「このミステリーがすごい!2020年版」「2020本格ミステリー・ベスト10」「2019ベストブック」「2019 SRミステリーの会ベスト10」「第20回本格ミステリー大賞」の5冠を受賞、さらに「2020本屋大賞」「第41回吉川英治文学新人賞」へもノミネートされた人気作家・相沢沙呼による感動小説「小説の神様」を、「HiGH&LOW」シリーズやこれまで500本以上のMVを手掛けてきた久保茂昭監督の手で実写映画化。
ナイーブで売れない小説家・千谷一也と、秘密を抱えたドSな小説家・小余綾詩凪の何もかもが真逆の2人が、”一緒に大ベストセラーを生み出す”というミッションに、時に激しく反発し合いながらも“2人”で物語を作り始める青春ストーリーだ。
小余綾詩凪役の橋本環奈さんとダブル主演を果たした千谷一也役の佐藤大樹さんにインタビューを遂行。EXILE/FANTASTICSでのアーティスト活動をはじめ、俳優としても活躍が光る彼に本作への熱い思いを語ってもらった。
― 原作をお読みになった感想と、一也を演じるうえで気をつけたことを教えてください。
小説家の方がどんな苦労をして、陰でどんな葛藤があるかということは、あまり世に出ないのではないでしょうか。それを小説家の方が自ら書いたということが面白かったです。僕は何かを作る人の“裏側”の作品を観るのが好きなので、あっという間に読み終わっていました。きっとこの原作者の先生は自分の過去を一也に投影しているんだろうと感じましたし、自分は一也のようなタイプではないので、いざ演じるとなると自分の引き出しに困りました。演じるときは目のお芝居を研究して、セリフのないところでの感情の変化をどうしたらいいか・・・、戸惑い、動揺、同意などを意識しました。あと、パソコンに向かって文章を書いているときの表情は、きっと他人には見せないような顔をするんじゃないかなと考えて演じていました。
― 一也が物語を書く楽しさを思い出して、眼差しがパッと変わる瞬間がとても印象的です。どんな思いで演じられたのでしょうか?
今回は、演じているときに特に意識したというより、気づいたらそういう表情をしていたということのほうが多いと思います。序盤で白黒の映像からカラーに変わるシーンがあるのですが、詩凪のプロットを聞きながらどんどん笑顔になっていくところは、自分が「こういう表情をしていたんだ」と、完成作品を観て初めて知りました。とても不思議な感覚でした。用意していたというより、自然にそういう表情になっていたと思います。
― 久保監督たっての希望で佐藤さんへ出演オファーされたそうですね。一也は監督ご自身が似ているとおっしゃっている、『HiGH&LOW』のチハルとリンクしていたとおっしゃっています。佐藤さんご自身はどのように感じられましたか?
久保監督ご自身と似ていると聞いたときは驚きました。でも、役について「これは小説家だけじゃなくてどんな職業でも置き換えられますよね」という話をして、きっと久保監督が若い時代に同じような苦労や挫折を味わられたんだろうなと思いました。直接そういう話を聞いたわけではないのですが、今は500本以上のミュージックビデオを撮って活躍されていますが、僕には言えないような久保監督なりの悩みもあったんだろうなと思うと、もっと僕に教えてくれてもいいのに・・・と思いました(笑)。僕はチハルと似ている部分があるとは思っていましたが、チハルと一也がそこまで似ているとは思わなかった。ただ、何かに対して凄くピュアで真っすぐなところや、その人に関わった周りの人の環境がどんどん変わっていったりする、その人の人生を変えるくらいの原動力を秘めていたりするところは似ているのかもしれません。
― では、一也と佐藤さんご自身が似ていると思うところはありますか?
好きなものに対して一途になれるというところだと思います。僕にとってはダンスです。でも、ダンスを始めた頃は、スランプに陥ったことがあって、ダンスをやめたいと思った時期もありましたし、自分の置かれている環境と実力のなさに落ち込みました。その点ではとてもリンクすると思いました。
― 高校生で職業を持つというところも似ていますね。
そうですね。僕も高校生の時にあるアーティストさんのミュージックビデオに出させていただいたのですが、誰にも言わずにやっていました。
― でも、バレちゃったんですよね?(笑)
はい。朝の情報番組「ZIP」で放送されて「あれ?大樹じゃね?」って。次の日からヒーローになっていました(笑)。
― そこで自分の心持ちも変わりましたか?
変わりましたね~。そこから色々ありましたが、自分は運よく進んでいるほうだと思います。
― 今回は主演です。久保組の座長として意識したことはありますか?
