映画『聖の青春』の完成披露試写会が10月5日、東京・丸の内ピカデリーにて行われ、主演の松山ケンイチをはじめ、共演の東出昌大、竹下景子、安田顕と、監督の森義隆が舞台挨拶に登壇。この日、松山と東出は和装で登場。「将棋というのは盤と駒を使うだけでなく、日本の伝統美も存在します。和服がスクリーンに映えて、目にも美しい映画になっているはずです」と笑顔を見せた。
本作は、大崎善生の同名ノンフィクション小説を原作に、病と闘いながらも将棋に全てをかけ、“怪童”と呼ばれた棋士・村山聖の生涯を、師弟愛、家族愛、友情を通して描く感動の物語。
体重を20キロ近く増量して村山聖を演じた松山は、「この役ほどスタートラインに立つ時間がかかった作品がありませんでした。村山さんは亡くなっていますが、村山さんとお付き合いのあった方に会ったり、映像も見て参考にしました。でも、それではコピーにしかなりませんので、内面をつくり上げることで村山聖以上の村山聖になれると思いました」と、精神的にも肉体的にも役作りに努めたことを明かした。さらに「原作を読んで、村山聖という人間の生き方に心を揺さぶられました。その感動をそのまま伝えなければいけないというプレッシャーはありましたが、もう、好きになっちゃったんです。この人のためだったら全てを捨てられると思い、演技に集中しました」と、役に対する気持ちを熱弁。
村山のライバルの羽生善治を演じた東出は、羽生氏に憧れを抱いていたそうで、「出演が決まったときはマネージャーさんと握手しました」と嬉しそう。それだけ熱い思いで臨んだ撮影だが、「撮影初日、ただ佇むだけの演技だったのですが、監督に『芝居するな!』と言われたんです」と振り返り、「芝居の表現とはなんだろうということを考えました。“リアル”というものが本作にはあると思います」と、精神面を意識して取り組んだ様子。
また、役作りのため森監督と一緒に羽生氏に会う機会があり、「プロ棋士として、勝負の世界、感情論などのお話が聞けました。やっぱり凄い人、掴みどころがなくて鬼のような人でした」と明かすと、「その会、僕呼ばれてないです・・・」と松山。
東出は、森監督から「(撮影)インするまで松山くんと話さないように」とキツく言われていたそうで、楽屋でも話すことはなかった二人。森監督が「二人は役のなかで会っているんだよ」と松山をなだめるが、それでも「羽生さんに会えなかったことは、僕は納得していないです」と羽生氏に会えなかったことを残念がり、会場の笑いを誘っていた。
対局の際には、棋士が揮毫入りの扇子を使用しているところから、それぞれ自身の座右の銘を記した扇子を披露した登壇者たち。松山は「好きに勝るものなし」、東出は「無私」、竹下は「絆」、森監督は「聖魂」と書き、安田は「おだやかに」と書いた扇子を広げ、「僕はせっかちなので、この作品ぐらい穏やかでいることを心がけたい次第です」とコメントした。ちなみに、村山聖本人の揮毫入りの扇子も披露され、そこには「大句観」と書かれている。
最後に、「自身にとってのライバルは?」という問いに、松山は「ライバルは自分。自分自身に勝てなければ村山聖という人間を演じることはできませんでした。いつもは負けてしまう僕ですが、それでも今回は絶対に負けちゃダメだというが強かったですね」と答え、東出は「僕らの世界は白黒がつくわけではない。だからこそ、結局自分に打ち勝たなければ上には行けないので、やはりライバルは自分ですね」と力を込めた。
なお、この日は、第74期名人戦七番勝負で羽生に挑戦し、初タイトルを奪取した新名人・佐藤天彦氏も登場し、「松山さんは20キロくらい増量してもう戻っていると聞いていたけれど、ここまですっきりされているとは・・・。プロってすごいですね」と驚いていた。
『聖の青春』
羽生善治を追い詰めた伝説の棋士・村山聖(さとし)
病と闘いながら全力で駆け抜けた、わずか29年の生涯を描く奇跡の実話
出演:松山ケンイチ
東出昌大 染谷将太
安田 顕 柄本時生 北見敏之 筒井道隆/竹下景子/リリー・フランキー
原作:大崎善生(角川文庫/講談社文庫)
監督:森義隆『宇宙兄弟』『ひゃくはち』
脚本:向井康介『クローズEXPLODE』
主題歌:秦 基博「終わりのない空」 AUGUSTA RECORDS/Ariola Japan
©2016「聖の青春」製作委員会
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://satoshi-movie.jp
11月19日(土)丸の内ピカデリー・新宿ピカデリー他全国公開