小説家・乙一として知られる安達寛高の完全オリジナル映画『シライサン』が2020年1月10日(金)より全国公開する。“その名“を知った者のもとに現れ、目をそらしたら殺されてしまうという新たな怨霊の恐怖を描く映画『シライサン』。
誰もが仲間としたことがある怪談話を始まりに、親友の突然死のショックから立ち直れない女子大生・瑞紀(飯豊まりえ)と弟の変死に直面した青年・春男(稲葉友)が真相を探るうちにシライサンの話に行き当たる。その名を知ってしまった彼らの行く末は・・・。世界で確固たる地位を築き、今も注目を集めるジャパニーズ・ホラーに新しい恐怖が加わった本作。
瑞紀に寄り添い、聡明な青年・春男役を演じた稲葉友に、本作への思いを聞くことができた。
― 本作への出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
まず、現場に行ったらどうなるんだろう・・・という興味が湧いていました。台本を読んでみると、やっぱり怖かったんですが、怖がってばかりはいられませんから、どのように怖く映るかを考えながらスタートしました。撮影に入ってみると、とても穏やかな現場でした。自分たちが演じているときは怖いんですが、これが怖く映るかを計算しながらやる作業はなかなか難しかったです。そして完成作品を観たら・・・怖かったです(笑)。
― 直視できましたか?
もちろん、自分が出演して一緒に作った作品ですから観ましたよ。怖いなと思いながら、撮影前の気持ちに戻って観ました。
― この映画の製作にあたり、飯豊まりえさんはお祓いに行かれたそうですが、稲葉さんは行かれなかったそうですが。
単純にスケジュールの都合です。僕の分もお祓いしておいてもらいましょう、という感じでした。飯豊さんがとても不安がっていたので、彼女が(お祓いを)受けられなかったら問題ですけど、僕が受けられないぶんには全然大丈夫です。
― それで撮影中に何か不思議なことに見舞われたことはありましたか?
序盤は何かとシライサンのせいにしがちでしたね。ケーブルをテープで貼って上のほうに這わせていたら、撮影の終盤にパタン!と落ちてしまって。別にそれはテープ(の貼り)が甘かったというだけなんですけど、「ほら、シライサンだよ」って。一瞬怖いんだけどコミカルな雰囲気になっていましたね。誰かがセリフを噛むと「シライサンかな、今の」と言って和ませていました。
― シライサンの造形はご覧になっていかがでしたか?
怖かったです! まず一番最初に見せてもらったのが、特殊メイクの写真だったのですが、その時の印象が衝撃的で本当にイヤだなと。あ、イヤだというのは稲葉の感想ですが(笑)。そう思えたのは作品にとってプラスだと思いますし、僕が感じた怖さをちゃんと作品を通してお伝えしないといけないなと責任も感じました。ですから、シライサンのビジュアルは100点、いや120点。抜群のものが出てきたなと思いました。
― ホラー映画ではありますが、しっかりと人を描いた本作です。春男という青年とどのように向き合って役作りをされたのでしょうか?
春男はちゃんと物語を進めていく人。春男が「わからない」ところから物語が始まって、春男が「わかった」ことで、みんながわかるんです。そこに寄り添って、物語を進めるために歩かなければいけないなと。好奇心というか、探究心というか、その家族が変死したという謎に迫りたくなる理由はなんだろうかと考えました。単純に分からないから知りたいのであれば、春男でなくてもいいわけで。春男の家族関係、弟との関係性はどうだったんだろうとか、そういうところをちゃんと目を向けて共感して理解していきました。
― 春男の目線で物語を進めていく上で、演じていて特に難しかったことはありましたか?
謎の解き方、進め方、説明の仕方がちょっと刑事っぽいんです。でも、刑事じゃなくて大学生なので、仕事ではないというスタンスで追いかけていくように心がけました。独り言だったり、説明のセリフがキチンとしすぎないように、形式張って見えないようになるといいなと思いました。
― それも、飯豊さん演じる瑞紀との掛け合いがあってからこそ、自然にでてきたんでしょうね。
飯豊さんが演じる瑞紀という子はとても変わった女の子だなという印象があったんですが、共通の目的を持って関わったときにどう見えるかが重要だと思います。
― 飯豊さんとは2回目の共演ということですが、共演されていかがでしたか?
以前の共演では、1~2ヶ月一緒だったんですが、「あの作品で俺ら芝居で絡んでなかったよね」って感じだったんです。ですからガッチリ共演したのは始めてのような気がします。でも、よく知っている方なので、安心感がありました。
― 自分の身近な人が不審な死に方をすると、そこに踏み込むのはちょっと怖いなと感じると思いますが、瑞紀と春男はそこに踏み込んでいきます。そういう部分をすんなり理解できましたか?
自分だったらどうなるだろうかと考えました。まったく同じシチュエーションではないと思いますが、「自分だったらこういうふうになっていたら、知りたくなるだろうな」というところから少しずつ手繰っていきました。家族の存在が大切なことはシンプルなことなので、行動原理は納得できたので、僕の身近な要素に変換してみて、また役に歩みよって・・・という作業でした。凄いことだなと思いつつ、やっている本人は凄いことをやるぞとは思っていないんです。シンプルでピュアな衝動で動いているので、そこにちゃんと乗ることができればいいのかと思いました。
― 稲葉さんご自身は怪談とか都市伝説が気になりますか?
