映画『タロウのバカ』の公開記念舞台挨拶が、9月8日、東京・テアトル新宿にて行われ、主演のYOSHIをはじめ、共演の菅田将暉、仲野太賀、豊田エリー、植田紗々と、大森立嗣監督が登壇した。
『日日是好日』『セトウツミ』『さよなら渓谷』などで知られる大森立嗣監督のオリジナル脚本による本作は、社会からはじき出された3人の少年の純粋で過激な疾走を描いた獰猛な青春ムービー。戸籍もなく、生まれてから一度も学校に通ったことがない主人公タロウをYOSHI(ヨシ)、やるせない悩みを抱え暴力に走ってしまう少年エージ役を菅田、理性的で臆病な少年スギオ役を仲野が演じる。
映画公開から3日目を迎え、菅田は「映画の反響もいい感じで、“賛”と“否”が丁度いいくらいに50/50と聞いて、絶好調だなと思ってます」とニンマリ。仲野も「たくさんの方に『タロウのバカ』を目撃してもらえて興奮しております」と喜びを表した。
初主演のYOSHIは「ガチガチ・・・」と緊張しながらも「これだけの人に囲まれて幸せです」と笑顔。それでも「ネットで毎日見てるけど、凄いよ。『こいつは生意気だ!』とか『こいつはタメ語だ!』とか・・・、すいませんって感じです」と、その存在感の反響に驚きを隠せない。菅田が「狙い通りだな!行けいけ!」とエールを送ると、YOSHIは嬉しそうに「狙い通りです。勢いがあるまま、やってやります!」と目を輝かせる。
そんな自由奔放のYOSHIにタジタジだったという仲野。菅田が「太賀さんなんて、ずっとイライラしていましたもん(笑)」。「いつから受け入れられたんですか?」と尋ねられるも、「いまだに受け入れられていないです(笑)」と答え、会場の笑いを誘った。
撮影で大変だったところについて、YOSHIは「最後の泣くシーン」を挙げ、「プライベートでは“泣く”ということは一番ダサいと思っている自分がいる。でもタロウになった時にはいろんなことが起きて『ここで泣かなきゃいけないんだ、俺は!』って決心するのが大変でした」と真摯に語る。その言葉に大森監督は「スムーズだったけどね」とYOSHIの演技を絶賛。YOSHIは「あの時は、将暉が泣いていて目に湖(こ)ができてた。なぜか、一番泣いてるのは将暉だった」と明かす。すると菅田は「だって、この子(監督が来ているTシャツにプリントされたタロウを指して)が一生懸命泣こうと頑張ってるわけですよ」と撮影時の奮闘ぶりを振り返り、感慨深げに話し「カッコよかったよ」とYOSHIを称えた。
今回、いつもにも増して凶暴的な役を演じた菅田は「(演じるにあたって)何にも考えてなかったんですが、大事にしなければいけなかったのは、この3人(タロウ、エージ、スギオ)の時間。この一瞬の青春というか、心の底からカメラの前で笑うことはそんなにないので、それができたことはこの映画の熱いところ。楽しかったです」としみじみ。撮影の様子を放送禁止ギリギリに説明しながら会場を沸かし、仲野も「将暉との関係性の中にYOSHIという偉大な新人が登場して、3人のグループ感が奇跡的だったと思います」とコメントし、3人の関係性の深さを感じさせた。
自分の息子にまったく関心がなく、育児放棄をしているタロウの母・恵子役の豊田は、「映画の舞台挨拶に立つのは今日が初めてなんです」と明かし、菅田から「本当ですか? じゃ、YOSHIと同じじゃないですか!?」とツッコミを入れられる場面も。また、「自分も子供がいるので、精神的につらかったけど、自分自身はたまたま恵まれているだけ。いつ誰にでも起こりうるようなことなので勝手なイメージだけで演じないようにしようと気をつけました」と述べた。
スギオが密に思いを寄せ、援助交際をしている女子高校生洋子役を演じる植田は、オーディションを通して役を獲得。特に共演シーンが多かった仲野に「スギオさんには本当に助けられました。短かったけど、濃い時間でした」と微笑む。
さらに、「この映画は僕だけの力じゃなくて、撮影スタッフの皆さんも一つの家族になって、この映画を作り上げたと思う。そのことに本当に感謝します」とYOSHI。会場から大きな拍手が送られ、その成長ぶりに目を細める菅田たち。
ハードなシーンも多く、“問題作”と言われる本作に関わったことについて、YOSHIは「デビュー作で主演という大きな役をやらせていただいて、大変だったこともありました、皆がファミリーのようで本当に毎日楽しかった」と改めて回顧。「この映画は、考えずに体でフィールして『うおーっ!』って力で観てほしいです」と彼なりの表現でアピールした。
菅田は「この映画を母が観てくれたんです。これまで(作品を観ても)内容について具体的に熱を持って反応してくれることが限られているんですが、『見て見ぬ振りをしているものが私にもあったわ』って電話をくれたんです。母として息子に語ってくれた。それぞれのものさしの違いがあるからこそ、こうやって作品を作るべきだなと感じました」と明かし、仲野は「社会に向けた怒りみたいなものを、大森監督がこの作品に魂を入れてくれたんじゃないかなと思った。この映画は誰しもに受け入れられる口当たりのいい作品では一切ないですが、特別なものではない。でも、このむき出しのものが観てくれた方に感化されたら響くものがあると思います」と観客に語りかけていた。
映画『タロウのバカ』
監督・脚本・編集:大森立嗣
音楽:大友良英
出演:YOSHI 菅田将暉 仲野太賀 奥野瑛太 豊田エリー 植田紗々 國村隼
(c)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
配給:東京テアトル
公式サイト:http://www.taro-baka.jp/
テアトル新宿ほか全国公開中