんなりと受け入れている。そうはいってもできない子はいるんです。ただでさえ大人は怖いのに、俺はこの顔だから余計に怖がられますからね(笑)。なかなか心を開くことができない子がいるなか、しっかり心を開ききることができる。「ああ、こういう感性の子なんだな」と感心しました。

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― 劇中、矢能は険しい表情していることが多いのですが、一方で栞の前では和らいだ表情になったり、高畑淳子さん演じる婆さんには笑顔を見せるなど、場面によって表情を意識して演じられたのでしょうか?
顔つきは心から出てくるものなので意識したことはないですが、「やりすぎない」というのが監督の演出意向でした。(竹中直人さんや中西学さんなどの)愉快な仲間たちとの絡みで表情が崩れそうになるんですが、そこは我慢しました(笑)。基本的に淡々とした鋭い男というイメージは壊さず、優しさをさりげなく、さりげなく出すことは監督にも要求されていましたし、自分でも意識していました。

― アドリブはなかった?
ないですね。アドリブが許されるような現場ではなかったです、台本通りです(笑)。最初のほうで自分が出したアイディアが少し使われていますが、9割は台本通りです。たた、“覚えた”というセリフになるのが嫌なんです。人間の言葉として出したいので、自分は台本のセリフ通りに言わず、語尾を変えたりしてそれを壊して言うスタイルなので、一語一句変えないというのは少し窮屈ではありました。しかし、やっていくうちにやはり“演出には力がある”ということが分かってきたので、自分の中の新しいハードルだと思って取り組みました。

― そういう意味では、愉快な仲間たちと演じるのは苦労されたのではないですか?
思わず吹き出すことは何度もありましたけど、我慢でした (笑)。竹中さんは思いっきり笑っているところを映されていますけどね。つい笑ってしまうシーンでも、僕らは面白くしようとは考えていない、全て監督の指示です。演じていてもこれが面白シーンだと分かっていなかったかも。あとでこんなふうになっているんだと分かって、監督の笑いのテイストが優秀なんだと思いました。ドライバー役の彼自身も面白くしようとしているのではないし、中西さんはとにかく緊張する人なので、ただただ緊張しているところをそのまま撮したという(笑)。中西さんは極度の人見知りで、カメラが回っていないときもずっとあのまんまなんですよ。だって、俺と芝居する前に要くんと芝居をしていて「要くんの目が怖くて、目を見れなかった・・・」って言うんですよ。嘘でしょ?って。あんなに優しい顔をしている人の目が怖いなんてね。撮影最終日くらいにやっと自分から声をかけてくるようになってきましたが、それまで全然話かけてこなかったです。でも、それが彼の良さで持ち味。むしろ慣れてほしくないなと思いましたね。

― 一匹狼な矢能ですが、愉快な仲間たちとはとてもしっくりしているようです。
彼らは裏稼業の時の仲間なんです。借金返さないとか、ポンコツだらけ。だけど、絶対に仲間を裏切らないという信頼を持てる人たちが彼らだと思います。いくら頭が良くて才能がある人でも、根っこで裏切る人だったら信用できないですものね。

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― 一見冷たく見える矢能ですが、和馬の思いを包容するところが垣間見えるところもあります。
利用されて傷ついている人には敏感なのかもしれません。矢能がどうして裏稼業をやめたのか、きっと自分も裏切られたりした部分があるんじゃないのかなと考えました。男気があって心根を見抜くことに長けている男だと思います。

― ご自身も脚本を書かれた経験がある遠藤さんですが、本作の脚本を読まれたときにどう感じられましたか?
脚本を読む前に原作を読みました。原作でも脚本でも、自分が演じるものはその作品が面白いかどうかは考えないです。ただ、この役は受け身の役で周りがグイグイ動くという設定。これまで自分は色々やらかす役が多かったので、主人公が受け身で作品を引っ張っていくことができるだろうかという不安はありました。そういう受け身のスタイルができるのは高倉健さんくらいじゃないかなと思っていたので。あくまでこの作品は役者として臨みました。どうしても主人公として全体図を俯瞰(ふかん)で見てしまうのですが、そこは監督に全てお任せしました。

