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映画『たたら侍』主演・青柳翔インタビュー!「この映画で僕も大きく成長できました」

戦国時代中世の奥出雲の村を舞台に、伝統を継承し守ることを宿命付けられた青年が、葛藤や挫折を通して真の「侍」へと成長していく姿を描く、映画『たたら侍』。EXILE HIROがエグゼクティヴ・プロデューサーを手掛け、映画『わさお』(11)『渾身 KON-SHIN』(13)で知られる錦織良成氏が脚本・監督を務めた本作は、日本の「ものづくり」への深い誇りとリスペクトを根底に、“真の侍とは”というテーマを問いかけていく、原作なしの完全オリジナルストーリー。カナダ・モントリオール世界映画祭で“最優秀芸術賞を受賞し、世界27の映画祭に正式出品され、19の賞を受賞するなど、海外でも高い評価を得ている。

主役の伍介を演じるのは、今作で本格的時代劇初挑戦となる劇団EXILEの青柳翔。運命に抗い侍になろうと悩みもがく青年の内なる激しさを、見事に演じきった彼が、映画の魅力、役への熱い思いを語ってくれた。

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― 今作は時代劇であるにもかかわらず、人が斬られて血が飛ぶようなシーンが一切ありません。その迫力に代わるものの一つとして“たたら吹き”シーンの熱量があると思いますが、実際にご覧になっていかがでしたか?
まず、日本刀を作るには玉鋼(たまはがね)という純度の高い鉄が必要となります。それを作るため奥出雲に古来から伝わっている製鉄技術が〈たたら吹き〉なんです。本編でも実際の〈たたら〉で3日間ほど撮影しましたし、僕も見学、体験、撮影と3回経験させていただきましたが、凄く熱かったです。神事という思いも強くなりましたし、2回勉強させていただいたことは撮影に活かせたんじゃないかなと思っています。実際の村下にもお会いしましたが、言われたのはとにかく「炎に立ち向かえ」ということでした。その熱さに耐えて立ち向かった者だけが作ることができるのが玉鋼。劇中で作られていた玉鋼は本当に質の良いもので、それがあればまちがいなく良い刀ができる。その刀は1000年錆びないらしいんですが、まさに質の高さの証明でもあります。ここから作った玉鋼が現代の技術をもっても作れないというのがとても不思議ではあるけれど、それが納得いくくらい神秘的でした。火も村下さんが砂鉄を入れる後ろ姿も、みんなが立ち向かっていく姿にも本当に魅入ってしまいました。

― 監督はじめ、スタッフの皆さんもスペシャリストが揃った本作。そんな中で、青柳さんが演じる上でこだわった点は何でしょうか?
物語のラストに向けてどういう風に演じたらいいのか考え、そこまでの伍介の気持ちの流れがとても重要だと思ったので、伍介になりきって演じました。

― 伍介というキャラクターは、どんな人物だと感じましたか? 演じるのは難しかったですか?
ラストシーンで伍介のとる行動の信念に達するまで成長していく様を見せることが、伍介を演じることだと解釈していました。村を守りたいという想いから侍になることを決意する男ですが、とにかく何度も何度もいろんなところで失敗する。復讐心にとらわれてもおかしくないのですが、それにとらわれずに立ち向かって歩き出したというところは凄く繊細にやらなくてはいけないと思っていたので、とても難しかったです。
演じやすいかどうかと聞かれたら、正直演じにくい役でした。でも、演じやすいのが良いわけではないと思いますし、逆に難しい役だからこそ、いろんな人に話を聞いたり相談しながらできたので、自分にとっては貴重な経験になりました。

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― ご自身と伍介の性格に共通する部分はありますか?
個人的には似ていないと思います。人によっては役柄を自分に引き寄せて演じられる方もいますが、僕は台本を読んで役柄になれるように意識しています。

― とても雰囲気が似ていると思いましたが・・・。
そうですか?(笑)。生きている時代も違いますし、死に対する距離感(近さ)が違うので、共通点を見つけられないのですが、自分が良かれと思って行動したことが失敗し挫折してしまう、そんな伍介の弱さや脆さは共感できる部分でもあります。

