【第36回東京国際映画祭】
ケリング「ウーマン・イン・モーション」トークを開催!
俳優 ペ・ドゥナ、水川あさみ、プロデューサー 鷲尾賀代が登壇!
是枝裕和監督もオープニング・スピーチで登場
才能あふれる3人の映画人が、韓国、日本、米国の映画業界における
女性を取り巻く環境、課題と未来について語る!
左から:是枝裕和、水川あさみ、ペ・ドゥナ、鷲尾賀代
グローバル・ラグジュアリー・グループのケリングは、第36回東京国際映画祭公式プログラム「ウーマン・イン・モーション」トークをTOHOシネマズ 日比谷にて10月27日(金)に開催し、韓国より来日した俳優のペ・ドゥナ、俳優の水川あさみ、WOWOWプロデューサーの鷲尾賀代が登壇した。
「ウーマン・イン・モーション」は、カメラの前と後ろで活躍する女性たちに光を当てることを目的に、カンヌ国際映画祭のオフィシャル・パートナーとなったケリングが、同映画祭の公式プログラムとして2015年に発足したプログラム。東京国際映画祭における「ウーマン・イン・モーション」トークは、2019年、2022年に続き、今年で3回目の開催となった。
今回の「ウーマン・イン・モーション」トークでは、韓国を代表する俳優の一人でハリウッドでも活躍する俳優のペ・ドゥナ、また主演作『滑走路』(20年)や『喜劇 愛妻物語』(19年)が高い評価を受け、毎日映画コンクール女優主演賞、キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞を受賞し、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」シーズン4の1作『おとこのことを』(22年)で監督業に進出するなど活動の場を広げている水川あさみ、さらにWOWOWにてチーフプロデューサーとして国際共同制作と洋画配給を担当し、直近では共同制作を手掛けた映画『私たちの声』(23年)が2023年の米・アカデミー賞歌曲賞にノミネートを果たし、今月発表されたハリウッド・リポーター誌の「国際的なテレビ業界で最もパワフルな女性35人」の1人にも選出された鷲尾賀代という、才能あふれる3人を迎えて開催。韓国、日本、米国の映画業界における女性を取り巻く環境、そしてその課題と未来について、それぞれの視点から語った。
さらにイベントでは、2018年のカンヌ国際映画祭のパルムドールをはじめ、国内外で数々の賞を受賞している是枝裕和監督がオープニング・スピーチを行った。
イベントでは冒頭、昨年本イベントに登壇した是枝裕和監督が挨拶。「映画の現場で活躍する女性たちが、何が課題なのかを語り合う『ウーマン・イン・モーション』が東京国際映画祭の一環として開催されることは、僕は大きな進歩だと思っています。僕自身、昨年から『action4cinema』という映画界で働く環境を少しでも良くしていきたいという活動をしており、その中には女性が結婚や出産を経ても仕事を続けられる環境を整備していけるかを提言し、働きかけていこうと思っています。この中にも今後映画界で働きたい方や役者として現場に立ちたいと思っている方たちもいらっしゃると思いますので、ぜひ一緒に一歩ずつ日本の映画を巡る環境を良くしていく仲間になってください」と呼びかけた。
続いて、俳優のペ・ドゥナと水川あさみ、WOWOWチーフプロデューサーの鷲尾賀代が登壇。
先日開催された第28回釜山国際映画祭に初めて参加した水川は、韓国の文化としての映画の水準や観客のリテラシーの高さに驚いたそうで、そんな韓国の観客について、ぺ・ドゥナは、「こんなに映画が大好きな民族は珍しいですし、映画館で映画を観ることが日常生活に溶け込んでいる。映画をたくさん観る分だけ映画をよく知っていますし、韓国のコンテンツ力が上がっているのは韓国の観客のレベルが上がっているから。そこに私たちも合わせるという相互作用が働いているのだと思う」と、韓国コンテンツの強さの理由についても言及した。
映画界における女性を取り巻く環境の変化についてのテーマでは、水川は「女性のスタッフが増えてきたと感じますし、女性の撮影監督やチーフを目にすることも増えました。でも映画業界においては、女性が年齢を重ねていき、結婚して子どもを産んだり、家庭を持ちながら仕事をすることと、上手くバランスをとれないことの方が、まだまだ多いと正直感じます」と吐露。
