原作:吉田修一×監督・脚本:大森立嗣
48年ぶりの国際映画賞受賞タッグ
ある殺人事件を発端に、想像もつかない方向へうねり出すー
『湖の女たち』
福士蒼汰 松本まりか
三田佳子 浅野忠信 大森立嗣監督登壇!
公開記念舞台挨拶 実施!
「罪深いことをした」吉田修一からの手紙に思わず松本が号泣…!
福士は「隣に松本さんがいてくれたことが大きかった」と笑顔で感謝!
吉田修一氏による“現代の黙示録”とも言うべき傑作同名小説を、『日日是好日』、『星の子』、『MOTHER マザー』の大森立嗣が監督・脚本にて映画化した『湖の女たち』が絶賛公開中となる。第35回モスクワ国際映画祭で日本映画48年ぶりとなる審査員特別賞の快挙を始め、数々の国内賞を受賞した映画『さよなら渓谷』のタッグが実現した『湖の女たち』は、全編にわたって観る者の理性と感性を激しく揺さぶり、比類なき衝撃的な映画体験をもたらすヒューマン・ミステリーである。介護施設での殺害事件を発端に、想像もつかない方向へとうねり出す物語は、重層的な構造と壮大なスケール感で観る者を圧倒する。
事件が混迷を極めるなかで、身も心もさらけ出す難役に挑んだのは、刑事・濱中圭介役を演じた福士蒼汰と、事件が起きた施設の介護士・豊田佳代役を演じた松本まりかだ。圭介と佳代の、一心不乱に互いを求めて貪り合うその姿は、闇夜の湖畔で艶めかしい“生”の輝きを放つ。今までに見たことのない福士の淀んだ視線、松本の剥き出しの心が「今、世界は美しいのだろうか」という問いの答えとなり、見るものの心に突き刺さる。
映画『湖の女たち』の公開を記念して、公開記念舞台挨拶を実施!
福士蒼汰 松本まりか 三田佳子 浅野忠信 大森立嗣監督ら豪華キャスト・スタッフ陣が登壇!
この度、映画『湖の女たち』の公開を記念して舞台挨拶を実施。W主演を務めた福士蒼汰と松本まりか、そして三田佳子、浅野忠信、大森立嗣監督ら豪華キャスト・スタッフ陣が登壇し、公開を迎えた喜びや撮影中のエピソードなどをたっぷりと語った。さらにサプライズで原作者の吉田修一からの手紙が披露されると、松本は思わず涙を浮かべる姿も!終始和やかな雰囲気で進行した本イベントは、惜しまれながらも大盛況のうちに幕を閉じた。
<以下、レポート全文>
この日の舞台あいさつは映画の上映後に実施。衝撃的な物語の余韻に包まれた会場内にやってきた福士は「今回の圭介という役はすごく複雑な心境を持ちながら生きている青年ですが、普段の僕はすごく笑顔です。今日の舞台あいさつは安心して聞いていただければ」と笑顔であいさつ。続く松本も「わたしはこの映画を撮ってから、公開されるのがすごく怖くもありました。とても個人的なことですが、SNSに書けていない作品です。それほど自分の中で、この映画をどう表現したらいいのか…すごく難しくて。でも本当にこの作品はわたしにとって、人生の中でとても大きな、大切な作品です」と誇らしげな表情。さらに「この映画は、僕の映画にありがちな賛否両論がわき起こっています。ただ、この映画をつくることには確信を持っていて。この映画をつくれたこと、公開となったこと、スタッフ・俳優にも感謝しかありません」と呼びかけた。
松本はこの作品の撮影を終えて、「女優を辞めようと思った」と心境を吐露するほどに、心身ともにこの作品にささげた。撮影中は出口が見えず、答えも分からない日々の中、それでも大森監督が信頼してくれたこと。その信頼はきつくもあったが、だけど同時にそこまで役者を、スタッフを、作品を、そして人を信頼するということはどういうことなのかを体感したということを切々と語った。そして今、撮影を終えて、監督が覚悟を持って信じきってくれたということを、今度は自分自身が行おうという決意。それを通じて「ようやくこの作品に関われた意味を日々、実感していて。信頼するって美しいなと。本当に生きる上で大事なものをこの映画から教えてもらった」と松本は振り返った。
一方、三田が演じるのは、介護施設で殺された100歳の老人の妻で、封印された過去をずっと心に秘めてきた市島松江。短いシーンながら人生の重みを体現する、まさにこの映画を象徴するような人物となる。そんな人物について「難しい役ですよね」としみじみ語る三田は、「(シーンに)たくさん出ていて、その都度だんだんとつくりあげていく役なら、まだ頼り場所のある演じ方もできるんですけど、突然真ん中に出てきて、つくりあげていくという役ですし、邪魔になってもいけない役。そういう意味では、よくぞこの難しい役をわたしにと言ってくださったなと思います」と切り出すと、さらに「そういう人を演じられたことは役者冥利につきますし、皆さまにこういう三田佳子を見ていただけたということはとてもうれしかった」と喜びをあらわにした。
