2017 年から全国各地で1 年以上にわたって劇場公開され、上映会も国内外で800 回以上開催されている映画『ケアニン~あなたでよかった~』の製作スタッフが再び集まり製作した、映画『ピア~まちをつなぐもの~』が4月26日(金)より公開。
在宅医療と介護をテーマにした本作は、若手医師が悩みながらも懸命に在宅医療という高齢化社会の大きな課題に取り組んでいくという感動のヒューマンストーリーだ。
エリート医師から一転し、小さな町医者を継ぐことになった高橋雅人役を若手実力派俳優・細田善彦が熱演。このたび、等身大の雅人をスクリーンに映し出した彼にインタビューを遂行。本作への思い、そして本作に出演し感じ取ったことを率直に話してくれた。
― 本作は、在宅医療の実態に沿った物語であり、少しでも介護に携わったことがあるかたにはとても身近に感じる内容になっています。細田さんが、本作の出演のお話を受けたときのお気持ちをお聞かせください。
劇中には“ポリファーマシー”と言って、お薬をたくさん処方されて、どの薬をいつ飲んでいいのかわからなくなってしまう年配の患者さんがいるんです。実は、僕も感じることがありまして・・・。僕の場合は、つい痛み止めのロキソニンを処方してもらっちゃうんです。ちょっと熱っぽかったりすると病院に行くし、怪我をしたら整形外科で痛み止めの薬をもらうことがありますが、お薬手帳を常に携帯しているわけではないので、薬がかぶることは多々あることなんです。この歳の僕でもあることなので、この作品のお話を受けたときに、この現実は世の中にたくさんあることなんだなと思いました。
― 今回は医師の役ですが、いわゆる病院で患者さんを診察する医師とは違います。この役とどのように向き合っていきましたか?
物語は大学病院に務めていた医師が、在宅医療という新たなフィールドで医療を始めるというものです。僕も“在宅医療”という言葉は知っていましたが、その実態はほとんど分かっていなかったので、高橋雅人という役を通して、僕も在宅医療を勉強して素直に反応していければいいなと思いました。雅人は大学病院にいるころに、医者として“何のために働いているのか”という意識が薄れる瞬間があるんです。患者さんと向き合ったり、研究したりとか色々なことに時間を費やす中、縦社会の人間関係もある。システム化されているので仕方のないことではあるけれど、そういう(本来の医療とは関係ない)余計なことが染み付いている人間が父親の病気をきっかけに在宅医療と向き合っていく。僕自身も素直に役として在宅医療と接していきました。
― 大学病院勤務のころの雅人は本当に感じ悪いですよね(笑)。
いや~、やりすぎたかな・・・とも思ったんですが、病院関係者の方からは「良くやった。大丈夫、もっと感じ悪い人いるから」って言われたんです(笑)。(雅人が)在宅医療に関わっていくうちに、そういう態度が解けていく感じを出したくて。医師に限らず、人間はどうしても自分の地位などで人格形成されていくことが多いのかもしれない。そこに置かれた環境も関係して、本来の自分を見失ってしまうことがあると思うんです。虚勢を張っていた雅人が、(ケアマネジャー・佐藤夏海役の)松本若菜さんにペラペラ剥がされていくんです(笑)。
― 松本さん演じる夏海は見ていて気持ちがいいです。彼女との共演はいかがでしたか?
松本さんは凄く元気な方で、なんでもあっけらかんと自分のことも話してくれるんです。鳥取の地元で社会人経験をされて、その後上京して女優さんになられたそうなんですが、その経歴を実際に聞くと本当に面白いんですよ。
― 撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
僕は毎日撮影していたのですが、共演者の方々が代わるがわる現場にいらしてくださったので、日々楽しかったです。
― 在宅医療のお勉強をされたとのことですが、劇中にも勉強会のシーンがあります。
そのシーンは、柏市がモデルになっています。柏市は在宅医療の制度が充実している地域で、実際に行われている「在宅医療連携会議」の雰囲気を切り取らせていただきました。柏市のホールで撮影させていただき、「他職種連携会議」に出席していらっしゃる皆さんが撮影に参加し協力してくださったんです。なので、とてもリアルなシーンになっていると思います。セリフではなく、僕がその日に思ったことを在宅医療をされている佐々木先生に質問していて、そこを長回しで撮影しているんです。
実際に一度、佐々木先生の在宅医療の往診に同行させていただきました。往診の時にも色々質問させていただいていたので、そのシーンもその延長のような感じでした。
― この柏市のケースは、在宅医療と介護の制度が進んでいる地域だと思いますが、実際に携われて細田さんご自身はこの問題をどのように考えますか?
