人生の最期を自らの意思で生き抜く感動作 映画『山中静夫氏の尊厳死』の完成披露上映会が、1月21日、東京・スペースFS汐留にて行われ、ダブル主演の中村梅雀と津田寛治をはじめ、共演の高畑淳子、田中美里、小澤雄太、江澤良太、大方斐紗子と、村橋明郎監督が登壇した。
★役柄について
中村梅雀さん
私の演じたがん患者さんは肺腺癌を患っているのですが、肺腺癌は健康体の様子のまま死に向かうそうなんですね。なので痩せる必要はありませんと監督から言われましたが、映画を観る人に「こいつ絶対死にそうにない」と思われないように6キロ痩せました。ちょうど母が危篤中だったこともあり、父が亡くなった時の息遣いなどを思い起こして演技に活かしました。撮影中は、一日中死について考えていましたが、宿では温泉に浸かって(笑)、ずっと考え続けていましたね。
津田寛治さん
普段の撮影現場では自分が年長のことが多いのですが、今回の現場は先輩の俳優さんがたくさんいて。演じながら圧倒される、積み重ねたものには勝てないと思いましたね。観客のような気持ちで皆さんの演技を見ていました。梅雀さんとの共演はとても素晴らしかった。リハーサルで梅雀さんが長いセリフを語るシーンでは涙が出てしまって、本番ではグッとこらえました。
高畑淳子さん
梅雀さんが演じた私の主人は、婿養子で結婚してから一度も我を通したことのない人。その人が死を前に、初めて我を通すお話なんです。ネタバレになるから言えないけど、梅雀さんとの、すごく良いシーンもあるんですよね。
田中美里さん
私の演じた今井医師の奥さんは、愚痴も含めて幸せそうな女性。夫の事を心配しながらも見守る奥さんでした。根っからほんわかした人柄で、自分もそうありたいなと思いながら演じていましたね。
小澤雄太さん
生きていく上でのあり方を描いた作品でした。共演させて頂いた津田さんはとってもギャップのある方でした。撮影前の挨拶では色々と気にかけて頂いて気さくにお話していたのですが、撮影に入った途端に役に入り、僕が演じる若手医師の先輩としての厳しさが背中から伝わってきて。そのギャップに役者として尊敬しかなかったです。
★死ぬ前にこれだけは…!人生悔いなくやっておきたいことは?
田中美里さん
毎日を悔いがないように生きようと思っていて、行きたい所に行く、食べたいと思う時に食べるようにしています。
高畑淳子さん
そんなに遠くはないと思うので、死ぬ前に執筆活動に入ろうかなと思います。今はまだ忙しいけど。あとは頑丈な金庫を一つ買いたいですね。せっかく稼いだものを残しておこうかなと(笑)。
津田寛治さん
自分には娘と息子がいるのですが、仕事柄、地方に行ったりで忙しかったので、なかなか一緒にいたり遊んだり、会話ができなかったので、もし、最期を迎えるというようなことになったら…娘、息子ふたりに「生まれてきてくれてありがとう」と言いたいです。
中村梅雀さん
娘がまだ四つなので、死んでる場合じゃないんですが(笑)80歳になって、やっと20歳ですからね。
ただ、もし死ぬとなったら…すべての時間を娘や妻、家族と過ごすし、行きたいところに行き、食べたいもの、飲みたいものを飲み、(コレクションにしている)大切な楽器たちの行く末を決めてホッとしたいですね。
わたしには、やっておきたいことが、あるのです。
浅間山を望む信州の地を舞台に、人が死んでいくこと、最期まで自分らしく生き抜くことの意味を、未来の希望と共に描く――。
<ストーリー>
「私は肺がんなのです」 山中静夫(中村梅雀)の告白に、医師の今井(津田寛治)は面食らう。余命わずかと診断された山中は、生まれ育った信州・浅間山を望む地で死にたいという。そして、自分の最期を迎えるために、妻(高畑淳子)にも内緒で自らの墓を故郷に造りはじめる。今井はその思いを遂げさせようと決意するが、これまで職業柄多くの死を見つめてきた彼は自らもうつ病を患ってしまう。患者と医師、そして彼らを支える家族がたどり着いた、それぞれの命の在り方とは……。 原作は、「ダイヤモンドダスト」で芥川賞を受賞し、寺尾聰主演で映画化もされた「阿弥陀堂だより」などで知られ、現役の医師でもある南木佳士(なぎ・けいし)の同名小説。主題歌は小椋佳が書き下ろした。人が限られた人生をどう生き、どう死ぬかを、未来の希望とともに描く感動の人間ドラマをつむぎ上げた。
監督・脚本:村橋明郎
出演:中村梅雀、津田寛治、小澤雄太、天野浩成、中西良太、増子倭文江、大島蓉子、石丸謙二郎、大方斐紗子、田中美里、浅田美代子、高畑淳子
原作:南木佳士「山中静夫氏の尊厳死」(文春文庫刊)
主題歌:小椋佳「老いの願い」
公式サイト:http://songenshi-movie.com/
2月14日(金)より シネスイッチ銀座 ほか全国順次ロードショー