直木賞作家・桜木紫乃氏の同名小説を映画化した『起終点駅 ターミナル』の完成会見が10月8日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで行われ、主演の佐藤浩市と本田翼、中村獅童、和田正人、篠原哲雄監督が出席した。
第28回東京国際映画祭のクロージング作品に選ばれている本作は、果ての街・釧路を舞台に、人生の終わりへと向かっていたはずの男と女が出会い、孤独を分かち合い、そして再びそれぞれ新たな人生を歩み始める樣を描く物語。かつて愛した女性を死に追いやってしまった悔恨にさいなまれる弁護士・鷲田完治役に佐藤。家族に見放され、誰にも頼ることなく生きてきた孤独な25歳の女性・椎名敦子を本田が演じる。
佐藤は、「人は自分勝手な想いを持ちながら、傷つき、また救われる。そういう想いを繰り返して生きているという事を描いている作品です」と作品を説明し、原作の良さを引き出すために監督と話し合いを重ねたという。
本田とは初共演。影のある敦子役が本田だと聞かされたときは、「ヤバいな、おいおい大丈夫か?と思った」と打ち明けるも、「これまで、元気で明るくて等身大の役が多い彼女がどう体現するのか、正直最初は一抹の不安を抱きました。しかし、“不幸な女の子でござい”という女優さんが来てやるとしたら違ったなと。彼女は役を咀嚼し吸収して自分なりの敦子にしてくれて、『この子でよかった』と思いました。みなさん、安心してください!」と満面の笑みを浮かべ、さらに「ハードルを上げるようですが、最後のシーンも彼女の芝居にぜひ期待してください」と太鼓判を押した。
一方の本田は、「もちろん緊張もありましたが、孤独を抱える女の子の役は初めてだったので、女優としてすごく重要だったと思います。なにより佐藤さんと二人芝居が出来るチャンスをもらえて本当に幸せな経験でした」と笑顔を見せた。
そんな本田を「撮影前のテストの時、ヘラヘラしているのでちょっと怒ったら『えー、だってさ~』って言うんですよ」といじる佐藤。「でも、一生懸命で緊張しているところを見せないようにしているんだと理解したんです。今後、現場では若い人たちがヘラヘラしていても怒らないようにしようと思います(笑)」と語ると、「あまり緊張しないように心がけているんですが。でも『えー、だってぇー』とは言ってないですよ。「ええ、そうですか?」だったかと・・・(笑)」と本田。佐藤が「少しアレンジしました」と返し、息を合わせる様子も。篠原監督も「いい現場だった」と微笑んだ。
また、劇中では、唐揚げやいくらなどを二人が美味しそうに食べるシーンがたびたび登場するが、撮影では実際に佐藤が料理し、スタッフにも振舞ったという。本田は「佐藤さんが料理をされることにビックリしました。しかも美味しいんです」と絶賛。佐藤は「食事を作って食べるのが日常の中で唯一起伏のある場面」と、場面の重要性を伝えながら料理のこだわりについても吐露し、「僕は、麻布とか広尾のレストランでワインを飲んでいるようなイメージがあるようですが、そんなことは滅多にない。スーパーで何か買って自分で作りますよ」と明かした。
人生を変えた“出逢い”を描いた本作にちなみ、「運命的な出逢いは?」という問いについて、佐藤からの熱望で出演が決まった中村は、「監督や共演者、作品など人生のポイントには必ず出逢いがありました。勘三郎お兄さんもそうですし、『ピンポン』という作品も。そういったいろんな出会いがあって新作歌舞伎を作る事ができました。これからも一つ一つの出会いを大切にしていきたいです」とコメント。
和田は、今作の脚本を担当している長谷川康夫氏をあげ、「新人1年目の作品で色々なアドバイスをくださった。僕はあの時長谷川さんに言っていただいた言葉でその後の10年が築かれたと思っていて、その方とまたご一緒できたという事が大きな出会いだと思っています」と。
佐藤は、父・三國連太郎氏と若山富三郎氏をあげ、「最初に仕事をもらった時、若山富三郎さんに厳しくしていただいた。若山さんがやってくださったような事を、今度は若い方々に自分でやらないといけない立場になった事に時代の移り変わりを感じています」としみじみと語った。
『起終点駅 ターミナル』
出演:佐藤浩市 本田翼
中村獅童 和田正人 音尾琢真 泉谷しげる 尾野真千子
原作:桜木紫乃「起終点駅 ターミナル」(小学館刊)
脚本:長谷川康夫
監督:篠原哲雄
主題歌/「ターミナル」My Little Lover(TOYSFACTORY)
配給:東映
コピーライト:©2015桜木紫乃・小学館/「起終点駅 ターミナル」製作委員会
公式サイト:http://www.terminal-movie.com/
11月7日(土)より全国ロードショー!