舞台での座長は凄く意識しますが、今回の現場では特になかったです。ダブル主演ということもありますが、橋本さんが(座長としての任務)をしっかりやっていたと思います。彼女は僕より年下ですが、心から凄いなと思いました。もちろん経験が豊富なこともあるかもしれませんが、現場の盛り上げかたとか、どうあるべきとかとても勉強になりました。
あと、佐藤流司くんが役のままでいてくれて。もうずーっとふざけているんです。カメラが回っていなくても、4人の芝居のときはずっと喋っていました。そして撮影が終わってからみんなでご飯を食べに行く。毎日のように一緒にご飯を食べていたので、誰かが意識して作らなくてもずっと明るい雰囲気で撮影は順調に進んでいました。だから、僕が座長だという意識はあまりなかったです。
― 橋本環奈さんとは初共演になりますが、共演する前と後では印象は変わりましたか?
共演する前は詩凪のドSのイメージに近くて、台本を読んだときに橋本さんが演じている姿が思い浮かんでいました。でも、いざ共演してみると若いのにちゃんと自分の立場や役割を理解していて、スタッフさんへの気遣いもできる。とにかく頭がいい方だなと思いました。若くして成功する方って、もちろん実力もあると思いますが、見えない努力もたくさんあると思います。共演して、より人として好きになりました。僕のほうが先に完成作品を観たのですが、「どうだった?」って連絡がきて、気になっているようでした。僕も橋本さんもこの作品に凄く期待しています。
― どのように返信されたのですか?
結構な長文で正直な感想を送りました。「とにかく観てほしい!」って書きました。
― 橋本環奈さんにビンタされたり脛を蹴られたりと散々な様子でしたが、撮影はいかがでしたか?
最初はめちゃくちゃ遠慮されていたんです。「アーティストの方にビンタなんてとんでもないです!」と。でも、久保監督もドSなので、「大樹は全然大丈夫だから」と、冗談まじりにおっしゃって。そうしたら、橋本さんが演技にスイッチが入った瞬間に台本より1発多く入れてこられて・・・台本には3発なんて書いてないのに(笑)。久保監督が楽しくなってしまったみたいで、「往復ビンタって今どき見ないから面白くない?」と。
そのシーンは、それまで世間を軽蔑していてどこか冷めているような一也に対して観ている人もイライラが溜まっているので、観ている人の気持ちでスカッとさせる・・・というテーマがあったのでビンタの回数が増えたんだと思いますが、脛を蹴られるシーンもガチで当たっているので、リアルに「痛ッ!」と言っています。
― そんなヘタレな一也らしさを出すために、何か苦労されたことはありますか?
自分と重なる部分が少なくて、難しかったです。こういう(一也みたいな)人は、自分の主張は強くても、何か他人から言われたらすぐにシュンとなって痛いところを突かれると、すぐに表情に出てしまうというようなイメージがあったので、そこはとても意識しました。特に目のお芝居には注意を払いました。観ている方が「ムカつくけど、なんか放っておけないな」と思っていただけたらいいなと。
― 佐藤流司さんとは同じ佐藤さんですが、現場ではどのように呼び合っていたのですか?
「流司くん」「大樹」と呼び合っていました。今回彼とも初共演になりますが、僕は一方的に彼の作品をずっと観ていました。『刀剣乱舞』という2.5次元ミュージカル作品なのですが、流司くんは2.5次元の世界ではトップ俳優。僕も逆2.5次元というプロジェクト『錆色のアーマ』という作品に出演しまして、初めて2.5次元ミュージカルを観たのが流司くんの作品だったんです。最近では、映画『HiGH&LOW』やドラマ『貴族誕生 -PRINCE OF LEGEND-』など、LDHの作品にも出演されていたので自然と彼を見る機会もありました。だから今回のキャスティングを聞いたときは凄く嬉しかったです。
― 劇中の一也と九ノ里正樹(佐藤流司)も不思議な関係ですね。
台本では生み出せないようなテンポを流司くんが出すんです。僕もそれが嫌いじゃない。久保監督からも「二人(大樹と流司)は共通点があるよね」と言われました。カットがかかるまで芝居を続けたり、アドリブが好きな二人なので放っておいてもずっと見てられると言われました。私生活の雰囲気も演技に反映されていたと思います。
― ところで、佐藤さんは“神様”を信じていますか?
めちゃくちゃ信じています。どの宗教ということではなくて、神様は僕らを見守っていると思っています。いけないのかもしれませんが、色んなお守りを買ってしまいます。たくさんお守りを持ち歩いたり、家にも自分で神棚を作って毎年新しいお守りを飾っています。破魔矢も毎年買っています。
― では、最初にこの作品のタイトルを聞いてどう思いましたか?
一也と一緒です。「小説の神様って何?」でした。でも、僕も神様を信じているので、詩凪の言葉も素直に自分の中に入ってきました。(神様は)いると思うし、打ち合わせ中に久保監督に「今のシーンで、二人の神様って何だと思う?」と聞かれたんです。難しい質問ですよね。だからより考えるようになりました。
― 劇中で、一也が自暴自棄になるシーンがあります。雨に濡れた服をたたきつけたり、叫んだりするアクションは佐藤さんご自身から生まれたそうですが、どういう思いで演じられたのでしょうか?
