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ドアン・イーホン(段奕宏)登壇 映画『迫り来る嵐』Q&A【第30回東京国際映画祭】

東京に嵐が来た10月29日。電車が止まるのではないかと心配される天気にもかかわらず、満員の観客で埋まった会場に監督・脚本のドン・ユエ(董越)、プロデューサーのシアオ・チエンツァオ(肖乾操)、主演俳優のドアン・イーホン(段奕宏)の3名が登壇。映画を見終わった直後の興奮さめやらぬ観客に、大きな拍手で迎えられた。

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脚本と監督を担ったドン・ユエは、スチールカメラマンとして活躍していたが、2015年に若手映画人のための脚本コンテストに本作シナプスを応募し入選。シアオの元での製作が実現した。

主人公の余国偉を演じたのは、44才のドアン・イーホン。1998年に中央戲劇学院を卒業し、国立劇団に入り、テレビドラマや映画で着実に知名度をあげ、2002年には初主演映画『二弟』がカンヌ、トロントなど多くの映画祭に出品され、インドでの映画祭で主演男優賞を受賞。以来、実力派俳優として数多くのドラマ・映画に出演。人気と実力を兼ね備えた俳優として確固たる地位を築いている。

本映画の舞台は1990年代中国南方の地方都市。連続殺人事件が発生し、犯人はこの町の大工場の従業員の可能性が高いと疑われていた。
この工場内で起きた窃盗事件を何度も解決し“神探偵・余”と呼ばれていた工場の保安課につとめる余国偉(ドン・ユエ)が、この事件の調査に乗り出すのだが…。
垂れ込める恐怖とハラハラするサスペンスの中で、日本とは異なった中国の社会や暮らし、庶民感情が描かれた骨太な作品。会場の外の実際の天気を気にしていた観客にとって、映画全編を通じて降りしきる雨が、一層のリアリティと恐怖を感じさせたことだろう。

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EXシアター六本木という、2階席もある映画祭での上映会場としては大きな会場で、3人は緊張した面持ちで登壇。しかし、司会者からの質問に続いて質問権を得た一人目の観客が「ドアンさんの大ファンです。今日は私の誕生日なので祝って頂きたいのですが…」と口を開くと、3人は一瞬で表情を和らげ、ドアンは舞台下までその観客を招いて自身のサイン入りポートレイトを手渡した。

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司会:ご挨拶をお願いします。
ドン監督:美しい東京という街で世界初の上映ができたことを大変嬉しく思っています。
ドアン・イーホン:東京で初めて皆さまにお会いできたことを大変光栄に思います。私たちの映画に注目して頂き、雨の中をこの劇場までおいで下さりありがとうございます。皆さまの心が感じて頂ければと願っています。
シアオ・チエンツァオ:今日は特別の日です。東京の、そして世界から来られた観客にこの映画で初めてお会いします。そして今日の天気は映画の雰囲気を彷彿とさせます。おいで下さり、本当にありがとうございます。

司会:1本目の作品とは思えない骨太の作品ですが、1本目にこの物語を選んだ理由は?
ドン監督:私の初めての長編映画で、多くの物語に注目して大変長い時間をかけて準備してきました。だいたい2~3年前に1990年代の中国で起きた出来事を偶然知りました。深く知っていく中で、90年代は中国の社会にとって、特殊で重要な時期であることに気が付きました。中国の元々の計画経済からの資本主義経済への転換期で、特に一般の人々がこの変化の中で人間的にも精神的にも変化したことです。それに気がついて、物語を90年代に置きたいと思いました。調べていく中で興味を覚えたのが、90年代の半ばから後半に極端な事件…連続殺人事件がとても多く起こっていたことです。それは中国社会の変化が、事件の変化にも影響をもたらしたのではないかと考えました。

観客:この後編集されますか?終盤の音楽にとても興味をひかれたのですが、中国でもこのままのバージョンで上映されるのか、気になっています。
ドン監督:今日見て頂いたのは、ドラゴンマーク入り(上映を許可された)バージョンです。广播电影电视总局(略称广电总局)が2017年3月1日からの新しい規定によって、芸術面やその他の問題点をきちんと理解・共有できることになり、私たちクリエーターにはとても喜ばしいことです。
終盤の音楽については、関係部門の指導部の方たちも好きだと言ってくださり、自分でのとても素晴らしと思っているのでこのまま残して中国の観客もこの音楽で見て頂けると思います。

観客:この映画でドアンさんは年老いた感じで初登場しますが、以前の映画ではかっこいい役柄が多かったので、私にはやはりかっこいいと思えました。スターと言われる俳優の、役柄、以前の役柄とその本当の姿との関連に興味があります。
ドアン・イーホン:観客の皆さんが私や私の作品についてそんなに詳しく知って考えて下さっているということは、私にとって喜ばしいことなのか、面倒なことなのでしょうかね(笑)。でも絶えず求めて下さる観客を、私のやる気の源にしています。私にずっとリクエストを下さり、見守って下さる観客がいて下さることを願っています。それが私の以前の記憶や経験に別れを告げさせています。
この映画はイメージも美術・セットもカメラワークも非常にリアリティのある作品です。俳優として私は、この映画の中でリアリティに貢献できているのか、考え続けてきました。考えられるあらゆる方法で、演じる人物に近づこう、成りきろうと過去の自分のすべての経験を疑いながら、実際に大工場で暮らし、保安課の人々に近づこうとしました。今日、完成した映画を見終えて、自分自身への要求が厳し過ぎるかもしれませんが、私はまだまだ欲張りです。あなたのような有難い観客がいるのですから、自分はもっと頑張らねばと思いました。ありがとうございます。感謝しています。

客席からは中国語での質問が多く、本作への期待度の高さ、ドアンの人気を感じさせてくれた。こうした骨太の中国映画が広く鑑賞できる機会が拡がることを願いたい。

迫り来る嵐
The Looming Storm [ 暴雪将至 ]
監督・脚本:ドン・ユエ(董越)
出演: ドアン・イーホン(段奕宏)、ジャン・イーイェン(江一燕)、トゥ・ユアン(杜源)、 チェン・ウェイ(郑伟)