お笑いコンビ・品川庄司として活躍する一方、映画監督としても活躍する品川ヒロシの長編映画最新作『リスタート』がついに7月16日より公開した。(北海道地区は7月9日より先行公開中)。
北海道・下川町と吉本興業がSDGs推進における連携協定を結び発足したプロジェクトの本作は、クラウドファンディングで目標金額を大きく超える700名からの支援を集め、多くのサポートを受けながら、下川町の自然を余すことなく映像に落とし込んだ意欲作。
シンガーソングライターを夢見て上京した主人公がスキャンダルにより夢破れ傷つき、故郷の下川町に帰って同級生や家族、大自然に触れることで徐々に心を取り戻していく姿を描き出す青春ストーリーだ。
主人公・未央を演じるのは、今作で初演技にして初主演で映画デビューを飾った、男女フォークデュオ・HONEBONE(ホネボーン)ヴォーカルのEMILY。品川監督との初タッグはいかに。本作への思いや撮影秘話を、品川監督とEMILYに聞くことができた。
― 品川監督はEMILYさんをテレビ番組で見かけて主演に抜擢されたとお聞きしましたが、EMILYさんのどんなところに魅力を感じたのでしょうか?
品川ヒロシ監督(以下、品川):僕はどっこいしょアーティストって呼んでいるんですけどね(笑)。
― どっこいしょアーティスト・・・?
品川:洗練されてない、泥臭い感じかな。
EMILY:えー!? もっと才能を感じたとか、この娘しかいない!とかなかったんですか?
品川:こういうノリもいいし(笑)。その番組で歌っていた歌も「うめ~コイツ!」と思ったんです。HONEBONEのミュージックビデオ見たら、めちゃくちゃカッコいいじゃん!って。照れ隠しなのか、もっと売れたいとか悔しいという気持ちを笑いにしていますが、そういう本当の気持ちや世の中に対してムカついてることを歌にしてストレートに表現しているところがいいんです。
― それで、監督がEMILYさんにダイレクトメールをされたとか?
EMILY:メールは私から送りました。監督が「HONEBONEカッコいい」とツイートしてくれたのを見て、まんまと引っかかりました(笑)。「これはチャンスだ!」と思ってすぐに「ありがとうございます! 何でもいいので仕事ください!」ってメッセージを入れました。そうしたら「芝居に興味ない?」って返ってきて(笑)。
― お芝居は未経験だったEMILYさんは、その話を受けていかがでしたか?
EMILY:芝居?と思いましたが、ここでうだうだ言い訳をしていたらすぐに興味を失われてしまうと思ったんです。正直「経験ないです・・・」と言いたかったけれど、「なんでもやります!」と返事していました。
― 品川監督の演出、演技指導受けていかがでしたか。
EMILY:監督が直々にマンツーマンで演技指導をしてくださったんです。本当に贅沢すぎる時間でした。映画に参加したことによってアーティストとしての幅がとても広がりました。
―具体的にはどんな指導があったのですか?
EMILY:監督は全員で本読みをする前の段階から私に付き合ってくれました。お父さん役から芸能記者の野村役まで、監督が全役をやってくださったんです。私が未央としてどう演じたらいいのか分からないときは、監督が未央を演じて見せてくれました。演技論を語るというより、目と耳で教えてくださったので、凄くわかりやすくて安心して臨むことができました。
― 川のシーンは大変だったのでは? そこでも監督がやって見せてくれたのですか?
EMILY:監督自ら進んで入っていかれました。凄く水が冷たくて、監督もずっと入っていたから辛かったと思います。本当になんでもやってみせてくれるんです。
品川:僕はちゃんと防寒していますから、二人ほどではなかったですよ。殴るシーンも、僕がやれば「できない」って断れないですからね(笑)。
― 監督はEMILYさんの魅力をどのようにして映像で表現しようと考えられたのでしょうか?
品川:EMILYはポジティブな部分とネガティブな部分が同居している感じがするんです。撮影当時のEMILYが28歳で未央も28歳。僕が28歳の時は?と思うと、30歳を手前にして夢の限界と向き合わないといけないと考える時期。絶対に勝ちたいという気持ちと、もしかしたらダメかもしれない・・・と思う気持ちが同居しながらこの世界で闘っている。それがそのままこの映画に反映されればいいなと思いました。
― 共演されているSWAYさんが品川監督作品の魅力を「監督が普段感じるリアルさが作品に出ていること」と仰っていました。そういう意味でも、EMILYさんと未央が重なるのでしょうか?
