第28回東京国際映画祭 コンペティション部門出品作品
”本物の“アンドロイド出演作品
女優・ジェミノイドF 女優賞獲得なるか!?
第28回東京国際映画祭コンペティション部門の『さようなら』(11月21日全国ロードショー)の舞台挨拶が24日、TOHOシネマズ六本木で行われ、本作で“映画初出演”の本物のアンドロイド「ジェミノイドF」が深田晃司監督、ブライアリー・ロング、村上虹郎、そしてジェミノイドFの開発者である大阪大学の石黒浩教授とともに登壇した。
今回初めてお披露目となる本作。上映前の舞台挨拶では、深田晃司監督、村上虹郎、石黒浩教授に続き、ブライアリー・ロングに押されジェミノイドFが車いすで登場すると会場からは拍手が。
ワールドプレミアを日本でやりたかったという深田監督は、東京国際映画祭のコンペティション部門への選出、そして六本木最大のスクリーンでの上映に万感の思いで挨拶。
主演のブライアリー・ロングは、「『歓待』(2010)で賞(第23回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門作品賞)を頂いていて、わたしはこの映画祭に育ててもらったようなもの。またここに帰ってくることができてとても嬉しい」と流暢な日本語で会場を沸かした。
アンドロイドのレオナ役を演じたジェミノイドFは「私の演技も思いの外良かったので最優秀女優賞をいただけるのではないか」と述べ、会場が笑いに包まれた。主演のブライアリーさんに「すみません・・・」と気を遣う場面もあったが、「私が受賞するとアンドロイドが女優賞を受賞するのは世界初のこと」と女優賞獲得へ意気込んだ。
「先ほど、ジェミノイドさんに挨拶したのですが、手の感覚とかやばかったです」とジェミノイドの人間っぽさに驚きのコメントするのは村上虹郎さん。そんな村上さんは、希望を無くした世界の中で、唯一希望の光として存在する役どころ。劇中のあるシーンについて「こんなシーンは今後一生経験できない。他に見たことがない」と見どころを語ってくれた。
今回アンドロイドアドバイザーとして関わった石黒教授は、「今まで色んな所でアンドロイドを使ってきたが、アンドロイドを通して人間とは何かを考えるうえで、演出家から学ぶことが多い。アンドロイドを使うことで、人の表現の幅が広がり、新しい可能性を広げられた」と自身のロボット研究の成果を確信し、「“本物の”アンドロイドの映画出演は映画界における大きな一歩であり、歴史に残ることである」と説得力のある言葉で本作の凄さを熱弁して頂いた。
個性派揃いの舞台挨拶、記者会見、上映後のQ&A。中でも本物の人間かのように思えるアンドロイドに場内の観客は始終釘づけ。人間と会話を織りなすジェミノイドFの姿とその発言に会場に笑いがおき、上映後のQ&A終了後には、ジェミノイドFを写真に収めようとする観客が続出。早くも注目女優としての一歩を踏み出した。
映画『さようなら』は11月21日(土)より全国ロードショー。
<物語>
日本で稼働する原子力発電施設の爆発によって放射能に侵された近未来の日本。日本の国土の大半が深刻な放射能汚染に晒され、政府は「棄国」を宣言した。各国と提携して敷かれた計画的避難体制のもと国民は、国外へと次々と避難していく。その光景をよそに、避難優先順位下位の為に取り残された外国人の難民、ターニャ。そして幼いころから病弱な彼女をサポートするアンドロイド、レオナ。彼女たちのもとを過ぎていく多くの人々。そしてそれぞれの生と死。やがて、ほとんどの人々が消えていく中、遂にターニャとレオナは最期の時を迎えることになる・・・・・。
<原作・アンドロイド演劇「さようなら」とは>
平田オリザとロボット研究の第一人者である石黒浩( 大阪大学教授・ATR石黒浩特別研究所客員所長 )が、大阪大学にて2007年から共同で進めているロボット演劇プロジェクトの最新作であり、人間俳優とロボットが世界で初めて共演し、芸術と科学が交差する画期的なコラボレーション作品。2010年、世界に先駆け「あいちトリエンナーレ」で初演され、その後も東京、大阪、オーストリア、フランスなどでも上映され、現在も各国より上演依頼が殺到している。まさに21世紀初頭に生まれた歴史的記念碑的演劇であると言える。
約20分の短編作品の中で、死を目前にした少女にアンドロイドが谷川俊太郎、ランボー、若山牧水などの詩を淡々と読み続けるその静謐な時間は、「人間にとって、ロボットにとって、『生』とは、そして『死』とは…」、鋭く問いかける。
脚本・監督:深田晃司(「歓待」「ほとりの朔子」)
原作:平田オリザ アンドロイドアドバイザー:石黒浩
出演:ブライアリー・ロング、新井浩文、ジェミノイドF、村田牧子、村上虹郎、木引優子
配給・宣伝:ファントム・フィルム
11月21日(土) 新宿武蔵野館他 全国ロードショー!