怪談は苦手ですね。都市伝説はおもしろいと思います。落語は好きなんですけど・・・。怪談はやっぱり怖いです。日本の怪談は人情があったりして。それが今回の作品にもあるんです。現実にはありえないような出来事をもってくることで逆に現実が際立ってくるような要素が強いですね。
― ジャパニーズ・ホラーの特徴は、悪役のかわいそうな生い立ちやバックボーンがあると思いますが。シライサンもそういう感じでしょうか?
そうですね。切ないですね。ジャパニーズ・ホラーは、象徴が腕力じゃない。そういうところが日本人ぽいんです。“絆”や“繋がり”という言葉でさえ、文字変換すると、“縛る”“束縛”という言葉になってしまうところもあるんです。怖い=(イコール)パワーとは違う。海外では分かりやすく、大きな男の人がチェーンソーを持ってきてくれますけど、そうじゃないところの怖さで日本のホラーが海外でも評価されています。自分たちが信じているものや、感じているパワーというものがとても日本らしい。腕力でねじ伏せられそうな女性だったり、子供という相手なのに、出てきた瞬間にもう怖いんです。意思通じないし、腕力通じないし、逃げるしかない。今回は目をそらしたら死ぬというルールも付けられている。怖さも増します。クラシック要素もありつつ、現代版の新しいジャパニーズ・ホラーのアイコンができたと思います。
― 目をそらさないでいられる自信はありますか?
ないですね。本当に死ぬと思えばいけるかもと思いつつ、コンタクトが乾いちゃうなと正直考えました。だから、春男はコンタクトしてないんです。でも、視力的にぼやけたらダメなのかなとか、目の悪い人の場合も考えちゃったりして。怖くて目をそらせないということもありますが、目をそらして背中を向けて逃げ出したくもなる。でも、単に追っかけてくるとかじゃなくて、時空を超えて付けてくるから、シライサンは。
― 安達監督とお仕事されていかがでしたか?
安達監督はとっても穏やかな方でした。物静かで、演出もズバズバ決めていくというより、「こう思ってます」というところを伝えてくれたり、「どうしましょうか」、「こうやってみました」という感じで穏やかなやり取りで撮影が進んでいきました。監督ご自身も初長編作品ということで、監督と寄り添いながらやり取りしていて、誰もピリピリしていないなんとも健康的な現場でした。ホラー映画なのに(笑)。
― 瑞紀と春男の食事のシーンがとても印象的です。撮影されていかがでしたか。
あのシーン、ちょっと変わってますよね。撮影のときから変だったんです撮り方が(笑)。肩ごしじゃないんです。不思議な撮り方をするな、完成作品はどうなるんだろうと思っていたら、やっぱり変わっているなと。でも、ちょっとワクワクするというか、2人の可愛さ、仕事で追ってない人たちの特有の空気が出ていて、監督のこだわりが出ているシーンだと思います。現場で感じた違和感はこうやって映像で出てくるんだと思いました。とても必要な違和感でしたね。妙な穏やかさは監督の人がらが反映されているのかなと。監督の狙い通りでしてやられたなと思いました。すごくハッとさせられました。
― 「シライサン2」ができたら、出演されますか?
まず、僕(春男)が生きているかどうかわかりませんからね。回想とかで使ってくれたらいいですよ(笑)。でも、呼んでもらえたらぜひやりたいです。
― ところで、稲葉さんが今一番怖いものは何ですか? その対処法もあったら教えてください。
寝坊とか遅刻は怖いです。だから、寝坊はしません。その対処法は、まず眠れるように過ごし、起きれるように過ごすことです。早い時間に用事がなくても早めに起きておくことですね。十分な睡眠を確保できたうえで。いわゆる健康な生活ですね。でも、そういう状況がなかなか厳しくなってくると、寝起きのときの環境を厳しくしておくんです。日光がちゃんと入ってくるようにしておくとか、そのときの部屋の気温を適温じゃないようにしておいたりします。普段はなるべく早めに御飯を済ませるとか、起きたらとりあえず水を飲んで体を起こすなど、細々したことです。
― それでは最後に、これから本作をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
新しいジャパニーズ・ホラーのアイコンができたと思っています。シライサンを通してホラーだからこそ、感じられるヒューマン、人間味というものがあると思うので、そういうものを体感していただければ嬉しいです。ぜひ映画館で観てください。よろしくお願いします!
【稲葉友 (いなば・ゆう)プロフィール】
2010年ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー。1月20日より放送スタートのテレビ東京ドラマBiz『病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~』(毎週月曜22:00~)に江口智也役でレギュラー出演が決定しているほか、映画『クソみたいな映画』が公開待機中。
インタビュー撮影:松林 満美
映画『シライサン』 (英題 Stare)
出演:飯豊まりえ 稲葉友 忍成修吾 谷村美月 染谷将太 江野沢愛美 ほか
監督・脚本:安達寛高(乙一)
主題歌:Cö shu Nie 「inertia」(Sony Music Associated)
配給:松竹メディア事業部
公式 HP :http://shiraisan.jp
公式 Twitter:shiraisan_movie
©2020 松竹株式会社
2020年1月10日(金)全国公開
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