8月11日(金)より公開する本作は、ハードボイルド作家の長浦京が描く第19回大藪春彦賞受賞作「リボルバー・リリー」を行定勲監督がメガホンをとり実写映画化。1924年の大正末期、関東大震災後の東京を舞台に、S&W M 1917リボルバーの使い手で主人公・小曽根百合(綾瀬はるか)が鍵を握る少年・細見慎太(羽村仁成)との出会いによって、彼女を戦場へと還らせ、2人を追う者たちとのバトルを描き出すハードボイルドミステリー。これまで幅広い演技で観客を魅了してきた綾瀬だが、今作ではリボルバー(銃)を携え、“史上最強のダークヒロイン”に挑む。
アステージでは2022年8月下旬、撮影現場に潜入。迫力あるアクションとノワールの世界に包まれた現地のレポートを紀伊宗之プロデューサーのインタビューとともにお届けする。
本作の撮影は2022年7月から9月末頃まで行われ、大正末期の街並みを大規模セットでの再現と、地方ロケで撮影が進められた。この日の撮影地は関東北西部の山沿いにある広大な自然公園。時折差し込む太陽の光が夏の終わりを感じさせていた。場面は物語が佳境に入り、いよいよクライマックスに差し掛かる重要なシーン。ようやく東京に辿りついた百合と慎太だが、目的の地の目前には帝国陸軍が立ちはだかり行く手を阻む。霧が立ち込めるその場所は、二人の暗雲が漂う様を表しているかのようだ。現地ではテストのたびに霧を撒くのだが、リアリティを表現するには妥協を許さない行定組。なんと、ホテル椿山荘で有名な霧の庭園 “東京雲海”の演出を手掛けるスタッフが本物の霧を作り出すというこだわりも。しかし、山の天気は変わりやすく風も出る。霧ひとつ撒くにも何度も調整を試みるなど、スタッフの苦労がうかがえる。
東京・日比谷公園を模した現場は街灯もベンチもディティールにこだわった作りになっている。帝国陸軍の攻撃を阻止するため、銃を片手に地面に身を伏せる綾瀬と羽村。緊迫した空気が張りつめる中、綾瀬は羽村に声をかけながらタイミングを合わせ、丁寧にテストを重ねていく。血に染まり泥だらけの白いドレス姿の綾瀬は凛として息を飲むほど美しい。羽村は緊張した面持ちでひたすら演技に集中していた。
劇中でほとんど笑顔を見せない綾瀬だが、監督の「カット!」の声がかかると思わず笑顔がこぼれる。撮影現場に長谷川が現れると「おはよ!」と明るく声をかけ、いつものキュートな綾瀬に戻っていた。
続いて撮影されたのは、軍用のバイクに乗った弁護士役の長谷川が隊列に突っ込んでいくシーン。スタイリッシュなスーツに身を包んだ長谷川がバイクにまたがり全速力で疾走していく様子は圧巻だ。何度となくバイクの走行シーンを撮ると、突然現場にとてつもなく大きなクレーンが運び込まれる。次にバイクから飛び降りる場面を撮影するのだが、ここはスタントマンを使わず、長谷川が挑戦。スタントマンが見本を見せると、すぐに長谷川が大きなクレーンに吊るされながら、ジャンプを試みる。クレーンの先のワイヤーロープが大きく揺れ、見守るスタッフたちもハラハラ。長谷川から「もう一度お願いします」と言い出す場面も。ようやくOKが出ると、周りのスタッフから安堵の声がこぼれる。
この日の最後の撮影は二人(綾瀬と羽村)を迎え打つ帝国陸軍の兵たちが応戦するシーン。多くのエキストラたちが集結し、陸軍大佐の声と銃声がいつまでもこだまする・・・。劇中に幾度も登場する帝国陸軍兵たちだが、クライマックスのシーンだけに、一層迫力が増していた。
