映画(ムービー)と舞台(ステージ)を完全連動させるプロジェクト【ムビ×ステ】。
プロジェクト第1弾には、映画『GOZEN-純恋の剣-』が2019年7月に公開され、舞台『GOZEN-狂乱の剣-』(2019年9月)を上演。2020年に第2弾として、映画『死神遣いの事件帖 –傀儡夜曲-』、舞台『死神遣いの事件帖 –鎮魂侠曲-』が製作され、大きな反響を得た。そして、待望の第3弾となる映画『漆黒天-終の語り-』がついに6月24日に公開した。
映画『漆黒天 -終の語り-』の主人公は記憶をなくした流浪の男。記憶を追い求める中、数々の刺客たちに狙われる。いったい彼はなぜ襲われるのか…。謎多き男をめぐる本格派ミステリー時代劇。映画は舞台『漆黒天 -始の語り-』は、映画の前日談を描く。
映画・舞台ともに主人公となる「名無し」を荒木宏文が主演を務め、映画の脚本、舞台の作・演出には、 舞台『刀剣乱舞』シリーズや、舞台『TRUMPシリーズ』などの脚本・演出を手掛ける末満健一が担当。映画の監督・アクション監督は、「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」、「ウルトラマン」など特撮作品で第一線を走るアクションの名手・坂本浩一が担う。
荒木宏文と末満健一という強力タッグに期待が高まる中、お二人に話を聞くことができた。
―「ムビステ」の第3弾となる本作ですが、映画と舞台を連動させる企画として特に意識されたことはありますか?
末満健一(以下、末満):東映さんと毛利亘宏さんが面白そうなことやっていらっしゃるなと、企画の存在は耳にしていました。なので、今回お話しをいただいたときに、「自分でいいのかな?」と素直に思ってしまいました(笑)。
この企画は俳優やクリエーターが変わっても、映画と舞台が連動するということが肝になる。今回、ムビステで初めて1人の脚本家が映画と舞台の両方を務めるので、よりその点を大事にしないといけないなと意識しました。
― 作品を制作するにあたり、発想の起点となったのは何だったのですか?
末満:ありがたいことに、今回は荒木くんと僕とで何かできればいいね・・・というところからスタートしたんです。今まで航海したことのない“ムビステ”という海にポンと放り出されたときに、自分にとっての羅針盤が“荒木宏文という俳優”だったので、荒木くんを主演として「面白い題材はなんだ?」と考えました。
― 荒木さんから組み立てていった、当て書きということでしょうか?
末満:そうですね。 “当て企画”です。
荒木宏文(以下、荒木):僕も「ムビステで末満さんとのタッグを組ませて頂ける」ということに大きな魅力を感じています。
舞台作品が映画化されることがありますが、これは舞台の人気があったからこそ、次の展開として映画化が決まっていくという流れで、同時進行ではないことが多いと思います。「ムビ×ステ」は映画と舞台が連動していることが大前提にあるという違いがあります。ただ、末満さんが脚本を書かれて、映画の監督は末満さんではないと聞いて驚きましたし、ちょっとドキドキしました。
― 荒木さんを主演として脚本を書くことで、心がけたことはありますか?
末満:脚本を書くには、もの凄くエネルギーがいるので、そのエネルギーを得るためにいつも“〇〇のためにこの作品を作るんだ”というモチベーションを自分の中に見つけるようにしています。この作品に関して、自分の中のエネルギーの源は荒木くんでした。「荒木くんが演じたことのないような役を」ということではなく、題材と荒木くんが親和性を持って進んでいける作品になればいいなとシンプルに思っていました。
以前、「COCOON 月の翳り星ひとつ」(2019年、TRUMPシリーズ)という舞台でご一緒させていただいたので、自分から見た荒木くんの人となりを手がかりにしました。主演というのはとても難しいポジションで、本人のあずかり知らぬところで責任を背負わされることもあるけれど、だからこそ作品と荒木くんが二人三脚で進んでいけるようにしたかったんです。
とはいえ、常に荒木くんをリサーチしながら書いたわけではないので、「こうしたら面白がってくれるんじゃないかな?」とか、「こうしたら荒木くんが自分の人生観と共鳴させながら関わっていけるんじゃないかな」と、想像力を働かせました。
― 末満さんが想像していた荒木さんと、実際に映像に映った荒木さんはマッチしていましたか?
