第37回東京国際映画祭コンペティション部門の審査委員記者会見が、10月29日、東京・TOHOシネマズシャンテにて行われ、審査委員長を務めるトニー・レオン(俳優)をはじめ、審査委員を務めるエニェディ・イルディコー(映画監督)、橋本愛(俳優)、キアラ・マストロヤンニ(俳優)、ジョニー・トー(映画監督/プロデューサー)が登壇した。
映画祭のメイン部門となるコンペティション部門では、110の国と地域から集まった2,023本の応募作品から、厳正な審査を経た15本の作品が期間中に上映される。
トニーは「おはようございます」と日本語で挨拶し、「また東京にやって来ることができて、とても嬉しいです。審査委員長を務めるのは非常に名誉なことです。たくさんいい映画が集まっていると思います」と、ニッコリ。
15本の作品中、中国、台湾、香港の中国語映画が5本含まれていることに、「実はまだコンペティション作品を観ていないのですが・・・」と前置きをしつつ、「中国語映画だけではなく、アジア映画は非常にハイクオリティな作品が多い。香港映画、台湾映画、韓国映画、日本映画・・・など、毎年たくさんの素晴らしい作品を観ることができます。今年も楽しみです。どの作品も良い成績を収めることを願っています」と期待を込める。
また、東京国際映画祭の特徴と意義を問われると、「東京国際映画祭は全面的な視野を持っている映画祭だと思っています。新進監督のプロモーションをはじめ、いろいろなカテゴリーに分けて紹介している。今年はウィメンズ・エンパワーメント部門、新人監督を育てる部門もあります。それと同時に偉大な過去の映画人を振り返る企画もあり、今だけではなく、過去を知る機会を提供することになっていて、とても素晴らしいと思います」と言及した。
同じ質問に、エニェディは「映画祭というものは、映画人の味方。我々作ってきた 作品が、映画祭などによってその注目を浴びたり観ていただくことができるし、隠された宝石を発見することもできます」と言い、「東京国際映画祭は、映画に対して非常に大胆で、また勇敢な選択をされている映画祭だと思っています。ブラボー!と賛辞を送りたい」と述べる。
橋本は、2021年と2022年にアンバサダーを務めてきたが、今年初めて審査委員に抜てきされ、「こんな重要な役目を、このような錚々たる皆様と共に務めさせていただくことを、心から光栄に思いますし、震えるほど緊張もしています」とマイクを握りしめる。
本映画祭について、「世界のクリエイターの方々の作品が選出されていて、映画によってある種の世界地図が浮かび上がるような印象を持ちました」と言い、「日本で俳優をやっていて、映画を作る仕事をしている中で、常に成長の余地を感じ危機感を持っています。この映画祭であらためてアジア映画に触れることで、自分たちの存在地を見つめ直すこともできる。いま、アジア映画を知ることが大事なのかなと思っています」と、自らも刺激を受けていることを吐露した。
年に何度も日本を訪れるというジョニーは「(今回の来日は)トニーもいて、色々美味しいものを教えてもらいました(笑)」と笑顔を見せながらも、「期間中は美味しいものばかりではなく、素晴らしい映画を発見してアジア映画のために貢献もしたいですね」と意欲を見せた。
普段の映画の観方と、審査員としての観方は違うか?という質問に、ジョニーは「あまり大きな違いはない。いつも先入観を持たずに直感で観るようにしている。すると意外な発見や喜びもあるんです」と語る。キアラは「審査員であることで、映画の作り手への責任が伴う」としながら、「感じ方、感覚としては同じ体験になると思います」と答え、エニェディは、「映画という芸術作品に対して、自分たちの直感と知性を用いて観るのですが、その勘は文化によって育てることができる。さまざまな視点が生まれてくるので、映画の教養や教育はとても大切。ここにいる私たちは、それを持っていると思います」と審査員としての立場で語っていた。
橋本は、「映画を直感的に受け取るところは変わらないと思いますが、いつもの観る感覚とは少し違って、ボーっと観られないです(笑)。少し論理的な視点を持って緊張感を保ったまま15作品を見届けたい。1本1本、大事な記憶を残していきたいです」と気を引き締めていた。
トニーは「私にとって、自分で(楽しんで)観るのと、審査員として映画を観るのは、まったく違いますね」とキッパリ。「小さい頃から今も、1週間に4~5回は映画館で映画を観て楽しんでいます。でも今回は審査委員長として観るわけですから、議論をしなければならない。素晴らしい審査員の皆さんと比べて、私は少し勉強不足かもしれないので、あまり間違ったことは言わないように、一生懸命に観ます(笑)」と意気込んでいた。
◆第37回東京国際映画祭 コンペティション部門作品
『アディオス・アミーゴ』(コロンビア / 監督:イバン・D・ガオナ)
『小さな私』(中国 / 監督:ヤン・リーナー)
『死体を埋めろ』(ブラジル / 監督:マルコ・ドゥトラ)
『士官候補生』(カザフスタン / 監督:アディルハン・イェルジャノフ)
『娘の娘』(台湾 / 監督:ホアン・シー)
『英国人の手紙』(ポルトガル / 監督:セルジオ・グラシアーノ)
『彼のイメージ』(フランス / 監督:ティエリー・ド・ペレッティ)
『雨の中の慾情(日本、台湾 / 監督:片山慎三)
『わが友アンドレ』(中国 / 監督:ドン・ズージェン)
『お父さん』(香港 / 監督:フィリップ・ユン)
『大丈夫と約束して』(スロバキア、チェコ / 監督:カタリナ・グラマトヴァ)
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(日本 / 監督:大九明子)
『敵』(日本 / 監督:吉田大八)
『トラフィック』(ルーマニア、ベルギー、オランダ / 監督:テオドラ・アナ・ミハイ)
『チャオ・イェンの思い』(中国 / 監督:ミディ・ジー)
【第37回東京国際映画祭】
開催期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
公式サイト:www.tiff-jp.net
コピーライト:©2024 TIFF