それを聞いた大森監督が「いわゆる“戦争の男たち”というのはよくありますが、(松江という役は)“戦争の女”なんですよね。戦争の負の部分をひとりで背負い続けていて、それをワンシーンで体現しないといけないわけですから。難しかったと思います」とおもんばかると、三田が「それを分かっていたのね、監督は」と返してみせ、会場はドッと沸いた。
そして、福士演じる若手刑事・濱中圭介の先輩刑事であり、パワハラは当たり前、容疑者を苛烈に追い詰める伊佐美を演じた浅野に対して、この役を受けた理由とは?という質問に「福士くんを痛めつけられるからです」と冗談めかして会場を笑わせた浅野は、「福士くんとこういう役ができるのは楽しみではあったんです。確かに後輩やいろいろな人にヒドいことをする役なんですけど、彼がなぜそういうことをするのかという、その背景にある人間性をきちんと描いていただいたので。彼の絶望の裏返しというのが、演じていてやりがいがありましたね」と振り返った。
そしてこの日は原作者の吉田修一より、出演者にサプライズで手紙が届けられた。「映画『湖の女たち』公開に寄せて」と題したその手紙は、「試写でこの映画を見終えて、私は言葉を失いました。慌てて何か言葉を探そうとしたのですが、今自分の心のうちに湧き上がっているものに、ただの一語も言葉を与えてやることができませんでした。それほど映画『湖の女たち』は、観る者から安易な言葉を奪ってしまう作品なのだと思います」とはじまり、「この小説はとても持ちにくい形をしています。映像化に際して持ちやすいように形を変えることは簡単ですが、大森監督は持ちにくい形のまま、それでも持ち上げようとしてくれました。監督のその大いなる覚悟にも改めて感謝申し上げます」と大森監督の“覚悟”、そしてそんな大森監督に対する“信頼”がつづられていた。
そして「この作品で描かれるのは、官能と自然と歴史、そして正義についてです。偶然にも、本日壇上にはそれぞれを体現されているキャストの皆さんがいらっしゃるとお聞きしました」と続けられたその手紙は、「福士蒼汰さんが持つ野性的な官能。松本まりかさんが体現された大自然のリズム。そして伝説的な女優である三田佳子さんからはこの国の歴史を、浅野忠信さん演じる刑事は正義の揺らぎを、生々しくわれわれに伝えてきます。映画の終盤、浅野さん演じる刑事が『世界の美しさ』について福士さん演じる圭介に問うシーンがありますが、ひいき目ではなく、日本映画史に残るような名シーンではないかと思います」とキャスト陣について言及。
そして「この『湖の女たち』が一人でも多くの方に届くことを願ってやみません。一人でも多くの方がこの映画に触れ、福士蒼汰さん松本まりかさん、お二人の鬼気迫る姿に、そして湖の夜明けの美しさに、私と同じように言葉を失ったならば、この作品が伝えようとしたものは、きっと届いたのだろうと思います」とつづられたその手紙は、「主演を務められた福士さん、そして松本さん。圭介と佳代という人間を生み出した原作者として思うのは、今回のお二人の挑戦が生半可なものではなかっただろうということです。しかし、その挑戦の先でお二人が見せてくれた風景は、小説を遥かに超えたものでした」と感謝の思いが明かされた。
そしてその手紙は「風景には、決して触れられない。ずっとそう思っていましたが、それでも必死に手を伸ばせば、いつかかなうのではないか。お二人の演技は私にそんな思いを抱かせるほどに、人間の品性と生きることの可能性を見せてくれました。圭介と佳代を、誇り高く演じてくださって、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました」という文言とともに締めくくられた。
その手紙に触れた福士は「すごくありがたい言葉をたくさんいただいてうれしいですし、素直に受け止めたいと思うんですが、すごくありがたい言葉をいただけばいただくほど、もっとやりたかったなという思いがあふれてきて。自分の未熟さを実感してしまいます」と正直な思いを吐露すると、「この作品をやって大きく変わりましたし、人としても、物事の捉え方、言葉の扱い方というものが少しずつ変わってきたなという感覚があって。それは心が成長していくというか。役者をやるのってすてきだなと思う瞬間のひとつ。それは先輩の浅野さん、三田さんを見ても、役者を続けていくと、こういう風にきれいな景色を見ることができるということを体現している方がそばにいると、自分もそれを続けていきたいと思いますし、さらに自分の未熟さを感じてしまうところもありますが。圭介と同じようにそういう心境が入り交じるといいますか、そんな感覚の30代なんだと思います。吉田さんありがとうございます!」とコメント。