作品を通して、あの瞬間が一番一也が惨めでかっこ悪く見えればいいなと思いました。観ている人の心をグッと引き寄せたかった。一也がどんな行動をするのか、僕自身も撮影現場に行くまでよく分かっていませんでした。人生の一番どん底にいるとき、雨に濡れて服を脱ごうとするのですが、脱ぎたいんだけど上手く脱げないことにもイライラする・・・。凄く惨めで何にイライラしているかわからないくらいの感情、きっと聞いたことないボリュームで怒りをぶつけて、観ている人がもっと彼に興味が沸くんじゃないかなと思って演じました。
― ご自身が今までにあのような感情を出してしまったことはありますか?
う~ん、そこまで感情を出したことはないと思います。いつもポジティブで、あまり怒らないので。負に陥っても感情を出さなないタイプですね。
― それでは、演技でそこまで出してみていかがでしたか?
凄くスカッとしました。めちゃくちゃ気持ちよかったです(笑)。声に出したほうがいいってよく言いますが、本当にその通りだなと思いました。
― これまで出演されてきた作品ももちろん素敵でしたが、今作には佐藤さんの本気度を感じます。この作品に出演されて、改めて何か得たもの、感じたものはありますか?
この作品に懸ける思いはとても大きくて、本気度が高かったです。企画をいただいたのは数年前で、本当に自分でいいのかなという不安もありましたが、久保監督に指名していただいたときの嬉しさも大きく、自分へのご褒美となる作品、人生の次のステップに上がるための作品にもしたいという並々ならぬ思いがありました。やるからには、新人賞など自分の中で目標を掲げて作品に挑んでいましたし、例えば監督に監督賞、映像も素晴らしいので編集賞、音楽賞など、何でもいいのでこの作品で今までお世話になった方々に貢献したいなと思いました。
― これまでにないタイプの青春映画ですね。
そうなんです。恋愛要素があるかどうかはわかりませんが、こういう青春もあるなと思える作品だと思います。僕も映画を作っているとき、そして完成作品を観て、エネルギーをもらいました。この作品を多くの方に届けたいなと心から思っています。
― 初号試写で久保監督が泣いてらっしゃいました。
見たかったです。僕の前で絶対に泣くことなどないので(笑)。
― とてもキャラクターに寄り添うような音楽も作品のポイントでは?
久保監督はとても女性アーティストの歌声が好きなのですが、これほど登場人物に合った曲を集めて、タイミングよく流すとは・・・。作品は“章”によって分かれているのですが、エピローグを話しているときの映像も一つ一つ工夫されている。そして、音楽にもたくさん助けられている映画でもあります。挿入歌だけでなく、僕は(劇中音楽担当の)中野(雄太)さんが作る音楽が昔から好きです。予告を観ただけでも素晴らしいなと思っていたのですが、完成作品を観ていろんなジャンルのプロフェッショナルの方が全員で作り上げている、久保組だと思いました。
【佐藤大樹(さとう・たいき)プロフィール】
1995年生まれ。埼玉県出身。「EXILE」兼「FANTASTICS from EXILE TRIBE」パフォーマー。
主な出演作にテレビドラマ「シュガーレス」(12)、「ワイルド·ビーローズ」(15)、舞台「錆色のアーマ」シリーズ(主演/17~19)、映画出演作に『HiGH&LOW』シリーズ(16~19)、『ママレード·ボーイ』(18)、『センセイ君主」(18)、『4月の君スピカ。』(主演/19)、CINEMA FIGHTERS project『魔女に焦がれて』(主演/19)など。
インタビュー撮影:ナカムラヨシノーブ
映画『小説の神様 君としか描けない物語』
【ストーリー】
中学生で作家デビューしたが、作品はSNSで酷評され、自分を見失った売れない高校生小説家・千谷一也。一方、同じクラスの人気者でドSな性格の上、ヒット作を連発する高校生小説家・小余綾詩凪。底辺作家と人気作家、性格もクラスでの立ち位置も、すべてが真逆の2人に、編集者から下されたミッション――それは、2人で協力し、大ベストセラーを生み出すことだった!
ダメな男子とキラキラ女子、一見正反対な2人が、反発しながらも足りないものを補い合い、物語を一緒に作るうちに、一也は、詩凪の誰にも言えない大きな秘密を知ってしまう――。友情を超えて近付く2人の距離。悩み傷つきながらも、好きなことをあきらめずに挑戦し続けた先で、2人が生み出す<物語>の行方は――?ラスト、胸があつくなる。共感と感動No.1のファンタスティック青春ストーリー!
出演:佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS) 橋本環奈 佐藤流司 杏花 莉子 坂口涼太郎
山本未來 片岡愛之助 和久井映見
原作:相沢沙呼『小説の神様』(講談社タイガ刊)
主題歌:『Call Me Sick』 伶(Sony Music Labels Inc.)
監督:久保茂昭
脚本:鎌田哲生
配給:HIGH BROW CINEMA
クレジット:©2020映画「小説の神様」製作委員会
公式ツイッター: @shoukami_movie
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/shokami-movie/
10月2日公開!
佐藤大樹さん
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