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1/21(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開『東京ウィンドオーケストラ』 坂下雄一郎監督 インタビュー

「力のある監督が撮りたい映画を自由に撮る」「新しい俳優を発掘する」をテーマに立ち上げ、第1弾の沖田修一監督『滝を見にいく』(14)、第2弾の橋口亮輔監督『恋人たち』(15)と素晴らしいヒット作を生み出してきた、松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画製作プロジェクト。
その第3弾となる坂下雄一郎監督の『東京ウィンドオーケストラ』が、ついに公開となる。

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本作の舞台は世界遺産・屋久島。
有名オーケストラと間違われて島にコンサートにやってきた市民サークルの吹奏楽団の10名と、彼らを“本物”として押し通そうとする島の女性職員が巻き起こす、笑いと感動のハート・ウォーミング・コメディ…なのだが、「そのミス、どうオチをつけるの?!」と、映画を見ている間中、ハラハラ・ドキドキがとまらない。登場人物たちも個性的だけど、身近にいそうな人たちばかり。つい画面に向かってダメ出したくなる。いつ自分の身にふりかかるともかぎらない、そんなサスペンス・ストーリーとしても楽しい作品だ。
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本作の脚本も手がけた坂下雄一郎監督は、東京藝術大学大学院在学中に撮った『神奈川芸術大学映像学科研究室』(13)がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013審査員特別賞を受賞。2014台北電影節正式招待作品となる等、国内外で高く評価されてきた。
本作が商業映画デビュー作だが、すでに次回作の映画『エキストランド』( 出演:吉沢悠/戸次重幸/前野朋哉 他)も撮影を終え、年内の公開を控えている。
まさに今、大注目の新進映画監督なのだ。

―「東京ウィンドオーケストラ」についてお伺いする前に、坂下監督ご自身についてお伺いさせて下さい。映画の道を志されたのは、いつ頃、どんなきっかけがあったのでしょうか?
かなり…なりゆきでなってしまった感じがあります。

―えっ?! そうなのですか?勝手に熱血映画青年を想像していました。
高校生の頃には、普通の映画好き程度でした。

―例えばこの作品が好き、監督が好きというのはあったのですか?
あまり記憶にはないのですが、近所にレンタルショップができて、5本で幾らみたいなセット料金で、借りては返すを繰り返して映画を見ていました。

―好きでたくさんの映画をご覧になったのですね。
はい。それで「ちょっと、入ってみようかな」くらいの気持ちで大阪芸大に入った。それがこの道に進んだ一番大きな原因ですね。
ただ…大学時代にも作品を撮り、撮ると映画祭などに出品したのですが、僕はひっかかることもなくて…。入選はしても賞はもらえないくらいでした。そのうち時期が来ても友人たちは誰も就活をしないので「自分もやらなくていいのかな」と思っていたら、当然のことながら就職先がなかった。(笑) でも卒業する時に、大阪芸大で働くことになり、映像学科の事務や先生方のアシスタントとして2年ほど働いたのです。それも期限がある仕事で、辞めなきゃいけない時期がきた。「さて、どうしよう?」となった時に「せっかくだから東京へ行ってみたい」「何もなく東京へ行くのは怖い」と思っていたら、東京芸術大学大学院というところがあるのを見つけたのです。しかも「国立だから学費が私立の半分だ!」「大学院なら東京へ行く理由になるな」「働いていて貯めたお金もある」ということで受験をして合格、東京芸大の大学院に進学しました。
そして大学院の卒業制作で撮った作品が映画祭で賞を頂いて、受賞特典のようなかたちで劇場公開をして頂いた。その上映が終わった頃に、本作で声をかけて頂いた…という経緯です。

―あまりに淡々と語られるので、驚いています。
もちろん映画をやっていきたいとは思っていたのですが、まわりが若くして「ぴあフィルムフェスティバル」などで賞をとっていたのに、自分は上手くいかなかった。「どうしようかな…」と思っている時に、大学の掲示板で職員募集を見つけ「とりあえず働いておこうか」と大阪芸大で働いていたんです。

