映画『正欲』の大ヒット御礼トークイベントが、12月11日、東京・TOHOシネマズ 日比谷にて行われ、主演の稲垣吾郎と岸善幸監督が登壇した。
朝井リョウの第34回柴田錬三郎賞を受賞した話題作「正欲」を、『あゝ、荒野』(2017)、『前科者』(2022)などの演出家・岸善幸と、原作を大胆に再構築しながら監督の演出の可能性を拡げていく脚本家・港岳彦のふたりのタッグによって映画化。
検察官として横浜検察庁に務め、妻と息子と3人でマイホームに暮らす寺井啓喜(てらい・ひろき)役に稲垣吾郎。広島のショッピングモールで契約社員として働く桐生夏月(きりゅう・なつき)役に新垣結衣。両親の事故死をきっかけに広島に戻ってきた夏月の同級生・佐々木佳道(ささき・よしみち)には、磯村勇斗。そして佐藤寛太がダンスサークルで活動し、大学の準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也(もろはし・だいや)、東野絢香は大也と同じ大学に通う神戸八重子(かんべ・やえこ)を演じる。
公開から1カ月経っても、日本のみならず各国から反響が届いている本作。稲垣は「嬉しいですね。これはご褒美。俳優もスタッフの皆さんも覚悟がいる、忘れられない撮影期間だったと思うので、こうやって皆さんに届いて反響をいただけることをとても嬉しく思っています。観ていただいて新たに映画の命に灯がともる、これからもっと皆さんの力で広めていただけたら嬉しいです」と満面の笑みを浮かべた。
岸監督は「稲垣さんたちと話し合いながら、悩みながら作ってきた作品」と振り返る。台湾や香港の上映で舞台挨拶に参加し反響の大きさを体感したが、「香港や台湾でも反響の大きさにびっくりしました。上映後のQ&Aなどでもたくさんの質問を頂いて嬉しかったですね。国境を越えて(本作が)受け入れられているんだなと」としみじみ。
稲垣も「僕たちが伝えようとしている人間の生き方がストレートに伝わったのでは」と感慨深げ。
普段から様々な映画作品を紹介している稲垣だが、改めてこの作品の魅力について「観る人の視点と価値観によって異なる作品。色んな感じ方や感想があると思いますが、“気づき”のきっかけになる作品を監督に作って頂いたので、このようにみんなで話し合える時間が幸せですよね」と観客の視線で分析した。
出会いによって価値観が変わっていく人物という難しい役柄を演じた稲垣は「映画は順番に撮影していくことはなかなかできないんです。なので、啓喜の中の心の変化のグラデーションのさじ加減を監督と話し合いながら作り上げました。あとは監督が現場で寄り添って導いてくださった」と吐露し、監督の存在にも感謝。
稲垣は「監督は現場でいつもニコニコしてるんですよ」と話すと、監督は照れ笑いを浮かべながら、「僕は見ているだけの監督。放置してきました(笑)」と応える。それでも「普段は俳優にほぼ任せていますが、今回は重く難しい題材なので現場では和やかにする雰囲気づくりは意識しました。皆さんが役に入られ前まで、どうでもいい雑談などをしていましたね(笑)」と、監督の心遣いを見せる。
ほかにも、稲垣は「僕は父親の気持ちとかをアドバイスしてもらいました。現場ではシリアスで緊張感があったので、監督がニコニコしていることで、みんなその空気に助けられていたと思います」と述懐。
監督が「稲垣さんがこの映画に出ていただくことが決まって90%イメージできました。そこで10%を僕が何か言うことでこれまでの稲垣さんではないくらいパワーを発揮してもらえるのではと」と伝えると、稲垣は「カメラが回る前に僕の耳元でコソコソって。その一言がとても響くんです」と納得しきり。「ね、そうだよね」とポスターパネルの新垣結衣と磯村勇斗にマイクを向けて、会場の笑いを誘う場面も。
本作の編集も務めた岸監督。編集の際に心がけたことを問われると、「基本的に役者任せ、放置していく演出ですが(笑)、それでも演出をいれる時もあります。しかし、結局最終的には、役者に任せた最初の方のテイクを使っているんです」と語る。
監督の言葉に聞き入る稲垣は「岸監督は現場で様々な角度から撮影されていました。だから僕ら役者側は、どこを使われるのかわからないんです。だからこそ自分が意図していない表情が撮られていて、今までに見たことのない自分も知らないものがスクリーンで見れました」と監督の手法に納得顔。
トークが盛り上がってくると、稲垣から直接監督に質問も。「ラストシーンで絵コンテが見えちゃったんですよ。僕の表情のアップで終わる予定だったと思うんですけど、完成した映画を観て、そこは使わなかったんだなと(笑)」と疑問をぶつけると、監督はすかさず「使わなくてすみませんでした(笑)」と頭を下げる。「シーンをカットするのは本当に心苦しい。苦しみながら撮っています」と言うと、稲垣は「監督のその選択が良いんですよ。それぞれのキャラクターがしっかり描かれていて、何も文句は言えません!」とフォローし、監督を称えていた。
<STORY>
横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、息子が不登校になり、教育方針を巡って妻と度々衝突している。広島のショッピングモールで販売員として働く桐生夏月は、実家暮らしで代わり映えのしない日々を繰り返している。ある日、中学のときに転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。ダンスサークルに所属し、準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也。学園祭でダイバーシティをテーマにしたイベントで、大也が所属するダンスサークルの出演を計画した神戸八重子はそんな大也を気にしていた。
映画『正欲』
出演:稲垣吾郎 新垣結衣 磯村勇斗 佐藤寛太 東野絢香
監督・編集:岸善幸
原作:朝井リョウ『正欲』(新潮文庫刊)
脚本:港岳彦
音楽:岩代太郎
主題歌:Vaundy『呼吸のように』(SDR)
撮影:夏海光造 照明:高坂俊秀
作:murmur 制作プロダクション:テレビマンユニオン
配給:ビターズ・エンド
©2021朝井リョウ/新潮社 ©2023「正欲」製作委員会
2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/ヴィスタ/134分/映倫G
bitters.co.jp/seiyoku
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11/10(金) 全国ロードショー!