品川:そうですね、リンクしています。追いかけてくるカメラマンの野村も、未央を慰めるお父さんも、受け止める大輝も、全部僕が思っていることなんです。僕自身もネガティブな部分とポジティブな部分を持っているので。そして、今の中野(英雄)さん、今のSWAY、今の品田(誠)、そして今のEMILYに当て書きして、映画の中でぶつかりあえばいいなと。EMILYの持っているものと僕の持っているもの、品田と僕の持っている共通点を書いたつもりです。(品田さん演じる)野村にはプロ意識の高さがあるけれど、単純にカメラが好きという気持ちもある。野村と一緒にいる(芸能記者の後輩役の)かんたも普段からあのまんまなんですよ(笑)。でも、角度を変えて見れば違う面も見えてくる。みんなそうなんです。
― 一緒に映画作りするという充実した時間を過ごされて、それまで抱いていたお互いのイメージのギャップや驚いたことなどがあったら教えてください。
EMILY:私は怖い人と思っていたので、いつキレるんだろう・・・と不安でした(笑)。でも全然想像と違って、温厚でめちゃめちゃ優しい方でした。「質問があったら昼夜問わずいつでも連絡してきて」って言ってくださったので、私はそれを鵜呑みにして「ここ、わからないんですけど」連絡すると、本当にいつでも「わかった、教えるね」と、100%で向き合ってくれました。声を大にして「めっちゃいい人だよ~!」と言いたいです!
品川:僕はギャップは感じませんでした。思った通りの人物像で、未央そのものという感じでした。カナブンみたいな、ただただ光に向かってバチバチぶつかっていくヤツでした(笑)。
EMILY:カナブンって・・・、もう少しいい表現ってないのかなぁ(笑)。
品川:(笑)。凄いのは人を動かす力ですね。チケットの手売りをしているんですが、自分で会場を抑えて、自腹でアクリル板を買って。EMILYが動くと他の共演者たち「じゃ、私も行きます!」と言って一緒に動き出すんです。凄いですね。
― 主題歌の「リスタート」も素敵です。映画の中で聴くとより心に沁みてきます。
品川:撮影は順撮りだったので、演者たちもEMILYの歌を聴いたのがあの時が初めてでした。みんな辛い撮影期間を経て、ボロボロになっていたんですが、先に録音するのではなく、その場で歌ってそれを収録しているので、生のライブの迫力やみんなの表情も本物でした。
あとでCDを聴くととてもいい歌で聴きやすいのですが、当時の映像を観るとテンポも速くなったり遅くなったりしているんです。さらに、撮影した場所も普通の倉庫なので、収録する環境としては決して良くはなかった。でも、それがリアルな姿なんです。
― 曲が映画のストーリーにも合っていてストレートに伝わってきました。EMILYさんはどんな思いで曲を作られたのですか? 特に意識したことは?
EMILY:映画のテーマと下川町のイメージを意識して歌詞にしていきました。未央の本音であり、みんなの本音を代弁する・・・まではいかないかもしれませんが、今回の作品には無名な人も多く出演していて頑張っています。「なにやっちゃってんの」と思う人もいるかもしれないけれど、「勝手に笑ってろよ」「みんなで上に行くぜ!」という気持ちだけは入れたかった。私は上手い歌詞が書けないので、本音のメモ書きみたいなものですね。
品川:売れてないミュージシャンと売れてない芸人がクラウドファンディングで映画を撮っている。笑いたければ笑えばいいだろ。でももう迷わない。自分たちの好きなことをやっているんだよという思いがリンクしている。僕も編集しているときに何度も聴いて、やっぱりいい歌だなと感じました。
― 「リスタート」という言葉は、どの世代の人にも当てはまる言葉だと思います。お二人はリスタートに必要なものは何だと考えますか?