― では、ご自身と伍介が違うと思う点は?
伍介が武士になって村を守りたいという強い思いで行動して、結果的には周りの人を傷つけてしまい・・・。でも最後に見せる伍助の強さは僕にはできないことだなと。そこは映画ならでは伝えられる大きなメッセージになっていると思います。

― 役作りをするにあたり、意識して準備したことはありますか?
一番よくやっていたのは、木刀を振ることでした。伍介がやっていたことであろうことをやりたかったんです。美術の方が1本の木から作ってくださった木刀だったのですが、手に馴染ませたかったし、愛着を沸かせたかったので常に持っていました。僕の場合、特にアクションが多かったわけではないので、殺陣師の方に基本の型を習ってそれをとにかくやっていました。

青柳翔

― どうして伍介は木刀を振っていたのだと思いますか?
伍介は村下(むらげ)の息子として一子相伝の中で受け継がれなくてはいけないという宿命を背負った男なんですが、どこかそこに疑問を持っていた。木刀を毎日振ることでその疑問を払拭していたのではないのかと思います。伍介自身も剣術稽古にすごく力を入れていたので、僕も朝振ってみたり、昼の休憩の後に振ってみたりすることで少しでも伍介に近づけるんじゃないかなと思って毎日木刀を握っていました。

― それは精神的にということでしょうか?
そうですね。気持ちをもっていくことが難しくかったので。

― それには、あの壮大な景色やセットには助けられたのでは?
すごく助けられました。セットを建ててくださった方々が、出雲大社の遷宮にも携わる地元の宮大工や材木問屋、建設会社の方々で本当に土台がしっかりとしたセットだったんです。こんなに広くてすばらしいオーブン・セットの中でお芝居ができるなんて、一生のうちにあるかないかのことだと感じました。高殿を作るときは釘を1本も使わずに時間をかけて作ってくださっていましたし、見た目も村も人工物が一切周りに見えないので、そういう点でも時間を有意義に使える現場だったと思います。世界観に入り込みやすかったです。

そう言えば、セットの中でもう2ヶ月いるなぁと思った時があって、ふとそんなことを漏らしたら、あるスタッフの方が「俺はもう1年いるよ(笑)」と言ってて驚きました。着工して半年かけて建てているので、準備段階も含めると1年ほどいらしたそうです。セット内にある植物、例えば畑の作物や苔、雑草などはすべて種から撒いて育てられたとか。ありがたいお話でした。

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― 物語のテーマ性を語る上で自然も重要なポイントとなっていると思いましたが、印象的なロケ地について教えてください。
北国船に乗った伍介が旅立つシーンがあるんですが、青森で実物大に復元された木造船に乗船したんです。今で言う島根県の安来港まで石見銀山から出た銀や砂鉄を運んでいた船なのですが、その間で立ち寄ったところで〈たたら操業〉が盛んになっていったんだそうです。復元された船は自走ができないので2隻の船に牽引してもらって撮影は行われたのですが、いい経験をさせていただきました。

― あのシーンにはそんな裏話があったんですね?
裏話と言えば、撮影で使わせていただいた北国船は、昔の設計図を元に復元した上で保存しようという運動によって造られたものでした。ところが撮影後、昨年の台風の直撃を受けて船の前の部分が折れてしまったそうなんです。修復はするようですが、動く北国船の勇姿を収めた最後の映画になるかもしれないので、そういう意味でも貴重な作品です。

― 乗り心地はいかがでしたか?
とても爽快でした。ああいう船に乗り込めるなんてなかなかないことですから。撮影としても、海鳥がいいタイミングでフレームインするまで待っていたりと思い出深いです。

