映画『流浪の月』のフレッシャーズ試写会が5月8日、東京・神楽座にて行われ、本作W主演の広瀬すずと松坂桃李が登壇した。
凪良ゆうの傑作小説「流浪の月」を原作に、李相日監督の手で映画化。10歳の時に、誘拐事件の“被害女児”となった女性と、その事件の“加害者”とされた19歳の青年が15年後に偶然にも再会し、人生が揺れ動いていく様を描く。家内更紗(かない さらさ)を広瀬、青年・佐伯文(さえき ふみ)を松坂が演じる。また、事件から15年経った現在の更紗の恋人・亮を横浜流星、癒えない心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じるほか、趣里、三浦貴大、白鳥玉季(子役)、増田光桜(子役)、内田也哉子、柄本明ら実力派俳優陣が顔を揃えた。
この日はこの春、新社会人としてスタートを切ったフレッシャーズたちと広瀬すず&松坂桃李がトークセッションを展開。数々の現場を乗り越えてきた先輩が経験談なども交えて、それぞれの質問に答え、熱いエールを送った。
”フレッシャーズ”にかけて、本作の現場でも初めての経験となったことがあるか?と問われた松坂は、「李監督の現場は初めてでしたが、その現場作り、1シーン1シーンに正面から向き合ってじっくりじっくり煮詰める感じが凄かった。スケジュールを気にしなくていいと自然と感じさせてくれるので、自分も自然と役と作品に没入できて、あっという間に時間が過ぎていき、気づいたらもの凄く疲れている・・・そういう現場は初めてだったので貴重でした」と振り返る。
広瀬は「私は『怒り』という作品が(李監督と)初めてでしたが、その時は、初日にワンカットも撮れず、次の日に3カット撮っただけでその後15時間寝たんです(笑)。体力もそうですが、精神的にもエネルギーを貯めて放出する作業の連続でした」と、李組の濃密な時間を吐露。広瀬の言葉に松坂も「知らぬ間に色んなものを感じていますね」と同調していた。
今回の現場で「血のり」の洗礼を受けたという広瀬。「あんなにガッツリ血のりをやったことがなかったので、嬉しかったです」と笑顔を見せ、「移動のときに色んな人に見られて、途中からフェイスシールドからマスクに変えました(笑)」と楽しそうに明かし、「血のりに憧れもあったんです。映画だなぁと思って」と迫力ある映像に満足気。「ゾンビ(の役)とか大変ですよね。今度練習しておきます」と続けると、松坂も「やりたいね!ゾンビ!」と乗っかり「次回作は“ゾンビ”で!(笑)」と二人でノリノリに。
「新しい現場や環境で心がけていることは?」と問われると、松坂は「聞くこと」と答え、「新しい環境に入ったときは、自分はゼロの状態なので、監督をはじめ各部署の人たちがどういうスタンスでこの作品に取り組んでいるか、こだわりや考え方を聞くということが大事かなと思っています。それによって現場が一つになる。”李組”というように組は一つの組織。だからその中で自分が初めて入ったときにまずやれることは“聞くこと”だと思います」と持論を展開。
広瀬は「松坂さんの話が素晴らしすぎて喋りたくないんですけど・・・(笑)」としながらも、「私は“聞く”感覚で“見る”ことです。けっこう観察しています。人がらとかざっくりでもいいから分かったらいいなと。人がらは台本には書いてないので。(スタッフの)皆さんも私に気を使わないように、お芝居が気持ち良くできて全員で良い状況にいられることを意識しています」と語った。
ここで、会場のフレッシャーズからの質問に直接答えることなった広瀬と松坂。
「大変なときにどうやって乗り越えてきましたか?」という問いに、広瀬は「支えてくれる周りの人に遠慮なく甘えます。辛いときは『辛い』と言いますね」と。「それは大事!」と頷いた松坂は「1回立ち止まります。自分で分かっていないのに周りを気にして『やらなきゃ!』という感じになりがちなんですが、そこを勇気を振り絞って一回立ち止まってみるというのも1つの方法かなと。そうすることで自分がやれることが見えて来る。そこを集中的にやってみると突破口になって乗り越えられた感じがします」と丁寧に話した。
4月から新入社員となったという男性から「これから配属が決まるのですが、希望の部署に入れなかったらどうしたらいいですか?」と具体的な質問も。松坂は「僕もこの作品をやりたいのに・・・と思っていたのに、他の作品に取り組むことになったことがあるけれど、いま思うと、その作品をやったからこそ、この作品に繋がっていて自分にとっては目標としていることの最短ルートだったということがあるんです。いい意味で割り切ってその仕事のマインドで挑むと気が楽だと思います。何事も経験であって、それは必ず自分の身になる。その道の幅が太くなると思うので」とアドバイス。
広瀬も「私も運命を感じたり、タイミングであったりすることがありますが、その瞬間は必死に目の前の事にしがみついていました。きっと神様がこっちの方が向いてるよって言ってくれているんだなと心のどこかで感じてみるのもいいかも」と気を楽に持つことを勧める。
さらに新社会人たちにメッセージを求められると、広瀬は「ある人に、『頑張らなくていいよ、頑張らないでね。でも頑張ってね』と言われてことがあって、その言葉を大切にしています。無理せず自分のペースで、(映画の)更紗と文のように周りがどうであっても自分を見失わないことが大事。それは難しいことかもしれませんが、自分がホッとできる時間を大切に、行くぞ!と言うときだけグッと力を入れて頑張っていただけたらなと思います」と伝え、松坂は「頑張る基準は人ぞれぞれで、他人と自分は違うと思う。頑張りすぎない。新しい環境に入って、まだまだ吸収しなきゃいけないことがたくさんあるからこそ、こわばってしまうと思うので頑張らないことに頑張ってみるといいかも」とエールを送った。
新入社員たちとのトークは二人にとっても貴重な時間となったようで、広瀬は「私も皆さんと同い年くらいなので、松坂さんのお話をもっと聞きたいくらい!」とニッコリ。松坂も「皆さんのお話を聞いて気持ちが引き締まりました。貰ったものがたくさんあります」と感動の面持ちだった。
映画『流浪の月』
<ストーリー>
雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2か月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。それから15年後。“傷物にされた被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗と文は再会する。しかし、更紗のそばには婚約者の亮がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷が寄り添っていて…
原作:凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社刊)
出演:
広瀬すず 松坂桃李
横浜流星 多部未華子 / 趣里 三浦貴大 白鳥玉季 増田光桜 内田也哉子 / 柄本明
監督・脚本:李相日
撮影監督:ホン・ギョンピョ
音楽:原摩利彦
製作総指揮:宇野康秀
製作幹事:UNO-FILMS(製作第一弾)
共同製作:ギャガ、UNITED PRODUCTIONS
配給:ギャガ
映画クレジット:(c)2022「流浪の月」製作委員会
映画公式サイト:https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/
5月13日(金)、全国ロードショー