松坂桃李「『流浪の月』は間違いなく僕の中のベスト」佐藤二朗は「初めて褒められた」と受賞に歓喜！第14回TAMA映画賞授賞式＜最優秀男優賞受賞＞

in CINEMA, Report(CINEMA) · 2022/11/27

「第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM」の「第14回TAMA映画賞」の授賞式が、11月26日、東京・多摩市のパルテノン多摩大ホールにて行われ、最優秀男優賞に輝いた、松坂桃李と、佐藤二朗が登壇。喜びの声を届けた。

2009 年にスタートしたTAMA映画賞は、前年10月から当年9月に一般劇場で公開される作品及び監督・キャスト・スタッフを対象に、市民ボランティアの実行委員が選考し、「明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる＜いきのいい＞作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰。受賞者にはトロフィーは藤原彩人作の「宇宙（SORA）を抱える像」が送られる。

最優秀男優賞は、本年度最も心に残った男優を表彰。本年度は、松坂桃李（『流浪の月』）と、佐藤二朗（『さがす』『truth 姦しき弔いの果て』『バイオレンスアクション』）が受賞した。

松坂の受賞は「文という人間が抱え続けた繊細な感情の機微を零すことなく演じ、長い年月をかけた愛の灯を静かに的確に表現することで観客を物語へ引き込んだ」という理由から。

受賞のコメントを話始めた松坂だったが、「先ほど舞台袖で、佐藤二朗さんから『俺が喋りやすいように、場を柔らかくしろ』って言われて･･･(笑)。もともと喋ることを考えていたんですけど、それが先行して、今は何を喋ったらいいのか分からなくなってきちゃいまして･･･」とバラし、笑いを誘うと、舞台袖から次に登場する佐藤が「バラすなよ！」と声をかけ、さらに会場は大爆笑！

あらためて、松坂は「昔、チャップリンが『あなたのベストアクトは何ですか？』という質問に対して『僕のベストは常に次だ』というふうに答えていたんです。すごく良いコメントだなと思っていて、僕もいつかそういうことが言えるようになれたらいいなと頑張っていこうと思ってやってきました。まだチャップリンほど遠く及びませんが、『流浪の月』に関しては、間違いなく僕の中のベスト、今の僕の中のベストだと思っています」と、胸を張る。

続けて、「自分の中ですべてを出し切ろうと思いました。僕自身の中でも挑戦でしたし、勝負の作品だなと思っていたので、今回受賞することができて本当に嬉しいです」と喜びを噛みしめ、「ここに導いてくださった李相日監督をはじめ、共演キャスト、スタッフの皆さんの力のおかげです。本当にありがとうございました」と感謝の気持を口にした。

松坂のキャリアの中でも一番過酷で高い壁だったと言うが「なかなか共感されないというか、本人自身も分かってほしいけれども、分かってほしくない･･･という難しい役。それをお芝居で表現することは今までやったことがなくて、凄くハードルが高かった。李監督とセッションしながら役と向き合っていきました」と難しい役へと挑戦した。

役のためにも減量にも努めた。「クランクアップをした日に、李監督にご飯に連れてってもらったんですが「胃袋が小さくなっていて、おかゆから頼んだんです。そのおかゆが本当に美味しくて。僕の中でトップに入るくらい、今でも忘れられないです」と笑顔で振り返っていた。

今後取り組んでみたい作品を問われると、「兄弟の話をやったことがないので、アットホームでハートフルな兄弟作品があれば、全力でやりたいです。ぜひ呼んでいただければ」と答え、「TAMA映画賞には2018年にも呼んでいただき、また2022年にもこうしてここに立つことができました。また呼んでいただけるよう精進していきたいと思っています」と意気込みを語っていた。

そして、次に登場したのは佐藤二朗。佐藤の受賞理由は「『さがす』について、多面性のある父親役の多彩で濃淡をつけた演技は、観客を震撼させると共に感動に導き、役者としての凄みを見せてくれた」とのこと。

松坂のおかげですっかり場が和んだところへ登場し、「桃李が全部バラしましたねぇ。でも、全部想定通りです(笑)」と言って、会場を沸かせる。「僕は31歳のときに映像の世界に入りました。ですから今年20年目です。その間に僕が俳優としてもらった唯一の賞は“NG大賞”です。今回、初めて褒められた感じがします。最近はバイプレーヤーとかいいますが、そういった俳優がこういう賞をいただくということは、僕自身はもちろんですが、たくさんの俳優の励みになると思います。ありがとうございました」と真摯に語り、トロフィーを握りしめた。