末満:この作品に限らず、事前にいろんなことを想像しながら脚本を書いたり演出をしたりするのですが、だいたい想像通りにはいかないものなんです(笑)。映画の監督は坂本浩一さんが務めているので、もちろん自分の想像通りではないんですが結果的に面白くなっていて嬉しく思っています。
― 荒木さんが脚本を読まれたときの感想をお聞かせいただけますか?
荒木:脚本を読んで凄く面白くて、「演じるのがすごく楽しみです」と、すぐに末満さんに連絡しました。エンタメを世に出す上で、コロナ禍と向き合わなければならない環境がずっと続いている中、色々と考える部分が多かったんです。でも、この脚本を読んで、「僕一人がそう思っているんじゃないんだな」と、救われたような気がしました。
― そのうえで、この作品をどのように表現していこうと考えましたか?
荒木:物事って均等に、平等に見えていても、実は偏っている気がしているんです。だから、僕は常日頃から比重の軽い方というか、大きな割合を占めてないほうに重点を置いて、それぞれが50%になるようにしたいと思っているです。この作品を演じる上で表現したいと思っていた部分というより、自分が生きていく上でのスタンスをそのまま投影できたのでとても演じやすかったです。それが初めてできた作品でもあります。僕の価値観のまま、そのアプローチで役を演じることができた題材であり、元々持ってる感性のまま役作りができた作品でした。
― そこが、末満さんがおっしゃった荒木さんの人となりということでは?
末満:そうですね。以前ご一緒したときに、荒木くんは物事に対する感度が高く、それを現場でさらけ出すことができる人なんだなと感じました。感度が高い人はたくさんいますが、それをさらけ出すのはけっこう勇気がいることです。でも、荒木くんはそこを一歩踏み込んで「自分はこういう感度なんです」と見せて、腹をくくって表現というものに取り組んでいるという印象がありました。
それを具体的に作品に反映させたわけではありませんが、あらためて振り返ってみると、脚本を書きながら「荒木くんの感度では、このシーンはどう見えるだろう・・・」ということを考えていたと思います。脚本を書いている隣に荒木くんがいるような感覚です。
― あらためてお聞きしますが、末満さんが感じる「ムビステ」の魅力とは?
末満:やはり、舞台と映画が連動しているところに尽きるのではないかと思います。舞台の映画化、映画の舞台化ではない。単純に映画でも舞台でもできるような話を映画と舞台にしてもしょうがない。「“連動”って何だろう」という議論はいろいろしました。映画でしか、舞台でしか描けないものが、リンクして連動しているという形の表現のポテンシャルはまだまだ模索中なのかもしれません。どんどん面白い企画に育っていったらいいなと思うし、その一助になれば嬉しいですね。
― 荒木さんは、映画の撮影に関して、舞台と違うところで大変だったことはありますか?
荒木:精神的に大変だったと思うことは全くなかったです。ただ、作品に没頭するからこそ大変なことはありました。舞台では、前後に空間を作って安全なところで見せるアクションの表現があるのですが、映像の場合はリアリティーさを出すために、どうしても間合いが近くなってしまいます。舞台でのアクションに慣れてしまっている分、距離を縮めなくてはいけないところは大変でした。
でも、それを支えてくださったのが、太秦のスタッフの皆さんなんです。刀を当ててもいい、どれだけ竹光が剥がれてもすぐに直してくれる。環境に凄く恵まれていて、背中を押してくれるアクションチームやスタッフの皆さんがいたから僕らは思いきりできるんです。また、その時の空気や、演じている人物が置かれている立場で味わっていると思えば、全てが当たり前のこと。例えば、素足に草履で寒いなか生活しているのだったら、足が冷えて当然です。それを大変だという感覚を持ってしまう時点で現代よりな表現になってしまう。そういうことが大変かどうかは分からないくらい作品に没頭できました。
― まさに、役を生きたということでしょうか。
荒木:そうですね。生きることにムキになる作品だったので。また、自分がその役を生きることに集中していい環境を作ってくださったのでとてもありがたかったです。
― アクションもたくさん見ることができますし、物語の展開にも驚かされます。
末満:自分で書いているので分かっていましたが、映画を観て驚きましたね(笑)。これはネタバレなしで観ていただきたいです。凄く面白いドラマ運びになっています。ぜひ、お楽しみに。
― 映画を観たら、次に続く舞台『漆黒天 -始の語り-』がより楽しみになりますね!
