「未完成映画予告編大賞」=「MI-CAN」の第1回グランプリを受賞した「高崎グラフィティ。」そこから生まれた本作は、群馬県高崎市を舞台に、高校卒業を迎え未来への夢と不安を抱えて生きる5人の男女の青春群像劇。
「未完成映画予告篇大賞MI-CAN」とは、堤幸彦(映画監督・演出家)を筆頭に大根仁(演出家)、平川雄一朗(演出家)、小原信治(作家)といった、気鋭のクリエイターを輩出する映像制作会社オフィスクレッシェンドが、次代を担うクリエイター発掘・育成を目指して立ち上げた映像コンテスト。「作品の舞台となる地域名をタイトルにすること」を条件に、3分以内で予告編を制作し、グランプリ作品には制作費およそ3,000万円で本編を作るチャンスが与えられる。
本作の企画から参加し、美紀役を務めた佐藤玲と、優斗役の萩原利久が撮影を振り返り、本作制作までの経緯、役に対する思いを語ってくれた。
― 本作は「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」グランプリ受賞により製作されましたが、佐藤さんは予告編の出演だけでなく、企画の段階から参加されていたとか。
佐藤玲(以下、佐藤):私が、川島監督に「何かやりたいね」と声をかけた時は、「未完成映画予告編大賞」はまだ始まっていませんでした。監督と1年半くらい色々話し合いをしているうちに、こういう企画があると聞き、応募してみようということになり、やっと動き出したんです。
― 本編は、予告編に出演していたのは佐藤さんだけですが、大賞を受賞してからあらためてオーディションでキャスティングされたのですか?
萩原利久(以下、萩原):はい、オーディションがありました。オーディションの前は、僕らは、その予告編で雰囲気のヒントを得るしかなかったんです。佐藤さんは、オーディションの時、ずっと相手役をしてくださっていたんですよ。
佐藤:5人のシーンを扱うため、ほぼ全員の方とお会いして相手役をやらせていただきました。
― 今回、初共演となる佐藤さんと萩原さんですが、共演されていかがでしたか? お互いの印象は?
佐藤:利久くんは5人の中でも一番若いということもあったんですが、それだけじゃなくて、とても瑞々しいというか、エネルギーが有り余っている感じでしたね(笑)。ずっと楽しくムードメーカーの一人として頑張っていたと思います。優斗という役は大人たちとの絡みもあり独特な雰囲気があったのですが、そのギャップというか、そこからだんだんみんなと打ち解けていくところが難しかったかもしれません。でも、私から見るととても自然に演じていたと思います。
萩原:照れるなぁ~(と、恥ずかしそうにしながら)。直樹役だったら自分の中で作りやすいイメージがあったんですが、最初は優斗のイメージが沸かなかったんです。監督に僕の高校時代の過ごし方を話していたら、僕に「優斗に近いものを感じた」と仰ってくださって。僕のプレイベートに近い部分が優斗に通じるものだと思うので、そこから役を広げていこうと考えました。役柄を作ったというより、自分の中にあったものから出てきているので自然に演じられたのではないかと思います。
― どのような共通点があったのでしょうか?
萩原:僕は俳優の仕事をしながら高校に通っていたので、学校の友達以外にも友達や楽しみがあったんです。学校は学校で楽しかったけれど、外でも楽しいことがある。優斗も学校以外の先輩との付き合いが楽しかった・・・。自分では意識してなかったんですが、監督にそういうところが近いと思うと言われたんです。
― 佐藤さんの印象は?
萩原:企画の時から携わっていらっしゃるので、監督の考えていることもわかると思うし、僕ら演じる側のことも理解してくださるので、監督と役者の架け橋的なリーダーでしたし、とても頼りにさせてもらいました。最初の顔合わせのときも率先して皆んなに声をかけてくださっていました。僕が一番年下ということもあって、かなりかなり頼らせてもらいました(笑)。
― 皆さん、役から離れても本当に仲が良さそうですね。5人の他にも同級生がいますし、特に女子の会話がリアル(笑)。
佐藤:そうですね、リアル(笑)。女子だけでも本当に仲がよくて。女子トークのシーンを撮っていても「カット!」の声がかかると、もう爆笑。「なに?今の~(笑)」って。本当に楽しくて、女子4人でずっと一緒にいましたね。特に(同級生女子役の)冨手麻妙ちゃんと佐藤優津季ちゃんはかなりアドリブを加えて、自分のイメージする役をとても上手に演じてくださいました。女子トイレのあるあるとかね(笑)。
萩原:逆に男子たちは、そのリハーサルを見ていて「・・・」状態で、「怖ぇ~」って(笑)。
佐藤:男子はいつもふざけあっていたものね。
― 男子も個性的な人が揃いました。
萩原:男子は増えれば増えるだけ、どんどん騒いでうるさくなっていきますから(笑)。狩野(健斗)くんと(山元)駿くんが、どんどんボリュームアップしていって、そこに川島監督が加わっていくという(笑)。
佐藤:結局、川島監督が一番うるさいんだよね(笑)。
― 本作は卒業を迎え、未来に夢や不安を抱える高校生を描いています。ご自身の高校卒業の時はすでにご自分の道を決めていたのでしょうか?