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― EXILE AKIRAさんや小林直己さんとの共演はいかがでしたか?
お二人ともとにかく殺陣のシーンが多かったんです。AKIRAさんは時代劇もやられていますし、殺陣なども早かったですね。稽古の段階から本番まで見学もさせていただいたので、演技はもちろん現場での立ち振る舞いまでいろいろ学ぶことが多かったです。周りに気を配られている様も感じましたし、勉強になりました。直己さんも殺陣が多くて、殺陣師の方とコミュニケーションを取りながら、殺陣の構成を一緒に練っていらっしゃるのを見ていて、改めて凄い方だなと思いました。印象的だったのは、ある日、セットの近くにあった森を昼食も取らずに立ったままじっと見つめていたこと。なぜそうされていたのかは聞いていませんが、思うにご自身が演じる役の住んでいる世界観に極力身を置くことで、役に集中しようとしていたのだと思います。実際、時間があれば直己さんが住んでいる設定の家にずっといらっしゃいましたし、食事もそこで取られるようにされてました。あと、直己さんはタフです。雨中のアクション・シーンがあるんですが、尋常じゃないくらいに寒かったんです。その中で倒れた時に僕はうつ伏せで顔を横にそむけた状態だったんですが、それでも寒くて動かずにはいられなかった。直己さんは仰向けに寝て、もう顔が水没直前くらいまで水が来ていたにも関わらず、微動だにしなかったんです。しかも、次の日はライヴが入っているスケジュールだったりと、本当にタフな方だなとつくづく感じました。

― あの雨の中の立ち回りは本当に凄かったですね!
映画は2015年8月から10月にかけて撮影していまして、豪雨の中での殺陣は秋頃の撮影でした。ただ、真夜中である上にセットが作られたのが標高400メートルの場所。風などを遮るような林なんかもないロケーションで凍えるような寒さだったんです。しかも、雨粒をしっかり見せるために50トンの水を3台のクレーンから放水設備を使って降らせていたので、前がよく見えないくらいの雨量になっていました。だからこそ、直己さんも念入りに殺陣師の方と打ち合わせをされていたんだと思います。

― 撮影中には、3人でお食事に行くことはありましたか?
はい、行きました。一緒に食事していろんな話をしました。「いい映画にしたいね」とか「あのシーンは、僕はこうしたいんですけど」「ああ、いいよ。了解!」とかいう映画の話もしましたが、あとは本当にたわいもない話ですね。「明日撮影休みだけど何するの?」とか、「あれ食べた?」とか「あそこのお店美味しいよね」・・・みたいな(笑)

― 美味しいお食事をたくさん召し上がったと思いますが、特にハマったお食べ物はありますか?
しじみ汁です。しじみの味噌汁は最高に美味しかったですね。しじみ汁って、自分の中ではたまに飲むという感覚でしたが、現地では毎日のように飲むことができて嬉しかったです。すごく思い出に残っています。東京に帰ってきてもあの味を思い出して、たまに飲みたくなりますね。

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― 日本の美、原点、そして男たちの闘いを描いた作品ですが、その影には母親や許嫁などの女性の力も大きいと思います。そんな女性たちを見ていかがでしたか?
三歩下がって人を支えている姿は惹かれますね。とても素敵だと思います。村を支えていく上で女性の存在は非常に大きいと思います。村げの人たちも村長も、受け継がれている伝統を守るために必死に抗ってはいますが、やっぱりその人たちを支えているのは女性なんだなと、この作品を通じて改めて感じました。“たたら吹き”には女性は一切入ることができないので、男たちがそこに集中することができる環境を作ってくれるのも女性たちの力ではないでしょうか。

― 共演者には、ベテラン俳優の方々がズラリと並んでいらっしゃいます。特に印象に残っていることはありますか? どんなお話をされましたか?
津川雅彦さんは津川家の犬の話をしてくださいました(笑)。奈良岡さんとはお食事もご一緒させていただき、楽しい時間を過ごさせていただきました。「(撮影では)緊張しないのですか?」と尋ねたら、「あなた、緊張するなんておこがましいのよ」と言われ、「自分を良く見せようとしたり、自分の出来ること以上のことをやろうとするから緊張するの」と。ありのままでいなさいと言われているようで、その言葉は今でも思い出します。本当に日本の映画界を代表するような方々に囲まれながらの撮影で、勉強になることばかりでした。

― 今作で主演を飾られた青柳さんですが、もし違うキャラクターを演じるとしたら誰がいいですか?
う~ん・・・(しばし考えて)、でんでんさん! でんでんさん演じる鍛冶大工の源蔵と対峙した時に、いいなと思ったんですが、それは源蔵というより、でんでんさんの魅力ですね(笑)。厳しいことを言っているんですが、でんでんさんらしい優しさが滲み出ていてとても魅力的だったんです。もし、伍介役じゃなかったら、是非でんでんさんで(笑)。