続く松本は言葉に詰まった様子で、しばし黙考しつつも、その瞳からはみるみると涙があふれてくる。そして「正直な話をすると、わたしはこの作品を受けて、非常に罪深いことをしたなと思いました」と絞り出すように語りはじめると、「やはり自分にはやりきれない。この作品を、この役を体現するには、あまりにも自分は未熟すぎました。すべては人間性も芝居も、全部ですが。だけどわたしは大森監督の作品を、吉田さんの作品をどうしてもやりたかった。それはただ、ただ自分にとって必要な映画だったから。自分がこの作品を背負って、やっちゃいけないなと思っていましたけど、自分の欲求だけでやってしまいました。撮り終わってからも、すごく罪深いことをしてしまったなと思っていました」と述懐。だがそれゆえに原作者の吉田から手紙に触れて、「原作の吉田さんからこういったお言葉をいただいた時に、さらにその罪深さは増したなと思いました。でも吉田さんがそう思ってくださったことはわたしにとっては救いでした」とその正直な思いを切々と語った。
さらに「今のお言葉からも、やっぱりこうやって自分が何かを表現する立場にいる、自分が影響力を持つ仕事をしているという自覚。安易に言葉にしないということを大事に生きていかないといけないなと思いました」とあらためて決意を語った松本は、「今までも安易な言葉を使っているつもりはありませんが、自分から出てくるもの、表現というものが、本当にうつくしいと思えるものであり続けたいなということを、今、お手紙を聞きながら身を正しました」と涙ながらに付け加えた。
そんな出演者にとっても大切な一本となった本作。最後に福士が「何より隣で松本さんがいてくれたことが大きかった。撮影中は(役柄の関係性もあり)笑顔も見せずに話さないということでやり通しましたが、彼女はすごく不器用だけど、熱いものをめちゃくちゃ持っている人です。(先ほどもそうでしたが)話し出すまですごく考えているんだけど、話し始めたら止まらないじゃないですか。松本さんの持っているエネルギー、ピュアさみたいなものがすごくたまっていって、それが佳代という存在とリンクしていくのだと思います。それが人間的で美しいなと思う瞬間がありましたし、佳代という存在にも現れていたんじゃないかなと思いました」と語ると、最後に松本に対して「ありがとうございました」と感謝の思いを伝え、会場からは大きな拍手が。
そしてその言葉に笑顔を見せた松本は「最後に一カ月半くらいきつかった時期を回収してもらいました」と涙ながらにコメントすると、「(圭介という役柄に対峙して)怖かったです」と付け加えて大きく沸いた会場内。その言葉に思わずあわてた様子で「ごめんなさい!」と返した福士。そんなふたりのやり取りに会場は最後まで大盛り上がりとなった。
(オフィシャルレポートより)
<STORY>
湖畔の介護施設で百歳の老人が殺された。誰が、何のために…?
事件の捜査にあたった西湖署の若手刑事・圭介とベテランの伊佐美は、施設の中から容疑者を挙げ、執拗な取り調べを行なっていく。その陰で、圭介は取り調べで出会った介護士・佳代への歪んだ支配欲を抱いていく。
一方、事件を追う週刊誌記者・池田は、この殺人事件と署が隠蔽してきたある薬害事件に関係があることを突き止めていくが、捜査の先に浮かび上がったのは過去から隠蔽されてきた恐るべき真実だったー。
福士蒼汰 松本まりか
福地桃子 近藤芳正 平田満 根岸季衣 菅原大吉
土屋希乃 北香那 大後寿々花 川面千晶 呉城久美 穂志もえか 奥野瑛太
吉岡睦雄 信太昌之 鈴木晋介 長尾卓磨 伊藤佳範 岡本智札 泉拓磨 荒巻全紀
財前直見/三田佳子
浅野忠信
原作:吉田修一『湖の女たち』(新潮文庫刊) 監督・脚本:大森立嗣
製作幹事:東京テアトル、ヨアケ 制作プロダクション:ヨアケ
共同配給:東京テアトル、ヨアケ
公式サイト:thewomeninthelakes.jp/
公式X:@womeninthelakes
クレジット:©️2024 映画「湖の女たち」製作委員会
絶賛公開中!