また「#MeTooムーブメント」についての話題になると、アメリカで10年以上プロデューサーとして活躍する鷲尾は、ムーブメントが始まった当時はアメリカにいたため非常に問題意識があったといい、「それまで白人男性がメインで雇われていたポジションに、意図的に必ずマイノリティか女性を、という声が一気に上がりました。私自身は、実力のある人を雇って、それがたまたま全員白人男性や黒人女性でもいいのではと考えていました。でもアメリカの方から、今まで白人男性がずっと雇われてきたのだから、女性やマイノリティの方はまだスタートラインにも立っておらず、経験を積んできた白人男性と比べるのは不公平だ、だから今は意図的に機会を与えるために女性やマイノリティを雇って、その後に、平等に実力で比べられる時代がくるのだ、と言われハッとしました。アメリカはこうして短期間で業界がガラッと変わったので、そういう変化を恐れないアメリカの底力も知りました。日本は変わることがものすごく不得意なので、最初はコピーからでもいいのでやるべきだと思います。韓国の映画界から学ぶことも今はいっぱいあります」と明言。
そんななか、チョン・ジュリ監督の『私の少女』のような当時はまだ無名だった女性監督の作品にも出演するペ・ドゥナは、その真意について「基本的にはシナリオが素晴らしかったというのがありますが、新人監督であれ超低予算映画であれ、俳優にとっては関係ないです。チョン・ジュリ監督のような才能ある女性監督や、デビューを待つ女性監督たちを私も応援したい。いつも『なぜ韓国には男性の映画が多いのだろう?』と疑問を持っていました。男性の主人公が多いですし、男性俳優の方が興行が多いからなのかもしれませんが、そうであれば、魅力的な女性作家が生き生きとした女性像を描き、素敵な女性が多い登場する良い映画を作れば、お客さんは来てくれる。そのような女性作家たちの活躍を、心の底から祈っています」と今後への希望を語る一幕も。
最後に、映画業界での活躍を目指す女性たちへのアドバイスを求められた鷲尾は、「若い方はアメリカのフィルムスクールに行くのが、一番早い手だとは思います。日本もだいぶ変わってきたと思いますが、この業界は本当に厳しい世界。日本の文化として、出る杭は打たれるというのがありますし、まず、打たれてもめげないメンタリティを持つことが大事。また、努力とあわせて、運もすごく重要な要素。チャンスはほんの数回しかやってこないものだから、それをつかみ取る準備を常日頃からしておくこと。それが私自身、今までずっとやってきたこと。そうすれば誰かがどこかで見てくれているはず」とメッセージ。
ぺ・ドゥナは、「『出る杭は打たれる』という言葉に衝撃を受けましたが、出る杭が集まっていれば、どこに当てたらいいのか分からなくなるかもしれません。“当たって砕けろ”で、ぶつかってみる。始めようとしている人には、勇気と希望を伝えたいです」と温かくも芯の通ったメッセージを送り、イベントは幕を閉じた。
ペ・ドゥナ(俳優)
1979年、韓国・ソウル特別市出身。漢陽大学演劇映画科卒。舞台俳優の母キム・ファヨンの影響を受け、幼い頃から演技に興味を持つ。モデルなどを経て、1999年、日本映画『リング』の韓国リメイク『リング・ウィルス』で“貞子役”にあたるパク・ウンソを演じ映画デビューを果たし、ポン・ジュノ監督の長編デビュー作『ほえる犬は噛まない』(00年)でブレイク。百想芸術大賞主演女優賞を受賞した『子猫をお願い』(01年)、パク・チャヌク監督の『復讐者に憐れみを』(03年)、ポン・ジュノ監督の『グエムル -漢江の怪物-』(06年)など国内で着実にキャリアを積む一方、ウォシャウスキー姉妹が手掛けた『クラウド アトラス』(12年)、『ジュピター』(15年)などでハリウッドにも進出。また、山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』(05年)、是枝裕和監督の『空気人形』(09年)、『ベイビー・ブローカー』(22年)など日本人監督の作品でも馴染み深い。正義感の強い刑事を演じて注目された『私の少女』(14年)のチョン・ジュリ監督と2度目のタッグとなる『あしたの少女』(22年)がこの8月に日本公開された。
水川あさみ(俳優)
