映画『オーバー・フェンス』の初日舞台挨拶が、9月17日、東京・テアトル新宿にて行われ、蒼井優、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、松澤匠と、山下敦弘監督が登壇した。この日、主演のオダギリジョーは、キューバでの撮影のために参加することが叶わなかったが、代わりに等身大パネルが登場。松田がオダギリから届いた手紙を代読した。
本作は、小説家の佐藤泰志の「海炭市叙景」、「そこのみにて光輝く」に続く同名小説が原作。北海道・函館を舞台に、妻と別れて職業訓練校に通うアラフォー男・白岩義男(オダギリジョー)と、風変わりな若いホステス・田村聡との恋を描く、愛しくも狂おしい青春ストーリー。
満島がオダギリのパネルを抱えて登場。そのパネルを見つめて「劇中の画は4Kで撮ってるから大丈夫だって言ってたけど、画質が粗いな・・・」と苦笑いの松田。なんともゆるい雰囲気のなか、舞台挨拶がスタートした。
蒼井は「『この作品はどういう存在ですか』とインタビューで聞かれることが多いんですが、今まではそれがよく分からなかった。でも、今回『私は何が好きで、何が好きではないのか』が初めて分かりました。それを教えてくれた作品です。こういう小さな幸せを描いたお話が好きなんだと」と明かし、共演のオダギリについても「オダギリさんから、主演としての立ち位置、作品との距離感を学ばせてもらいました」と語った。
満島は函館ロケについて、「スタッフもキャストも全員同じホテルに1カ月泊まったんです」と明かし、「蒼井優さんとは一緒のシーンがなかったのに、映画を観て初めて気付いたんです(笑)。撮影から1年経っていますが、まだあのときの思い出を語り合えるほど、濃い日々を過ごしました」としみじみ。
松澤は「前作のチンピラの役では、監督から『歯を抜け』とか言われましたが、今回は眉を薄めるだけだったので良かったです」と苦笑いした。
松田は「自分の役が、実は大事な役なんじゃないかと思ってから熱が入りました。エンディングでは衝撃を覚えました」とコメントし、「ホントにポジティブな映画になった」と目を輝かせる。
そして、キューバからメッセージを届けたオダギリに代わって手紙を代読。「スベりそうになっても僕のせいじゃないので・・・」と前置きをしながら、「公開初日に主演がいないというのは聞いたことがない。まさに前代未聞の状況で謝ることしかできません。ある意味マンネリ化していた初日舞台挨拶の在り方に、新たな光を射したのかもしれません」と読み上げ、会場からは笑い声が湧き上がる。「この作品をこのスタッフ、このキャストでこのタイミングで作れたこと、そこに参加できたことに心から感謝します」と真摯な気持ちを伝えつつ、函館ロケの思い出について「朝市に行ったときのこと。カニの味噌汁を頼んだらサービスで付いて来たのがシンプルな味噌汁。なぜか味噌汁が2つになったことも、今となっては大感謝です。あ~味噌汁の味・・・」と続け、オダギリらしい言葉で会場を最後まで沸かしていた。
『オーバー・フェンス』
<STORY>
家庭をかえりみなかった男・白岩は、妻に見限られ、東京から故郷の函館に戻りつつも実家には顔を出さず、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。訓練校とアパートの往復、2本の缶ビールとコンビニ弁当の惰性の日々。白岩は、なんの楽しみもなく、ただ働いて死ぬだけ、そう思っていた。そんなある日、同じ職業訓練校に通う仲間の代島にキャバクラへ連れて行かれ、鳥の動きを真似る風変りな若いホステスと出会う―。名前は聡(さとし)。「名前で苦労したけど親のこと悪く言わないで、頭悪いだけだから」そんな風に話す、どこか危うさを持つ美しい聡に、白岩は急速に強く惹かれていくが…。
監督:山下敦弘
脚本:高田 亮
出演:オダギリジョー 蒼井 優 松田翔太 北村有起哉 満島真之介 松澤 匠 鈴木常吉 優香
配給:東京テアトル+函館シネマアイリス(北海道地区)
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
公式HP:http://overfence-movie.jp
テアトル新宿ほか全国公開中