Open Close

【2021年第34回東京国際映画祭】 今年もコロナに負けず【TIFFトークサロン】と合わせて注目のアジア映画紹介【前編】「リンボ」

映画祭といえば、世界各地の最新の映画や日本でなかなか観ることができない映画を観る貴重なチャンス。そして、その映画にかかわった海外からのゲストを目の前にして、その姿を見て生の声を聞くことができるのが、映画ファンの最大の楽しみ…なのですが、昨年に続き、今年もコロナ禍のために海外からのゲストを望むべくもありませんでした。

そこで昨年から用意されたのが、ネットを通じて【Q&A】を行う【TIFFトークサロン】。
映画の上映とは別の時間に、オンラインでのトークコーナーにゲストが登場、Q&Aを実施。ライブ中にゲストへ質問を寄せることができます。またその模様はYouTube チャンネルで、いつでも見ることができます。

というわけで、ここでは今年の東京国際映画祭の上映作の中からAstageアジア担当が注目した作品で、TIFFトークサロンでの話を聞いて、さらに面白さが深まったアジア映画を2本ご紹介します。

映画祭で映画は見たけれど、【TIFFトークサロン】は見ていないという方はもちろん、今回の映画祭では見逃してしまったけれど…という方も、動画配信サービスで海外映画を視聴する機会が増えた昨今なので、今後、作品を見る機会もあるのではないかと思います。
記事から興味を持たれたら、映画の鑑賞後には是非TIFFトークサロンもご覧になっていただければと思います。

取り上げる映画は
まず「ガラ・セレクション」から、ソイ・チェン(監督)「リンボ」。

そして、後編として別ページで「アジアの未来」から「アメリカン・ガール」をご紹介します

Poster_Limbo

『リンボ』(原題:Limbo智齒)
監督 ソイ・チェン(鄭保瑞)
出演 ラム・ガートン(林家棟) 池内博之 リウ・ヤースー(劉雅瑟) メイソン・リー(李淳領) 他

物語は…
香港のスラム街で起こる猟奇的な連続殺人事件を追う刑事をラム・ガートンが演じます。白黒で描き出されたスラム街が、緊迫感と恐怖を倍増。始まりから終わりまでハラハラしっぱなし。そしてラストはグッとくる、味わい深き1本。ベルリン映画祭で上映された作品です。

Director_Limbo

本作の上映を聞いて、まず注目したのはソイ・チェン(鄭保瑞)監督。
ソイ監督といえば、ビッグスターが続々出演するファンタジー&アクションの「西遊記」シリーズや、超絶アクションがさく裂する「ドラゴン×マッハ」(原題:殺破狼2)が思い出されます。そしてジョニー・トーが製作した「モーターウェイ」(原題:車手 2015年)で香港金像奨最優秀監督賞を受賞したことです。
かつてはホラー映画も撮っていて、ハラハラドキドキさせることにかけては名うての監督とあって、期待を膨らませて劇場へ。

平日昼間の上演でしたが、コロナ禍とは思えない盛況ぶり。その人気に違わず、最初から最後までスリリングで迫力満点。しかも白黒の映像が、本当にスタイリッシュ!香港映画の血統を感じて興奮しました。ぜひとも日本でも劇場公開をお願いしたい1本です。

Sub2_Limbo

主演のラム・ガートン(林家棟)は、1967年生まれの54歳。1989年にデビューし、エキストラを経て90年時代から香港映画やドラマで活躍する俳優です。2000年頃にTVBを離れた後はアンディ・ラウ(劉徳華)の会社に所属していたので、アンディ主演映画の脇役としてたくさん出演していた印象がありますが、2012年に独立し、2013年には『寒戦』で香港金像奨最優秀助演男優賞を受賞、2017年には『樹大招風』で最優秀主演男優賞を受賞し、押しも押されぬスター俳優となりました。
ラム・ガートンは、この作品のためにソイ監督からダイエットを求められたそうですが、かっこいいだけじゃなく、人柄のにじみ出るような風貌で登場。スターの風格も漂わせています。

Sub1_Limbo

そして、激しいアクションに耐え抜いた若い女性役のリウ・ヤースー(劉雅瑟)もご紹介しておきたい一人。男3人女1人のヒップホップグループから女優へ転身したとのことですが、2019年の東京国際映画祭で上演されたアーロン・クォック(郭富城)主演「ファストフード店の住人たち」では借金を必死に返す健気な母を演じていました。今回は、とても同一人物とは思えないほど違ったイメージの役柄を体当たりで演じています。

題名となっているリンボ(親知らず)が、ずっと痛んでいた刑事を演じていたメイソン・リー(李淳)は、なんと、あのアン・リー(李安)監督の次男。まだ出演作は多くないようですが、今後も注目していきたいと思います。

【TIFFトークサロン】に登場してくれたのは、ソイ・チェン監督。
「中国のネット小説が原作で、当初は中国での制作を考えていていたがうまくいかず、物語の舞台も制作チームも香港に移して制作に3~4年かかりました」と苦労の作品であることを明かしてくれました。

また、池内博之が演じる日本人の役は、原作では中国の地方都市からやってきたよそ者だったとのこと。
なぜこの役を日本人にしたのか、なぜ彼を起用したか、さらにはなぜ白黒にしたか…についはYouTube チャンネルでご覧ください。「そうだったのか!」の連続ですよ。