― 遠藤さんにとって得意な役、苦手な役はあるのですか?
得意な役なんてないですよ(笑)。いつも試行錯誤して臨んでいます。迷って迷って、落ち込んでの繰り返しです。いっつも落ち込んでいます。

― そうはお見受けできませんが・・・。色々な役を演じられて、最近はバラエティー番組にも出演され、若い女性にも人気ですね。
え?若い女性に人気あるんですか? よく分からないです・・・。

― あります! ご自分の魅力はなんだと思いますか?
一昔前だったらバカにされるくらい自分は何もできない人間でポンコツなんですが、特にバラエティー番組では、そのポンコツを許してくれる時代になっているのかもしれないと感じます。素を出すとトンチンカンなことを言っちゃうし・・・。けっこう手厳しい時代なのに、本当のバカには優しい時代なのかな(笑)。

― 厳ついお顔をしているのに、そういう素を見せてくれる遠藤さんに、女性たちは“ギャップ萌え”しているんだと思います。
そうですか?「この顔でよくテレビに出てるよな」って自分でもよく言ってるんですよ。テレビは基本的に爽やかじゃないとダメだと思っているんですけどね。よく自分なんかを使ってくれてるなと思っていますよ。
でも、決して怖い映画ではないので、王道を行くようなパンチのある、べたべたしない乾いた新しい感覚の作品を、若い世代の方々にも受け入れてもらえたら嬉しいですね。

― 後輩となる俳優さんもたくさん出てきていますが、遠藤さんから見て最近いいなと思う方はいらっしゃいますが?
今はケンティ(ドラマ「ドロ刑 -警視庁捜査三課-」で共演のSexy Zoneの中島健人)かな。宣伝ではなく、相当優秀な俳優ですよ。頭いいし、キャラ作りも上手いのでこれから伸びると思います。

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― 少し早いですが、遠藤さんにとってこの1年はどのような年でしたか?
今年は波乱万丈の年でした。いいことも大変なこともありました。色々鍛えられて、乗り越えた年。ありがたいこともたくさんありました。

― 来年はどんな年にしたいですか?
目の前にある作品を燃焼するしかないです。年明け早々にも撮影が決まっています。一つ一つの作品を乗り越えていこうと思います。

― 来年もまた新しいハードルが待っているんでしょうか?
そうですね。やったことがないこともやらなくてはいけないですし、いっぱいいっぱいですが、頑張っていくしかないです(笑)。

― 視聴者の皆さんは、また遠藤さんがどんな顔を見せてくださるのか楽しみにしています。
飽きられないように頑張ります!

― 最後に、ご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
とにかく観てください! テレビスポットをバンバン流すような大規模映画ではありませんが中身は負けてないです。観ていただければ満足してもらえると思います!

【遠藤憲一(えんどうけんいち)プロフィール】
1961年6月28日年生まれ、東京都出身。1983年のNHK「壬生の恋歌」でデビュー。鋭い眼力と強面の風貌を活かした悪役から、優しい父親役やコミカルな芝居までこなす日本を代表する俳優。また、CM、テレビ番組などのナレーターとしても活躍する。
主演映画『アウト&アウト』がTOHOシネマズ 新宿ほかで公開中。

アウト&アウト ポスター

映画『アウト&アウト』
原作:木内一裕「アウト&アウト」(講談社文庫刊)
監督:きうちかずひろ
製作:東映ビデオ 制作プロダクション:東映東京撮影所
配給:ショウゲート 宣伝:東映ビデオ
(C)木内一裕/講談社
(C)2017「アウト&アウト」製作委員会
公式サイト:http://out-and-out.jp

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