末満・荒木:はい、映画と合わせて舞台も楽しみにしていてください!
【荒木宏文 HIROFUMI ARAKI】
1983年6月14日生まれ。「D-BOYS」メンバー。主な出演作は、映画『文豪ストレイドッグスBEAST』(坂本浩一監督)、ミュージカル『刀剣乱舞』(茅野イサム/伊藤栄之進演出)、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage (植木豪演出)など。6月に上演のドラマチックライブステージ『アイドルマスターSideM』で初の単独演出を務めた。
【末満健一 KENICHI SUEMITSU】
1976年6月18日生まれ。大阪府出身。劇団「惑星ピスタチオ」で俳優として活動後、演劇ユニット「ピースピット」を旗揚げ。演劇・映像・アニメ・アーティストの作詞やイベントの構成・演出も行う。オリジナル作品「TRUMPシリーズ」や舞台『刀剣乱舞』シリーズの脚本・演出、TVアニメ『ボールルームへようこそ』のシリーズ構成・脚本なども手掛ける。
撮影:ナカムラヨシノーブ
【ストーリー】
「この町で……俺を見たことはないか?」ぼろを纏った男(荒木宏文)が江戸の町に現れた。
男はなりゆきから喜多(小宮有紗)というコソ泥女を助ける。喜多は「助けてくれた」お礼にと、記憶を失くした男に<名無し>の名を与えて、狂言作者の玄馬(唐橋充)、ごろつきの邑麻兄弟(松田凌・長妻怜央)らを巻き込みその素性の手がかりを求めはじめる。
現状で名無しについてわかっている事実は、どうやら自分は謎の剣客たちに命を狙われている、ということ。
しかもその度に圧倒的な剣技で返り討ちにしてきたらしい。なぜ自分がこれほどまでに強いのかも思い出せない。
だが、町で悪事の限りを尽くしてきたという<日陰党>の名を聞いた時、記憶の中にただひとつ残る<愛する者の死に際>が思い出される。
同じ頃、与力である玖良間士道(鈴木裕樹)や皿月壬午(小澤雄太)はある計画を実行に移そうとしていた。
愛する者の死の記憶、尋常ならざる剣の腕、その命をつけ狙う謎の刺客たち
……どうやらこの男には、何かある。
映画『漆黒天 -終の語り-』
出演 :荒木宏文
小宮有紗 松田凌 長妻怜央(7ORDER)
橋本祥平 松本寛也 / 小島藤子
梅津瑞樹 小澤雄太 鈴木裕樹
唐橋充 / 宇梶剛士
脚本 : 末満健一
監督・アクション監督 : 坂本浩一
舞台『漆黒天 -始の語り-』
出演 :荒木宏文
松田凌 長妻怜央(7ORDER) 梅津瑞樹 / 小島藤子
橋本祥平 松本寛也 加藤大悟 安田桃太郎
小澤雄太 鈴木裕樹
作・演出 : 末満健一
公式HP : toei-movie-st.com ※映画舞台共通
著作権表記 : @2022 movie-st ※映画舞台共通
【舞台公演スケジュール・会場】
東京公演 2022年8月5日(金)~8月21日(日) @サンシャイン劇場
大阪公演 2022年8月31日(水)~9月4日(日) @梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
映画『漆黒天 -終の語り-』
全国公開中
舞台『漆黒天 -始の語り-』
2022年8・9月 東京、大阪にて上演
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