国内映画賞のトップバッターを飾る「第9回TAMA映画賞」の授賞式が、11月18日、東京・多摩市のパルテノン多摩にて開催され、池松壮亮、満島ひかり、長澤まさみ、土屋太鳳、石橋静河、間宮祥太朗、高杉真宙、黒沢清監督ら、各賞の受賞者たちが出席した。
「映画祭 TAMA CINEMA FORUM」で設けられた「TAMA映画賞」は、多摩市及び近郊の市民からなる実行委員が「明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」に、映画ファンの立場から感謝を込めて表彰する。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『続・深夜食堂』『デスノート Light up the NEW world』『永い言い訳』の活躍で、最優秀男優賞を受賞した池松壮亮は、モード系のスタイリッシュな黒の衣装に身を包み、坊主頭で登場。「自分にはこんな賞はちょっと恐れ多くて坊主にしてきました・・・」とコメントし、会場を沸かした。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』では最優秀作品賞も受賞。「個人的にこの作品には思い入れがありまして、渾身の一本でとても大好きな役と作品でこの賞をいただけたことをとても嬉しく思います」と喜び、「このご時世、自分のような人間がやっていてもいいのかなと悲観的に思うこともあるんですが、人の心に届かない映画を何本作っても正直同じなので、1本1本こだわってあきらめずにやっていきたいと思っています」と真摯に語る。最後に「謝罪会見みたいになっちゃった・・・」とはにかみ、会場の笑いを誘う場面も。
最優秀女優賞に輝いたのは、『散歩する侵略者』『銀魂』『追憶』『金メダル男』の演技が評価された長澤まさみと、『海辺の生と死』『愚行録』の満島ひかり。
長澤は「こんなにアットホームで温かい映画祭は初めて。この賞をいただき、まだまだお芝居を頑張っていきたいなという気持ちが強くなりました」と微笑む。『散歩する侵略者』では「毎日疲れ果ててました。人に何かを言うのはエネルギーを使うものなのだなと」と、常に怒っていた役柄を振り返りつつも「人間として大切な愛を感じさせられる作品でした」と作品への思いを述べ、「今までの積み重ねがこの先に活きていけばいいなと思います。観た方が楽しんで価値を感じていただけるよう努力していかなければ」とこれからの抱負を語った。
一方、第1回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞を受賞している満島は、当時を振り返りながら「1回目とは様子が違って、色んなことがスムーズ。楽屋に置いてあったマカロンにも映画賞のマークが書いてあって余裕があるなと」とイタズラな笑顔をみせる。鹿児島県・奄美大島で撮影した『海辺の生と死』では、「しゃべり言葉が、自分の生まれ育った場所(沖縄)に近かったので、東京弁より馴染みがありました。島の言葉を使って撮影することで、自分の心に近づけた言葉を吐くことができました」と伝え、「撮影で出発しようと思ったら、ロビーにおばあちゃんの弟が座っていて、『一杯コーヒーでも飲んでから行けばいいじゃないか』って。ちょっと面倒くさかったです」と撮影時のエピソードを明かし、楽しそうに笑った。
最優秀作品賞は、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』と、『散歩する侵略者』の2作が獲得し、監督及びスタッフ・キャストが表彰された。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井裕也監督は「感覚的に自由に作った映画を評価していただいて嬉しいです。励みになります」と感謝の気持ちを表し、本作に出演の池松に「僕にとって特別な存在。人生賭けて大勝負しようと思うときにいてほしいですね」とラブコール。それに対し池松も「原作ありきの今、映画監督であり作家としても勝負される石井監督は、すごく好きです」と称えていた。
『散歩する侵略者』の黒沢清監督は「これまでいくつかの映画祭で賞をいただいておりますが、ほとんどが監督賞や審査員特別賞ばかり。今回はやっと作品賞が獲れました。一等賞ですね」と満面の笑みを浮かべ、「ずっと映画を撮り続けているとこんなに幸せな日が来るんだと思いました」と感激しきりだった。
なお、池松とともに最優秀男優賞を受賞した浅野忠信はスケジュールの都合で授賞式は欠席した。
他の受賞者及び作品は以下。
土屋太鳳、高杉真宙、間宮祥太朗の受賞の様子はこちらへ
<第9回TAMA映画賞受賞者及び受賞作品>
最優秀作品賞
『散歩する侵略者』(黒沢清監督、及びスタッフ・キャスト一同)
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(石井裕也監督、及びスタッフ・キャスト一同)
特別賞
湯浅政明監督、及びスタッフ・キャスト一堂(『夜明け告げるルーのうた』『夜は短し歩けよ乙女』)
富田克也監督、及びスタッフ・キャスト一同(『バンコクナイツ』)※授賞式は欠席
最優秀男優賞
浅野忠信(『幼な子われらに生まれ』『沈黙 -サイレンス-』『淵に立つ』『新宿スワンII』)
池松壮亮(『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『続・深夜食堂』『デスノート Light up the NEW world』『永い言い訳』)
最優秀女優賞
満島ひかり(『海辺の生と死』『愚行録』)
長澤まさみ(『散歩する侵略者』『銀魂』『追憶』『金メダル男』)
最優秀新進男優賞
間宮祥太朗(『トリガール!』『帝一の國』『劇場版 お前はまだグンマを知らない』『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』)
高杉真宙(『逆光の頃』『散歩する侵略者』『トリガール!』『想影(おもかげ)』『ReLIFE リライフ』『PとJK』)
最優秀新進女優賞
石橋静河(『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『PARKS パークス』『密使と番人』)
土屋太鳳(『トリガール!』『PとJK』『兄に愛されすぎて困ってます』『金メダル男』)
最優秀新進監督賞
菊地健雄監督(『ハローグッバイ』『望郷』)
瀬田なつき監督(『PARKS パークス』)
「第27回映画祭 TAMA CINEMA FORUM」
11月18日(土)~11月26日(日)まで開催。(11月20日は休映)
公式サイト:http://www.tamaeiga.org/2017