1983年、大阪府出身。15歳で『劇場版 金田一少年の事件簿 上海人魚伝説』(97年)でスクリーンデビュー。主演作『滑走路』(20年)や『喜劇 愛妻物語』(19年)が高い評価を受け、第94回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、第75回毎日映画コンクール女優主演賞など数々の映画賞を受賞。2022年、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」シーズン4の1作『おとこのことを』(22年)で監督業に進出した。2023年は、9月29日より公開中の『沈黙の艦隊』、10月27日公開の『唄う六人の女』など話題作が続く。エグゼクティブ・プロデューサーを河瀨直美が務めた、村瀬大智監督の『霧の淵』が公開待機中。11月3日より倉持裕演出の舞台『リムジン』、2024年2月23日よりケラリーノ・サンドロヴィッチ演出の舞台『骨と軽蔑』が上演予定。
鷲尾賀代(プロデューサー)
兵庫県出身。青山学院大学卒業後、新卒社員としてWOWOWに入社し、営業部に配属。映画部へ異動後は、日本語吹替制作、オリジナル番組制作、放送権購入に従事。2011年に米・ロサンゼルス事務所を開所、代表駐在員として赴任。メジャースタジオを含む契約交渉と、国際共同制作を手がける。共同制作作品にはマーティン・スコセッシ監督の『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス 50年の挑戦』(14年)やロバート・レッドフォードとヴィム・ヴェンダースら監督による6部構成のテレビシリーズ『もしも建物が話せたら』(14年)などを含む。また、HBO Maxとの共同制作による日本を舞台としたドラマシリーズ『TOKYO VICE』(22年〜/マイケル・マンほか監督)にもエグゼクティブ・プロデューサーとして参加。共同制作映画『私たちの声』は2022年の米・アカデミー賞歌曲賞にノミネートを果たした。
2021年10月に日本に帰任、現在は事業部のチーフプロデューサーとして番組制作を担当。2021年3月には米・バラエティ誌による「世界のエンターテインメント業界でインパクトを与えた女性」の一人に選ばれ、同年10月と2022年10月には、2年連続で米・ハリウッド・リポーター誌の「全世界のエンターテインメント業界で最もパワフルな女性20人」にも選出。全米製作者組合(PGA)会員。
ウーマン・イン・モーションについて
ケリングは、女性に対するコミットメントや取り組みを、グループの優先事項の中心の一つに据えています。クリエイティビティこそが変革を生み出す最も強い力の一つであるものの、依然として男女間の不平等が顕著な芸術や文化の世界に「ウーマン・イン・モーション」プログラムは取り組んでいます。2015年、ケリングはカンヌ国際映画祭にて、カメラの前と後ろで活躍する女性たちに光を当てることを目的とし、「ウーマン・イン・モーション」を発足しました。以来、このプログラムは写真を始め、アート、デザイン、音楽、ダンスの分野にも活動の幅を広げています。「ウーマン・イン・モーション」アワードは、各分野で活躍する、インスピレーションを与えた人物や新たな女性の才能を表彰しています。また、トークイベントやポッドキャストでは、著名人がそれぞれの職業における女性の立場について意見を交換する機会を提供しています。過去9年間、「ウーマン・イン・モーション」は女性の役割について固定された考え方を改めることを促し、あらゆる芸術分野における女性の貢献をより高く評価する場を提供してきました。
ケリングについて
ケリングは、ファッション、レザーグッズ、ジュエリー製品を扱うメゾンおよびケリング アイウエア、ケリング ボーテを擁するグローバル・ラグジュアリー・グループです。傘下のブランドは、グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ブリオーニ、ブシュロン、ポメラート、ドド、キーリン、ジノリ1735。戦略の中心にクリエイティビティ(創造性)を掲げるケリングは、サステナブルで責任のある方法により未来のラグジュアリーを築きながら、各ブランドがそれぞれの創造性を自由に表現することを可能にしています。このような信念が「イマジネーションをその先へ」(“Empowering Imagination”)というケリングのシグネチャーに込められています。
<第36回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2023年10月23日(月)~11月1日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net
<TIFFCOM2022 開催概要>
■開催期間:2023年 10 月25 日(火)~27 日(金)
■会場:東京都立産業貿易センター浜松町館
■公式サイト:www.tiffcom.jp