萩原:僕は決まっていました。俳優をやりたい!という意思をもって高校を卒業しました。役年齢が近いこともあり、そういう面では「これからどうしよう」と悩む役と自分は違うので、最初は演じることに不安もありました。でも、監督との「優斗に近い」という会話で一気に役に入っていくことができました。本当に監督のおかげです。
佐藤:私は大学で演劇学科に進んだので、ずっと舞台をやってきて、21歳くらいまで映像にはほとんど興味がなかったんです。蜷川幸雄さんの舞台に出たとき、映像作品に出演している俳優さんと初めてご一緒して(映像にも)興味が湧いてきました。高校三年生のころは漠然と舞台で女優をやっていきたいと思っていました。まさか、自分が映画を作りたいと発言する立場になるとは思ってなかったです。今回「未完成映画予告編大賞」を含め、素敵な俳優の皆さんが参加してくださったおかげで、自分の夢が勝手に叶っていった感じです。
― 映画をやろうと思ったきっかけは何だったのですか?
佐藤:初舞台の時のお母さん役が大竹しのぶさんで、お父さん役が藤原竜也さんだったんです。もちろんお二人は有名な方ですから存じていましたが、間近でお芝居を見るとこんなにもエネルギーが違うんだと感動しました。お二人は舞台も映像もやっていらしたので、「(舞台と映像は)何が違うんだろう」と知りたくなったんです。
― ロケ地となった高崎の街の印象は? 高崎は初めてでした?
佐藤:私は予告編のときに初めて高崎に行きました。
萩原:オールロケで、高崎にフィーチャーして撮影したのは初めてでした。高崎の皆さんはとても撮影に協力してくだって、ありがたかったです。市長さんも「どこでも使ってください」って仰ってくださって。凄くウエルカムな雰囲気でやりやすかったです。
佐藤:本当にやりやすかったです。
プロモーションの時は新幹線で行きましたが、撮影の時はJR新宿湘南ラインで2時間ちょっとかけて行ってました。高崎駅は終点なので、正直もう少し田舎っぽい、だだっ広いイメージがあったんですが、駅前が凄く開けていて驚きました。そして少し行くと山や川があって、とても落ち着いてホッとするんです。その雰囲気が映像にも出ていると思うし、私たちをもやりやすくさせてくれたと思います。
― 本作の見どころと、ご自身の好きなシーンがあったら教えてください。
萩原:5人の高校生のときにしかないエネルギー、そして誰もが経験しているだろうエネルギーみたいなものが撮影現場でもあったし、たくさん詰まっています。それがスクリーンを通してちゃんと出ているので、ご覧になる皆さんもそれをポイント、ポイントで感じてもらえると思います。好きなシーンは、5人での川辺のシーンです。撮影の時も“青春”を感じながらやっていましたね。ああいう経験をしてみたかったなと思える場面で、あの時だけは寒さを忘れました。いいところが全部詰まっていてとても好きです。
佐藤:5人で朝食を食べているシーンも好きですが、優斗と美紀が二人でいるシーンがいつかあって好きです。お互いに何か似ているところがあって、(美紀は優斗が)何を考えているかわかるので、美紀は優斗といると居心地がいい。パーティーから二人で抜け出すシーンや、車の中で話すシーンなど、二人の関係性が温かくて可愛いんです。
【佐藤玲(さとう りょう)プロフィール】
1992年東京都生まれ。12年に蜷川幸雄演出の舞台「日の浦姫物語」で女優デビュー。2014年に「おばけ」で映画初主演、MOOSIC LAB 2014/女優賞を受賞する。近作に「少女」(2016年)、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017)、ドラマ「架空OL日記」(NTV/2017)などがある。現在放送中のBSジャパン「グッド・バイ」に出演中。待機作にドラマ「コールドケース2 ~真実の扉~」(WOWOWプライム、映画「それでも、僕は夢を見る」(来年公開予定)など。
【萩原利久(はぎわら りく)プロフィール】
1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。ドラマ「あなたには帰る家がある」(2018年TBS系)、映画「あゝ、荒野」(2017年)や「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(2018年)などに出演。また、2019年2月公開の映画「あの日のオルガン」、2019年秋公開の映画「アイネクライネナハトムジーク」の公開が控えている。
ヘアメイク(共通)
杉本妙子(ひつじ)
スタイリング
■佐藤玲
杉本知香
ワンピース… Omas Hande(SUSU PRESS)
アクセサリー… somnium
【問合せ先】
SUSU PRESS 03-6821-7739
somnium 03-3614-1102
■萩原利久
山下友子(ヤマシタユウコ)
映画『高崎グラフィティ。』
<STORY>
群馬県高崎市を舞台に高校の卒業式を終えてからはじまる、5人の男女の数日間を描いた青春群像。幼なじみの、美紀、寛子、優斗、直樹、康太の5人は、高校を卒業してそれぞれが未来への夢や不安を抱えていた。そんな中、美紀の父親が進学のための入学金を持ったまま失踪。年上の彼氏との結婚生活を夢見ていた寛子も、彼氏への不信感を募らせる事態が。自動車修理工場を営む父との確執を抱えた優斗は、ふとしたはずみで犯罪に巻き込まれていく。直樹と康太もそれぞれに心に抱えた屈折を持て余していた。クラスメイトなのにそれぞれが抱える夢や悩みも知らなかった5人は、卒業パーティーの一夜をきっかけに衝突しあいながらも友情を育み、自らの人生の新たな一歩を踏み出していく…。
出演:佐藤 玲 萩原 利久 岡野 真也 中島 広稀 三河 悠冴
佐藤 優津季 冨手 麻妙 狩野 健斗 山元 駿 / JOY / 篠原ゆき子 玄覺悠子 戸田昌宏
奥野 瑛太 川瀬 陽太・渋川 清彦
監督:川島直人
脚本:小山正太
制作プロダクション:オフィスクレッシェンド
配給:エレファントハウス
©2018 オフィスクレッシェンド
HP:http://takasaki-graffiti.com
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