10月28日より開催される第37回東京国際映画祭に先立ち、9月25日、東京ミッドタウン・BASE Q HALLにて各部門の上映作品発表・審査委員・開催イベントの魅力・見所を発表する記者会見が行われ、フェスティバル・ナビゲーターに就任した菊地凛子ほか、「コンペティション部門」に選ばれた大九明子監督、吉田大八監督、片山慎三監督、「Nippon Cinama Now」部門より入江悠監督らが登壇。また、安藤裕康(東京国際映画祭チェアマン)、市山尚三(プログラミング・ディレクター)、藤津亮太(「アニメーション部門」プログラミング・アドバイザー)、アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ(「ウィメンズ・エンパワーメント部門」シニア・プログラマー)が登場し、それぞれの作品の紹介した。
第37回東京国際映画祭は、10月28日から11月6日の10日間、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて、各劇場及び施設・ホールにて会場が設置され開催。日比谷仲通りにてオープニングのレッドカーペットの開催が予定されており、他にも様々な視点からトークイベントやシンポジウムの企画も多数予定している。映画祭併設のビジネスコンテンツマーケットTIFFCOMは、10月30日から11月1日の3日間の同時期開催される。
会見の冒頭で、東京国際映画祭チェアマン安藤裕康は「東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献する」を目指し、新部門の創設など映画人や映画ファンの交流の場を様々な形で実現させていく。」と宣言し、国際交流、人材育成、女性への視座という3つの柱を理念に掲げた。国際交流として、日本とイタリアが共同製作協定を今年初めて結んだことも発表。未来の映画人材を育てていくためにも、TIFFティーンズ映画教室、アジアの生徒向けマスタークラスほか、様々なプログラムも企画。また、今年は東京都との連携で女性の活躍支援を目的にウィメンズ・エンパワーメント部門を新設し、現在活躍している女性監督たちが語り合うシンポジウムの開催のほか、様々な分野で活躍する女性への視座を設けることを伝えた。
フェスティバル・ナビゲーターに就任した菊地凛子は、本映画祭について「街中にレッドカーペットがあったり、東京というユニークな都市で開催されている特別な映画祭」印象と語り、「私は映画と共に育ってきたので、このような日本を代表する映画祭に携われて光栄です」とナビゲーター就任を喜んだ。また、「映画という言語を通じて、著名な海外の映画人と交流出来るのは凄いこと。多くの人に見ていただいて監督、スタッフ、皆さんと手をつないで映画を届けられるのは素晴らしいことです」と笑顔。
コンペティション部門の審査委員長を務める、俳優のトニー・レオンについては「大先輩ですが、とても気さくな方。映画という共通言語を持ってお話しできることが宝物のようです」とコメント。さらに「映画というのは、主人公と一緒に旅をして、人生を持って帰り、明日も頑張ろうという気持ちになります。私が出演することで、少しでも恩を返していければ」と目を輝かせた。
トニー・レオンからも、メッセージが届き「私は12歳のときから日本映画の名作を観てきました。日本はとても身近な国です。そんな国の映画の祭典に参加できて光栄です。審査委員長を務めるにあたって、この映画祭が驚きに満ちたとても楽しいものになることを期待し、そうなることを確信しています」と語っていた。
続いて、コンペディション作品より片山慎三監督、大九明子監督、吉田大八監督が登場。コンペティション部門には110の国と地域から2023本の応募があり、その中から15本の作品が選ばれ、そのうちワールドプレミアは9本となる。男女共同監督作品含む女性監督の作品は全体の中の35本(19.44%)※同じ監督による作品は作品の本数に関わらず1人としてカウント(昨年度の男女共同監督作品含む女性監督作品は35本(20.59%)。
日本からは片山監督の「雨の中の慾情」、大九監督の「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」、吉田監督の「敵」となった。
片山監督は、2018年に映画祭で上映された『「岬の兄妹」を振り返りながら「そこから他の映画祭に呼ばれたりしたので、とても広がりのある場だと思っています」と映画祭の存在の大きさを実感。本作について「9割がた台湾で撮影したので、街の風景を楽しんでいただけたら」とアピールした。
過去に『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』で観客賞を受賞している大九監督は、「2回いただいているので、まさかと思いましたが、お声がかかって光栄。何か恩返しができれば」と喜び、今作に関して「普段以上に言いたいことを盛りだくさんに入れて、わがままに作ってみました。どの受け取っていただけるか楽しみです」と期待する。
吉田監督は、「六本木でやっていたときは、いい意味で浮ついたお祭りのような印象がありました。楽しかった思い出です」と笑顔で振り返り、今作をモノクロで撮影したことに「主人公のストイックな生活を描くのに、抑制的なモノクロを使うことで表現したかった。初めての試みでしたが、観る側の想像力が掻き立てられて、思っていた以上に豊かになりました。これからもモノクロでどうかな?(笑)」とお気に入りの様子。
また、Nippon Cinema Now部門では監督特集として入江監督の5作品を上映。入江監督は『SRサイタマノラッパー』が上映された2010年当時を振り返り、「(映画祭に)ジャージで登壇しましたね。(今は)スーツを着るようになったなと(笑)」と照れ笑い。インディーズ作品と大作の両方を撮っていることについて、「僕は一貫性がないなと。飽きっぽいんですよね(笑)。大作をやると、次はこぢんまりとした作品をやりたくなるんです」と理由を述べていた。
第37回東京国際映画祭 主なラインナップ
◆オープニング:『十一人の賊軍』白石和彌監督/日本
◆クロージング:『マルチェロ・ミオ』クリストフ・オノレ監督/フランス・イタリア
◆コンペティション部門出品作品
『アディオス・アミーゴ』イバン・D・ガオナ監督/コロンビア
『小さな私』ヤン・リーナ―監督/中国
『死体を埋めろ』マルコ・ドゥトラ監督/ブラジル
『士官候補生』アディルハン・イェルジャノフ監督/カザフスタン
『娘の娘』ホアン・シー監督/台湾
『英国人の手紙』セルジオ・グラシアーノ監督/ポルトガル
『彼のイメージ』ティエリー・ド・ペレッティ監督/フランス
『雨の中の慾情』片山慎三監督/日本/台湾
『わが友アンドレ』ドン・ズージェン監督/中国
『お父さん』フィリップ・ユン監督/香港
『大丈夫と約束して』カタリナ・グラマトヴァ監督/スロバキア・チェコ
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』大九明子監督/日本
『敵』吉田大八監督/日本
『トラフィック』テオドラ・アナ・ミハイ監督/ルーマニア/ベルギー・オランダ
『チャオ・イェンの思い』ミディ・ジー監督/中国
<第37回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
■公式サイト:https://2024.tiff-jp.net/ja/