紀伊プロデューサーは、本作の映画化の経緯について「(撮影が始まる)ちょうど三年前に原作権を取って準備をしてきた。最近は日本映画が知らない間に韓国映画に大きく抜かれている。アートハウス的な映画もいいんだけど、やっぱりエンターテイメントの商業映画で、どうやって世界中の人たちに観てもらえる映画を作りたかった」と語り、「日本映画が面白いと認められれば、結果的に観てくれると思う。それには、まずはちゃんとバジェットを上げてエンターテイメントを作ることから始めないといけない。いいキャストを揃えて、監督もアートハウスからエンターテイメントまで撮れる人・・・そうなってくると、やっぱり規模が大きくなって、CGなども含めて映画撮影のノウハウが全部結集しないとできないんです。それは日本映画のスタッフのキャリアにもなっていくと思う」と持論を展開。
日本映画に刺激を与える作品になりうる本作だが、確かに現地にはベテランから若手まで多くのスタッフが揃っている。
スケールの大きな映画を作るために原作を探していたのかと尋ねると「僕が手がけた『孤狼の血 LEVEL2』や『初恋』、「村シリーズ」の三部作も全部オリジナルなんです。僕はオリジナル作品と原作ものはバランスよく成立すべきだと思っていて、映画を撮るために原作を探すことから始めることはない。オリジナルは作り続けないといけないと考えているんです」という答えが返ってきた。そして、「セリフがなくても観て面白いものは、世界中でも同じ。ノンバーバルに近いものとなると、やっぱりアクションやノワール、ホラー、サスペンスなのかなと。そんな時にこの原作を読んだらめちゃくちゃ面白くって!(笑)」と原作との嬉しい出会いを述懐。
しかし、映画化にはハードルが高い作品だった。それでも運命を感じた紀伊は「不可能なことはない」と心を決め、「主人公の百合は綾瀬はるかさんしかいないなと。彼女がやるって言ってくれなかったらたぶん(この映画は)やってなかったと思います」と、綾瀬を抜擢。
綾瀬のアクションはもちろん定評があるが、「この作品はアクション映画でもあるけれど、やっぱり“ノワール”なんです。彼女は善人なのかというとそうじゃない。いわゆるダークヒーローなんです。強い女性というのは凄くフィットすると思うし、これまでの東映作品にも任侠ものでも女性が主人公のノワールと言われるものがいくつも存在し、成功しているわけで。綾瀬さんにはダークヒーローをやってほしいと思ったんです。母性も存在して。羽村くんとのコンビネーションもいいし」とキャスティングに満足げ。綾瀬も髪を短くカットし、覚悟を決めて作品に臨んでいる。
撮影も順調に進み、手応えを尋ねると「本当にいい画が撮れているので。撮影の今村(圭佑)くんは天才ですから。美術もライティングも。手応えはおおありです!」と自信満々の表情を浮かべていた。
映画『リボルバー・リリー』
大正末期、時は1924年。関東大震災後の東京は、鉄筋コンクリートのモダンな建物が増え、最大規模となった花街など、活気あふれる賑わいを見せていた。
S&W M 1917リボルバーの使い手で主人公の百合は現在、花街の銘酒屋で女将をしている。一方、謎の男たちに襲撃され、物語の鍵を握る少年・慎太。慎太から助けを求められたことで、追われる身となった2人…。復興で活気づく東京や関東近郊の逃避先を舞台に、最大のクライマックスである百合と慎太の壮絶なバトル・・・。関東大震災後の東京を生き抜く先に、終息の地は訪れるのか!?
出演:綾瀬はるか 長谷川博巳
羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)/ シシド·カフカ 古川琴音 清水尋也 / ジェシー(SixTONES)
佐藤二朗 吹越満 内田朝陽 板尾創路
橋爪功 / 石橋蓮司 / 阿部サダヲ
野村萬斎 豊川悦司
監督:行定勲
企画プロデュース:紀伊宗之
原作:長浦京『リボルバー・リリー』(講談社文庫)
配給:東映
コピーライト:©2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ
映画公式サイト:https://revolver-lily.com/
8月11日(金)全国公開