2006年3月に開館し、数々のアジア映画を上映してきたシネマート六本木が今年6月14日にて9年の歴史に幕を閉じることが発表された。多くの映画ファンから惜しむ声が聞こえる中、シネマート六本木では閉館に向けて様々な企画上映を開催中。
その一つである「台湾シネマ・コレクション 2015」では、4月23日に『オーロラの愛(原題:極光之愛)』の上映イベントを開催。上映後の舞台挨拶に主演のヨウション(宥勝)、リー・スーユエン(李思源)監督、ワン・ユエ(王月)プロデューサーが登壇し、観客の熱気に応えるように日本語で力強く挨拶した。
『オーロラの愛(原題:極光之愛)』は台湾演劇界の至宝リー・グオショウ(李國修)の名作舞台「北極之光」を妻で女優のワン・ユエがプロデュースし、二人の息子であるリー・スーユエンが23歳で初メガホンを取り映画化した作品。プロデューサーであるワン・ユエは映画化を決めた理由について、観客の反応を確かめながら、「私の夫であるリー・グオショウは台湾演劇界では本当に重要な人でした。2013年にこの世を去ったときには台湾のネットニュースにトップで報じられました。台湾の人たちが悲しみに沈んでくださり、その悲しみはもちろん私にとっても非常に大きな悲しみでした。彼は劇団の中で脚本、演出、そして自ら演じるという総合芸術家として、27本の素晴らしい脚本を遺しました。その脚本は演劇で永遠に生きることができますが、やはり言葉の問題など海外の方に観ていただくことが難しいところがあります。しかし映画であれば国境を越えて多くの方に観ていただけると思いました。こうして東京でみなさんにご覧いただいて、リー・グオショウが台湾演劇界に遺した1ページを知っていただけたと思います」と時折涙を浮かべて伝えた。
そして、この映画を23歳という若さで初商業作品として監督したリー・スーユエンは、「映画化することは、やはり大きなプレッシャーもありましたし、責任感を感じて逃げだしたいと思いました。そんな僕に父は亡くなる前に「お前がこの作品を撮ろうと思った時点で失敗だ」と言いました。はじめはその言葉には驚きましたが、父が言わんとしていることがよく分かりました。失敗を乗り越えてこそ、何かを生み出すことができるのだと。そのときにクリエーターとしての心構えを父は教えてくれたのだと思います。父の言葉から僕はこの映画に初恋の物語を盛り込んでいくことを決意しました。舞台劇と映画の違いは、この映画の中には舞台劇の要素は1割しか盛り込まれていません。あとはすべて僕が新しく創造したものです。しかし、父が書いた脚本のスピリット、作品に込めた思いは残しています。舞台劇の方はとてもロマンチックに描いていますが、僕が撮った映画はかなり現実的に描いています。もし、恋がうまくいっていないときにはこの映画を観て、相手に「ありがとう」でも「ごめんね」でも何か言葉を伝えてください。そして周りに恋の傷を抱えている方がいたらこの映画をおすすめしてください」と語り、偉大な父親の遺作を魂ごとすべて受け継いだようだ。
台湾トップアイドルのレイニー・ヤン(楊丞琳)と共に主演を務めたヨウションは、「レイニーはすごく明るくて活発で歌が大好きな女優さんなのですが、実は監督も歌が好きなんですよ。現場でレイニーと一緒に歌っていたんですけど、監督はすごく音痴なんです(笑)。レイニーはプロですから監督に一生懸命教えていて、僕はその様子を見ながらずっと笑っていました」と撮影現場の楽しい様子を披露。
そして、「台湾シネマ・コレクション 2015」で上映されるもうひとつの主演作品『ピース! 時空を越える想い(原題:大稻埕)』について、「大稻埕というのは台湾の地名なのですが、この映画をご覧になって大稻埕に行ってみたいと思う方が増えると思います。非常に面白いところで行くだけで100年前の雰囲気を味わえる場所です。この映画の中では大学生が100年前にタイムスリップしますが、その雰囲気を味わうことができると思います。是非こちらの作品も見ていただき、大稻埕にも行ってみていただければと思います」とコメント。
最後の挨拶では3人とも観客と関係者への感謝の言葉とともに再会を願い、観客との記念撮影を行った。またイベント終了後にはロビーにてウェルカムパーティーも行われ、台湾料理を囲みながら日本の観客の感想を直に聞くなど、楽しい時間を過ごした。
《台湾シネマ・コレクション 2015》
シネマート六本木 4/18(土)~5/8(金)
特設サイト:http://cinemart.co.jp/theater/special/closing-taiwan/