映画『流浪の月』の初日舞台挨拶が5月13日、東京・TOHOシネマズ日比谷にて行われ、本作W主演の広瀬すずと松坂桃李と、共演の横浜流星、多部未華子、内田也哉子と、李相日監督が登壇した。
凪良ゆうの傑作小説「流浪の月」を原作に、李相日監督の手で映画化。10歳の時に、誘拐事件の“被害女児”となった女性と、その事件の“加害者”とされた19歳の青年が15年後に偶然にも再会し、人生が揺れ動いていく様を描く。家内更紗(かない さらさ)を広瀬、青年・佐伯文(さえき ふみ)を松坂が演じる。また、事件から15年経った現在の更紗の恋人・亮を横浜流星、癒えない心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じるほか、趣里、三浦貴大、白鳥玉季(子役)、増田光桜(子役)、内田也哉子、柄本明ら実力派俳優陣が顔を揃えた。
役作りで身体を絞った松坂。MCから「激ヤセがニュースにもなっていましたね」と声をかけられると、「『何かあったのか・・・?』と言われていましたね(笑)」と苦笑い。「情報解禁前だったので、言うに言えないというか…。そのうちに分かるだろうなと思っていました」と日々を過ごしていたという。
これまでにない役どころを演じた横浜は「更紗と文の目線で見ればイヤなヤツかもしれないけれど、亮の一番の理解者となり、彼を愛して生きていこうと思いました。そして更紗をまっすぐ愛すことを意識して臨みました」とし、「贅沢な時間を過ごし、更紗との関係を作ることができました。とても幸せな現場でした」と充実した経験を振り返る。
多部は「短いシーンの中で、どれだけキャラクターが出せるか、凄く悩みながら現場にいました。監督から『(役作りのために)桃李くんを触っているように』と言われて、休憩時間などにずっと触らせていただいきました(笑)。松坂さんはゾッとするぐらいウエストが細くなっていて、ここに至るまでにいろんな思いがあったんだろうなと触りながら感じました。私も頑張らなければ・・・と思わせてくれるお人柄と体形でした」とニッコリ。多部とは何度か共演経験がある松坂は「多部さんとはこれまでの共演で信頼関係もあります。今までの積み重ねが助けになったのかなと思います」とほほ笑んでいた。
一方、出演オファーを一度断ったという内田は「私の姿かたちが母に似ているので、樹木希林の表現力を求められていたら大変だと思い、丁重にお断りしたんですが、監督からご丁寧なお手紙をいただきまして。『演技力は求めていません。音葉の気持ちが理解できれば、その場に存在してくれているだけで大丈夫です』と書かれていました」と。その後李監督を会って話をし、「撮影監督も美術もキャストも素晴らしい方々が決まっていて、そんな中に飛び込まないほうがあとで後悔するなと思いました」と出演を決めたことを説明。
さらに、「母・樹木希林も映画『悪人』で監督にお世話になったのですが、母が監督のことを『しつこい』と言っていて・・・」と明かすも、「文と母の関係をどう思うか、監督が長い時間聞いてくださったんです。1人ひとりの役の魂に向き合うと、こういうふうに長い時間が掛かるのだと、『しつこい』という言葉の意味が凄く腑に落ちました」と続けた。
映画『ツナグ』で樹木希林と祖母と孫の関係で共演した松坂は、「今度は也哉子さんと親子役。個人的に宿命だと感じています」としみじみ。
また、撮影現場では誕生日サプライズを仕掛けられたという横浜。「急きょ僕も参加するシーンが追加になったと言われて。文と更紗がいるところに押しかけて、怒りに任せてゴミ箱をぶちまけるというシーンだと。追加のシーンが出来て凄く嬉しかったです。(気持ちを作って)ゴミ箱を開けたら、中にプレゼントがあったんです。嬉しかったんですが、結局僕の追加のシーンはないんだなと、不思議な気持ちになりました」と、少しだけ肩を落としたこと告白し、会場を沸かした。
松坂は「亮が激昂して入ってきて、ゴミ箱を開けたらプレゼントが入ってるという、その怒りから喜びにいくまでにいくストロークはすさまじかったはず」と笑い、広瀬も「こちらは笑いを堪えるのも必死でした(笑)。ゴミ箱を開いて、横浜さんから『えっ?』と聞いたことがない声が出ていました」と、重厚な撮影の中でも微笑ましい時間があったこと回想していた。
イベントの終盤には、キャストの増田光桜がサプライズ登場し、広瀬と松坂に花束を贈った。
増田は、佐伯文が一時期、生活を共にする安西梨花を演じたが、連続テレビ小説「なつぞら」で広瀬の子ども役として共演している。広瀬は「朝ドラではずっと一緒に遊んでいました。こんなにすぐ、しかも李組で共演させていただけて嬉しくて、感動して泣きそうになりました」と喜ぶ。
松坂が増田について「素晴らしい女優さんでした。幸せをありがとうって感じでした」と語ると、増田も「演技中に、松坂さんの声が心の中でジワーッて響いて、松坂さんってすごいな、すてきだなと思ったのを覚えています」と、10歳とは思えないしっかりとした口調で返す。その言葉に松坂は「この感想が、僕の心にジワーッと広がっています」と感激しきりだった。
映画『流浪の月』
<ストーリー>
雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2か月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。それから15年後。“傷物にされた被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗と文は再会する。しかし、更紗のそばには婚約者の亮がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷が寄り添っていて…
原作:凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社刊)
出演:
広瀬すず 松坂桃李
横浜流星 多部未華子 / 趣里 三浦貴大 白鳥玉季 増田光桜 内田也哉子 / 柄本明
監督・脚本:李相日
撮影監督:ホン・ギョンピョ
音楽:原摩利彦
製作総指揮:宇野康秀
製作幹事:UNO-FILMS(製作第一弾)
共同製作:ギャガ、UNITED PRODUCTIONS
配給:ギャガ
映画クレジット:(c)2022「流浪の月」製作委員会
映画公式サイト:https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/
全国公開中!