品川:やっぱり周りの人じゃないですか?キレイごとだと思うかもしれませんが、映画作りも同じです。今回も、みんな他の仕事をしているのにこの作品を選んでくれて、安いギャラで不眠不休で参加してくれる。それなのになおスタッフさんがクラウドファンディングにも参加してくれているんです。無名のアーティストがテレビに出て、それをたまたま監督が見て映画になる。そんなことが実際にあったわけだから、ある意味ノンフィクションの映画なんです。僕も人に支えられてこの映画が出来上がっているので、何かを始めるときに周りの人の力は大きいですね。
EMILY:私は“やる気”だと思います。絶対にこれをやるぞ!という確固たるものがないと、一歩が踏み出せないと思うので。やる気、負けん気、根気ですね。
品川:なんか、コメントが薄いな・・・(笑)。
― 手を差し伸べてくれた人に素直に応えて、その時にやる気がないとダメですよね(笑)。
EMILY:そうですよね。プライドを一回捨てて、また頑張るんです。
品川:顔、真っ赤だぞ(笑)。
EMILY:すみません。“やる気”でお願いします(笑)。
【EMILY (HONEBONE)】
東京都出身。
フォークデュオ<HONEBONE>のヴォーカル担当。日本語にこだわったリアルな歌詞を歌い、これまでにアルバム5枚、ベストアルバム1枚をリリース。
笑いあり涙ありのライブは全国で完売続出、歌のみならず EMILYのキレのある MCも特徴的。個人の Instagram フォロワーは3万人を超え、中国·Weibo アカウントは開設わずか3日で2.6万人からフォローを受けるなど、SNS上でも話題を呼ぶ。
キャラを生かしたメディア出演、New Balance、TOYOTA、BOSE 等の Web 広告モデルなどマルチに活躍の場を広げる。バラエティ番組「家、ついて行ってイイですか?」(TX)の出演をきっかけに品川ヒロシ監督に見出され、演技未経験ながら、本作でスクリーンデビュー初主演を飾っている。
【品川ヒロシ】監督・脚本
1972年4月26日生まれ、東京都出身。
95年に相方庄司智春と結成したお笑いコンビ<品川庄司>のボケ担当。お笑い芸人として第一線で活躍する一方で、09年には自身の自伝的小説を原作とした『ドロップ』で長編映画監督デビューを果たし、興行収入20億円、観客動員150万人を突破する大ヒットを収める。また、11年には原作・監督・脚本作品第2弾として『漫才ギャング』が公開し、前作に引き続き高い評価を受ける。主な監督作品には『サンブンノイチ』(14)、『Z アイランド』(15)、「異世界居酒屋『のぶ』」(20/WOWOW)、『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~「戦湯~SENTO~」』(21)などがある。また、21年に舞台「池袋ウエストゲートパーク」の演出を手がけるなど、エンタメ業界での活動の場を広げ続けている。
映画『リスタート』
<STORY>
杉原未央、28歳。職業、シンガーソングライター 元地下アイドル。
たった一度の失敗で人生は終わらない。何度だって、どん底からだって、″リスタート″できる。
北海道下川町で育った未央は、シンガーソングライターを目指し上京。10年の月日が経ち、思い描いた夢とは異なるものの、地下アイドルとして一生懸命に活動していた。意図せず起きた有名アーティストとのスキャンダルによって、世間からバッシングを受け、SNSで炎上。夢に破れ傷つき、故郷に帰ってきた未央だったが、周囲とも上手く接することが出来ずひとり殻に閉じこもってしまう。そんな中、同級生の大輝は、未央を思い出の場所へと連れ出す。自然豊かな景色、支えてくれる仲間や家族の存在によって未央はゆっくりと前を向き始める―。
監督・脚本:品川ヒロシ
音楽:HONEBONE
出演:EMILY(HONEBONE) SWAY(DOBERMAN INFINITY/劇団EXILE)
品田誠 朝倉ゆり(エラバレシ) 夏目ベール(純情のアフィリア) 藤井俊輔 向井日菜海
阿部隼也 かんた 岩崎う大 もりももこ
西野亮廣(キングコング) 松田大輔(東京ダイナマイト) 庄司智春(品川庄司)
小杉竜一(ブラックマヨネーズ)
黒沢あすか 中野英雄
製作:吉本興業株式会社
スペシャルサポート:下川町
配給:吉本興業
©吉本興業 100分/シネマスコープ/5.1ch
公式サイト:https://restart.official-movie.com/
公式Twitter:@movie_restart
公式Instagram:@restart.movie
ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか全国公開中
<品川ヒロシ監督>
スタイリスト:渡邊浩司
ヘアメイク:三浦真澄
<EMILY>
スタイリスト:村井素良
ヘアメイク:杉野加奈
撮影:ナカムラヨシノーブ
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