―では、やはりゆっくりとだけれども、志を捨てずに歩んで来られたんですね。
そうですね、どっちかといえば、辞めるタイミングを逃してきたんですけど。

―監督の口調が面白過ぎます!(笑) でも、ついに大学院で才能が花開いた…というわけですね。
だといいんですけど…。

―もっと強くうなずいて下さい!!(笑)
『エキストランド』と、もう1本もすでに撮影を終えていて、自分としては「かなり撮ったな」と感じていたのですが、よく考えたら、まだ1本も公開されていないので…。他の作品も年末には公開するだろうと思うので、今年が大事な年だなと思っています。

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―本当に作品が目白押しですね。楽しみです! では『東京ウィンドオーケストラ』の話をお願いします。いつ頃から準備されたのでしょうか?
お話を頂いたのが、2014年の春。ワークショップという形のオーディションが、2015年の春。そしてその夏に撮影して、今の公開になりました。ワークショップ頃までは、ずっと企画してシナリオを書いていました。

―企画や脚本への条件というのはあったのでしょうか?
いえ、何もなかったです。ただ、一部キャストをのぞいて、ワークショップを通じてキャスティングするので「登場人物は多めがいいだろう」くらいの話はありました。それで10人の楽団にしました。キャストが決まってから、ほぼできあがっていた脚本をそのキャストに合わせて少し手直しして、夏の撮影に入りました。

―撮影中、ご苦労されたことは?
屋久島が梅雨の時期で、2週間余りのロケ期間のうち12日間は雨でした。雨が止んだ時にスケジュールを変更して撮影しに行ったり…、苦労しましたね。

―坂下監督が本作で「面白い」と思っているところ、注目してもらいたい点を教えて下さい。
オーケストラの10人を基本的にはバラバラにはしないように決めていました。この10人が1つの生き物のようにできればいいなぁと思っていましたので、その雰囲気を少しは出すことができたかな…と思っています。
ただ10人一緒に撮るのは難しいかったですね。10人対1人の会話が多いのですが、引きすぎて撮ると誰が喋っているか、わからない。近付きすぎだと、どこで喋っているのか、わからない。女性職員役の中西美帆さんの視線も考えてのカット割りや立ち位置などが難しかったですね。シナリオ書くときには、そこまで考えて書かなかったので。

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―それはいつ気が付かれたのですか?
撮影の前夜にカメラマンと翌日撮影分のカット割りを決める時です。なかなか決まらなくて、連日連夜、何時間もやることになりましたね。夜は撮影がなかったのですが、僕とカメラマンだけは毎日2時間ぐらいしか眠れなかった。後半は撮影が終わると一旦寝て、午前3時頃に起きてカット割りをしました。

―そんなご苦労があったのですね。
いえ、撮影とはそんなものかと思っていたので、苦労とは思わなかったです。それまでにやってきたことや経験が、助けになっているなと思いました。そして、新たなプロのスタッフさんもいましたが、昔からのスタッフやワークショップで知り合った方も手伝って下さって、やりやすい環境でできて有難かったと思っています。

―では最後に、坂下監督から映画「東京ウィンドオーケストラ」をオススメして頂きたいのですが・・・。
たわいもない話なのですが、そうした映画が必要な時もあると思います。本当に気軽に見て頂けたら有難いです。楽しんで下さい。
やっと見て頂ける…。僕の映画を見て頂けるというのは、本当に嬉しいです!

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取材の終盤に「もしかして、今後僕が売れたら、その1作目を見たことになるので、(是非本作を見て)自慢してもらいたい(笑)」と、やっと大きな笑顔を見せてくれた坂下監督。
大学時代は賞に恵まれることはなかったというけれど、今、着実に夢を叶えていく姿は、多くの若者の希望になるはず。
映画『東京ウィンドオーケストラ』のヒットと、坂下監督のご活躍に期待しています!

『東京ウィンドオーケストラ』
■2017年1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
出演:中西美帆(第1回主演作品) 小市慢太郎
松木大輔  星野恵亮  遠藤隆太  及川莉乃  水野小論  嘉瀬興一郎
川瀬絵梨  近藤フク  松本行央  青柳信孝  武田祐一  稲葉年哉
監督・脚本:坂下雄一郎(劇場用映画デビュー作品)

製作:松竹ブロードキャスティング 制作プロダクション:ドラゴンフライエンタテインメント
配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
©松竹ブロードキャスティング 日本/2016/ビスタ/75分/ステレオ