僕自身はまだ両親が元気なので、在宅医療とか介護はまだそんなに身近なものではありませんが、他人事とは思わずちゃんと考えなくてはいけないと思いました。在宅医療や介護は受ける本人とその家族の思いは必ずしも同じとは限らないので、コミュニケーションは絶対に必要だと思います。そして、本来は病気になる前から色々話し合っておくべきことじゃないかなと考えます。今はまだ、その時にどうしたらいいのかわかりませんが・・・。
この作品に出演して、現実を知ることができました。色々なことを学び、医師の立場、地域、国の政策方針など色々な局面から考えなくてはいけないので、一概に何が良いかはわかりませんが、それを解決していく一歩として家族間のコミュニケーションが大事のではないでしょうか。
― では最後に、この映画の注目ポイントを含め、本作をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
やはり在宅医療を受けている方が身近にいないと、その内容はよく分からないと思います。1人の患者さんのために、どれだけの方が関わっていて、どんな職種の方がいるのか、皆さんがどういう思いで活動されているのか、この映画ではそういうところもしっかり描いています。誰か1人のために皆が動くというのは、医療現場だけの話ではない。他の仕事でも、裏でいろんな人が動いています。だからこそ、悩みや不安があっても1人で抱え込まず、誰かに相談することはとても大事なことだと思います。そんなことをこの映画を通して感じてもらえたら嬉しいです。
【細田善彦(ほそだよしひこ)プロフィール】
東京都出身。
「きみの知らないところで世界は動く」主演(05年 NHK)でドラマデビュー。
以降映画、TV、舞台、CM等、幅広く活躍。19年、NTV「3年A組ー今から皆さんは、人質ですー」での宮城刑事役が記憶に新しい。
主な映画出演作に、『デトロイト・メタル・シティ』(08)、『僕の初恋を君に捧ぐ』(09)、『終の信託』(12)、『下衆の愛』(16)、『羊の木』(18)等。2019年公開映画『武蔵-むさし-』(三上康雄監督)では、主役の新免武蔵を演じている。
映画『ピア~まちをつなぐもの~』
◆ストーリー
物語は、若手医師が懸命に在宅医療に取り組むというストーリー。病気で倒れた父親の医院を継ぐために、大学病院を辞めざるを得なくなった若手医師の高橋雅人(細田善彦)は、父・圭蔵(升毅)の要望で渋々訪問診療も始めることになる。しかし大学で先端医療の研究を志していた雅人にとって、地域の患者やその家族たちの医療には、なかなか関心を持てないでいた。
それに加えて医師としてのプライドもあり、ケアマネジャーの佐藤夏海(松本若菜)や介護福祉士など他の職種との連携も積極的にとらず、やがて地域医療の中で孤立していくようになる。
そんな中、訪問診療に行ったある患者家族との出会いによって、雅人の医師としての考え方が大きく変わっていくことになるのだった・・・。
◆ピア( Peer )とは…
仲間、同じ志の人と心を合わせてある物事を一緒にする間柄
出演:細田善彦 松本若菜 川床明日香 竹井亮介 三津谷亮 金子なな子
戸塚純貴 尾美としのり 水野真紀 升毅
監督:綾部真弥
企画・原作・プロデュース:山国秀幸
脚本:藤村磨実也・山国秀幸
主題歌:橘 和徳「この街で」(ユニバーサル ミュージック)
製作:映画「ピア」製作委員会(ワンダーラボラトリー/アイ・ピー・アイ/ユナイテッドエンタテインメント/JR 西日本コミュニケーショズ/エイチエムプラス)
配給:ユナイテッドエンタテインメント
制作:UE 協力プロダクション:スタジオブルー
2019 年/日本/ビスタ/ステレオ/5.1ch / 99 分
(c)2019「ピア」製作委員会
公式ホームページ:www.peer-movie.com
4月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
細田善彦さん
直筆サイン付きチェキプレゼント!
応募はこちらから