寛一郎「この映画が知ることを知るきっかけになれば」坂東龍汰はアイヌ語の長セリフを披露し会場から拍手喝采！ 映画『シサム』完成披露舞台挨拶

映画『シサム』の完成披露舞台挨拶が、8月26日、東京・TOHOシネマズ日比谷にて行われ、主演の寛一郎をはじめ、共演の和田正人、坂東龍汰、平野貴大、サヘル・ローズ、緒形直人と、中尾浩之監督が登壇した。

本作は、江戸時代前期、＜蝦夷地＞と呼ばれた現在の北海道を領有した松前藩が、アイヌとの交易をおこなっていた史実を基に、アイヌと和人との歴史を描いた人間ドラマ。

アイヌとの交易で得た品を他藩に売る仕事をし、師範の言葉を胸に蝦夷地に向かった高坂孝二郎を寛一郎、孝二郎の兄・栄之助を三浦貴大、師範の大川を緒形直人、高坂家の使用人・善助を和田正人が演じる。中島みゆきの『一期一会』が主題歌を務め、そこに暮らす人々の異なる風習や文化に触れたことにより、己の人生を見つめ直してゆく主人公の心情に寄り添い、映画の世界観を彩っている。

寛一郎は「撮影期間はちょうど1年前くらいで、やっと公開できます。今はちょっとドキドキしています」と、この日が観客に初お披露目となり高揚している様子。続けて「昨日、和田さんの誕生日だったみたいで、おめでとうございます」と笑顔で紹介し、会場は一気にお祝いムードに包まれた。

和田は「この作品はいろんな視点からのメッセージがありますが、僕は故郷を大切にしたいな、ふる里っていいなという気持ちになりました。ぜひふる里に思いを馳せながら映画を楽しんでいただければ嬉しいです」とアピール。

アイヌの青年。シカヌサシを演じた坂東は「役者を始めていつか北海道で作品を撮ってみたいという思いがあったので、自分の育った北海道の地で『シサム』という映画が撮れたことが凄く感慨深く嬉しかったです」としみじみと語る。

アイヌ村のリーダーを演じた平野も「北海道で昨年夏に１か月ほどみんなで森の中で戦ってきた作品をお披露目できることは本当に嬉しいです」と話す。

また、アイヌの女子・リキアンノを演じたサヘルは「『シサム』という映画が伝える、この日常の中に垣間見る出来事や、文化の中でいまの私たちが生活する流れに通ずる争いごとや平和とは？を問いかけてくれると思うので、大人の皆さんにとって夏休みのいい課題をお届けできたらいいなと思っております」と述べ、「私はイラン人だからこそ、届けたいメッセージがあった･･･」と、作品への特別な思いを口にした。

子供のころにアイヌ村を訪れたことがあったという、寛一郎。「子供のころ２週間くらい。今回、２０年くらい経ってこのオファーが来て縁を感じました」とし、「あらためてアイヌ文化を知りたいと思って、役作りを通して勉強しました」と明かす。

敵役の和田は「寛一郎とはいつか共演してみたいと思っていた。面と向かってお芝居をしたが、彼の気迫は熱が凄くてどう対峙するか緊張感があった」と振り返り、寛一郎を称えた。

一方で、北海道の撮影は４日間だったと少し寂しそうな顔を見せた緒方だったが、「アイヌを演じた方はアイヌ語で感情を乗せて演じる。それがどれだけ大変なことか。ぜひ目を凝らして観ていただきたい」と、アイヌ役の共演者を労う。

坂東は「寛一郎が主演と聞いて『絶対やる！』と言いました。やっと共演できるとワクワクして」と出演を即承諾したそうだが、「台本を開いてみたら、（セリフが）全部カタカナで･･･。無理無理無理！って言いました(笑)」と本音も。それでも「いまだにアイヌのセリフを覚えています」とすっかり身に染み込んだことを話すと、いきなり寛一郎が「ちょっと言ってみて！」とおねだりを。

照れながらも長いアイヌ語のセリフをスラスラと話した坂東。あまりのすばらしさに寛一郎はじめ、観客をもビックリ！ 会場は大きな拍手で包まれた。

監督は「今日、皆さんにお会いできて嬉しいです。私はこの作品に対して謙虚でいようと思いました。こちらからメッセージを伝えようとせず、エモーショナルに感じ取ってもらいたいと思いました」と伝える。

最後に寛一郎が「アイヌという人たちがこの地に存在したこと、豊かな文化を築いていたこと、そしてその文化が徐々に失われつつあること。僕らはその文化を絶やさず未来へつなぐためにこの映画を作ったと思います。今日も世界で価値観や歴史の衝突で様々なこんながあると思いますが、その現実と向き合い、僕らはこれからどうすべきか模索するべきだと思います。それをするにはまず知るということが大事。この映画が“知ることを知る”気閣下になれば」とメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。

【STORY】
江戸時代前期。北海道の南西部にある松前藩はアイヌとの交易品を主な収入源としていた。松前藩藩士の息子、孝二郎（寛一郎）は兄、栄之助（三浦貴大）とともにアイヌとの交易で得た品を他藩に売る仕事をしていた。そんな孝二郎に師範の大川（緒形直人）は、蝦夷で不穏な動きがあることに対して警戒するようアドバイスする。やがて孝二郎は、母（富田靖子）と栄之助の許婚・ミツ（古川琴音）を郷里に残し、高坂家の使用人である善助（和田正人）を伴って、蝦夷のシラヌカへと旅立つのだが、ある夜、使用人の善助の不審な行動を見つけた栄之助は善助に殺害される。兄の敵討ちを誓い善助を追って森の奥深くへと向かった孝二郎だったが、脇腹を刺され負傷してしまう。瀕死の状態だった孝二郎だったが、アイヌの人に救われ一命をとりとめる。暗い過去を背負うアイヌの女性・リキアンノ（サヘル・ローズ）、和人に反発心を抱くアイヌの青年・シカヌサシ（坂東龍太）、交易の鍵を握る重要な人物・平助（要潤）などと出会い、和人とアイヌの間の溝を知る孝二郎。和人とアイヌの間で揺れる孝二郎がみ見つける道とは－。

監督：中尾浩之　　脚本：尾崎将也
主題歌：中島みゆき「一期一会」（ヤマハミュージックコミュニケーションズ／ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス）
出演：寛一郎　／　三浦貴大　和田正人　坂東龍汰　平野貴大　サヘル・ローズ　藤本隆宏　古川琴音　山西惇　佐々木ゆか　／
要潤　／　富田靖子　／　緒形直人
制作プロダクション：P.I.C.S.
配給：NAKACHIKA PICTURES　　PG12
©映画「シサム」製作委員会
HP：sisam-movie.jp
x：sisam_movie

9/13（金）TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開