― この作品に出会って、ご自身に変化はありましたか?
今作の制作チームは、前作の映画『渾身』に続き2回目なので、チームワークもいいですし、地域に密着してみんなで一丸となって作った映画です。地域まで丸ごとになってという作品はなかなかないと思います。今作ほど「映画は一人ではなくみんなで力を合わせて作るんだな」という思いにさせてもらったことはありません。本当に貴重な体験をさせてもらい自分を大きく成長させることができたと感じています。

たたら吹き

― また、本作は『第40回モントリオール世界映画祭』最優秀芸術賞の他、多数の映画祭でも受賞されています。どういうところが、海外でも評価を得られた要因だと思いますか?
映像もアクションも、本当に関わった全員がこだわりを持って作った作品だということだと思います。〈たたら吹き〉という題材も注目していただけるポイントだと思っていたので、様々な部分が評価されたのが嬉しいです。義を重んじるだけの従来の侍ではなく、ちょっと違う角度から見た日本の侍像が受け入れられたのではないかとも思います。

― では、青柳さんの考える一番の見どころとはどこでしょうか?
美しい映像をはじめ、すばらしいアクション・シーン、そして伍介がいかに憎しみの連鎖を断ち切るかという物語まで、みんなのこだわりが詰まった作品になっていると思います。そういう意味で、どこかひとつではなく、すべてが見どころだと思います。

― 最後に、今作が描こうとした「侍」=日本人像とはどんなものだったと考えますか?
実は伍介が一番現代人っぽい発想の持ち主なのではないかと感じていました。伍介のように村を守りたい側の想いと、伝統を守りたい側の想い。どちらも正しいんですが、そこが交錯するのも今作の面白いところ。誰かを守りたいと思った時にいかなる行動を取るのか、ぜひみなさんにもそこを考えながら観てみていただけたら嬉しいです。

スタイリスト/松川総(TRON)
ヘアメイク/鵜飼雄輔(TRON)

【青柳翔(あおやぎ しょう)プロフィール】
1985年4月12日生まれ。北海道出身。舞台「あたっくNo.1」(09)で俳優デビュー。その後劇団EXILEのメンバーとなり、映画・ドラマ・舞台などで幅広く活躍している。映画『今日、恋をはじめます』(12)で第22回日本映画評論家大賞新人賞を受賞。
錦織良成監督とは主演した『渾身 KON-SHIN』(13)につづいてタッグを組む。主な出演作品に、『東京難民』(14)、『極道大戦争』(15)、『HiGH&LOW THE MOVIE』(16)、ドラマ「聖女」(14)、「ファーストクラス」(14)、「残花嫽乱~美しき罠~」(15)、「ワイルド・ヒーローズ」(15)、「きんぴか」(16)など。

本ポスター

映画『たたら侍』
<STORY>
1300年の時を経て今日まで伝わる、唯一無二の鉄「玉鋼」を生み出す技「たたら吹き」。
伝説の地・奥出雲でその伝統を守ることを宿命づけられた男が、侍にあこがれて旅に出た。のちに人はその若者を「たたら侍」と呼んだ。日本伝統の匠の技と気高い精神を継承することの大切さを、美麗で雄大な映像と共に描き出す。戦乱の世に、ひとりの未熟な青年が過ちを繰り返しながら生きる道を探し続ける物語。

監督:錦織良成
エグゼクティヴ・プロデューサー:EXILE HIRO
出演:青柳翔、小林直己、田畑智子、石井杏奈、高橋長英、甲本雅裕、宮崎美子、品川徹、でんでん、氏家恵、橋爪遼、安部康二郎、菅田俊、音尾琢真、早乙女太一、中村嘉葎雄、佐野史郎、豊原功補、山本圭、笹野高史、AKIRA、奈良岡朋子、津川雅彦
配給:LDH PICTURES
(c)2017「たたら侍」製作委員会
公式サイト:http://tatara-samurai.jp

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