映画『聖の青春』の初日舞台挨拶が、11月19日、東京・丸の内ピカデリーにて行われ、主演の松山ケンイチをはじめ、共演の東出昌大、リリー・フランキー、柄本時生、森義隆監督が登壇。さらに、主人公・村山聖の最大のライバルであった羽生善治三冠がゲストとして駆けつけ、映画の公開を祝った。
本作の原作は「感涙の名作」として大絶賛される大崎善生のデビュー作。天才・羽生善治と「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、29歳にして亡くなった実在の棋士・村山 聖[さとし]―。病と闘いながら将棋に全てを懸け、全力で駆け抜けた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動の実話。
主人公・村山聖演じるのは、松山ケンイチ。かつてない驚異的な役作りで精神面、肉体面の両方から村山聖にアプローチし、熱演。聖の最大のライバルであり、本作の“ヒロイン”ともいわれる羽生善治に、東出昌大。弟弟子・江川貢役に染谷将太。聖を支えた師匠・森信雄役にはリリー・フランキー。 母・村山トミコ役に竹下景子。共に闘ったプロ棋士役に安田顕。 柄本時生、鶴見辰吾、北見敏之、筒井道隆ら豪華キャスト陣が脇を固め、人間の知の限界に挑戦し続けた伝説の将棋指しの人生を、愛情豊かに描き出している。
まずは主人公・村山聖役の松山が「今日は、あいにくの雨ですが、どこかひねくれたところのある天国の村山さんが降らせたのかなと思います(笑)。本作を観て、みなさまの中に何かが生まれれば嬉しいです」と、挨拶。村山聖の最大のライバル、羽生善治役を演じた東出昌大は「公開を心待ちにしていました」と、微笑んだ。
村山を献身的に支える師匠、森信雄役を演じたリリー・フランキーは、「撮影中は男くさくて泥くさかったが、完成した作品を観てみると、必死で生きている人の清潔感で満ちていたと思いました」とコメント。村山と共に闘うプロ棋士、荒崎学役を演じた柄本時生は「一つのことにここまで生涯を掛けた人というのは本当に貴重。この作品に関われて光栄でした」としみじみ。
森義隆監督は、「29歳で原作に出会ってやっと今日、初日を迎えることができました。8年の歳月がかかりましたが、それは素晴らしいキャストたちに出会うための期間だったのだなと思います。この作品は我々の手を離れ“みなさんの映画”になります。手塩にかけた子どもが旅立つような心境です」と、万感の思いを伝えた。
村山氏が亡くなった29歳と同じ歳に原作と出会ったという松山は、「当時、もし村山役を演じられたら5年に1本の作品になると思っていた」と語る。しかし、内面・外面から役にアプローチをし撮影を重ねるうちに、「10年に1本の作品に変わった」と、その重みを感じていた様子。「村山さんと羽生さんが対局の先に新しい世界をみたように、私も東出君と演技の先の世界を見ることができました」と明かすと、さらに今作が松山にとって貴重な存在となり「一生に一本の作品と言えるほどの作品になりました」と述べた。「もう二度と体験できないかもしれないと思いつつ、またあの世界を観たいと思っています」と目を輝かせ、自身の役者人生における大きな財産となったようだ。
リリーも、「対局シーンを観ながら、村山さんと羽生さんはなんてすごい人なんだと思いました。それを伝える映画ってすごい、演じる役者ってすごいと感じた」と熱く語り、松山の徹底した役作りにも驚いた様子。「劇中で村山さんが師匠からマージャンを教わったというセリフがあるんですが、実際はマージャンシーンは無いんです。でも、松山君は役作りの為に一度マージャンをしてみたいと言い出したんです」と、俳優の新井浩文とピエール瀧に協力してもらいマージャンを行ったという裏話を明かした。
プロ棋士の所作は、役作りの上でとても大変だったと語る柄本。自身は左利きにもかかわらず、右手での駒打ちを練習したとのこと。東出は、森監督から「芝居をするな」と言われ、モノマネではない、羽生善治像を演じることに苦労をしながらも「情熱を持って演じました」と胸を張った。
この日は、村山聖の最大のライバルである羽生善治三冠が、特別ゲストとして舞台に登場。
羽生三冠は、「村山聖という存在を知っていただけて嬉しく思います。映画に関わった全ての人にお礼を言いたいです」と、感謝の気持ちを示した。松山の演技について、「村山さんにまた会えた気持ちになり嬉しかったです」と称しながらも、自身が出る映画を観ることについて「ふつうは、死んだ後に映画で描かれることは多いですが、生きているうちに観られるのは幸運なのかもしれないですね」と照れながらも、笑顔を見せて喜んでいた。
作中、村山が答える雑誌のアンケートに「もしも神様がいるとしたら何を願いますか?」というシーンがあることにちなみ、登壇者に同じ質問を実施。松山は、「良いことも悪いことも両方見ていてほしい」、東出は「神様には頼りません」、リリーは「自身が演じた森さんにあった際、汚い人と聞いていたが、そんなことはなかった。お会いしたときの汚い格好を消したいです」、柄本は「ジェームズ・ディーンになりたい(笑)」、羽生さんは「劇中の村山さんの回答が素晴らしく、それ以上のことが言えません」、森監督は「褒められて伸びるタイプだか毎日褒めて欲しい」と、それぞれ思い思いの回答が並んだ。
また、本作役作りのために将棋道場へ通い、指し手、棋力ともに努力を惜しまず、結果として壮絶な対局シーンを演じた松山と東出に対し、その努力を称えて、公益法人日本将棋連盟より、二人へ初段の免状が贈呈された。
通常の免状には将棋連盟会長・名人・竜王の直筆署名が入るが、今回は特別に羽生三冠の署名入りの特別免状を用意してもらい、羽生三冠本人から手渡された。松山は「将棋という美しい世界で生きる棋士の方々からこのようなものをもらいとても嬉しい。自分の人生への戒めとして受け取りたいです」と満面の笑み。続いて、プライベートでも将棋ファンである東出は「今、映画の舞台挨拶だという事を忘れて舞い上がっております。実力的にまだまだなので、今後も将棋を続けて段を取りに行きたいです」と、興奮を隠せない様子。
最後に松山が「今日このように初日を迎えられ、僕の中の村山さんは消えてしまうと思います。でも、きっとみなさんの心の中に村山さんが生き始めたと思います。村山さんの人生、将棋という世界を知り、生きる美しさを学んだ気がします」と、メッセージを伝え、舞台挨拶を締めくくった。
『聖の青春』
松山ケンイチ
東出昌大 染谷将太
安田 顕 柄本時生 鶴見辰吾 北見敏之 筒井道隆
竹下景子/リリー・フランキー
原作:大崎善生(角川文庫/講談社文庫)
監督:森 義隆『宇宙兄弟』『ひゃくはち』
脚本:向井康介『クローズEXPLODE』『陽だまりの彼女』
主題歌:秦 基博「終わりのない空」 AUGUSTA RECORDS/Ariola Japan
配給:KADOKAWA
(C)2016「聖の青春」製作委員会
公式サイト:http://satoshi-movie.jp
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