日本を代表するミステリー人気作家・東野圭吾が1992年に発表した長編小説『ある閉ざされた雪の山荘で』を実写映画化。本作は登場人物が全員役者、新作舞台のオーディションの最終選考を“大雪で外部との接触が断たれた山荘”という架空の密室空間で行い、主役の座をかけて闘う彼らの姿を描き出す。
トリックや人物描写の複雑さから不可能と長年思われており、東野自身も映画の仕上がりに不安を抱いていたそうだが、試写での鑑賞後「全く杞憂でした」と、映画の完成度の高さを絶賛。物語の中でオーディションに参加する俳優7人の中の1人として出演した西野七瀬と堀田真由。とても波長が合うのか、二人の間には常に穏やかな空気が流れる。そんな彼女たちに撮影を振り返りながら、本作への思いを語ってもらった。
― 今回は、俳優の皆さんが俳優を演じますが、そのために特に意識したことや準備したなどありましたか?
堀田真由(以下、堀田):どちらかというと俳優の仕事をしているからこそ、俳優役を演じるのは少し抵抗があって、難しいと思いました。どういう感覚でいたらいいのかというのもありましたし。でも、東野さんの小説のキャラクターは、明確に輪郭がはっきりしているので、そのまま(役を)落とし込めばできるかもしれないと思ったら途中から楽しさも出てきました。ただ、私が演じた温子は挑戦的な役でしたけれど(笑)。
― どのあたりから楽しいと思えるようになったのですか?
堀田:本(台本)読みの時から、けっこう役を詰めながら進めていきました。二重三重のトリックになっているので細かい打ち合わせをして、後ろから見たときに気付けるように目配せをするとか、この言葉はこういう意味があるとか、全部を把握した上で現場に臨めたので役作りをするタイミングで、これは面白いかも!と。
西野七瀬(以下、西野):私は、劇団員の役ですが実際に舞台に立って何かを演じるシーンはないので、それほど役者ということを意識していなかったかも。トリックがたくさんあるので、色々考えているうちに分からなくなってきちゃって (笑)。これを知っているのはこの人とこの人で・・・というように整理して、やっと「あぁ、そういうことか・・・」と納得しながら進めていきました(笑)。
― 誰が演技をしているのか?と考えながら観ているとドキドキします。お二人は日常生活の中で、人の嘘を見極めることは得意ですか?それとも苦手ですか?
西野:見破れているかどうかを判定できないのですが、嘘っぽいなと思ってしまうときはあるかも。声だけで心はこもっていなさそう・・・と思う人はたまにいらっしゃいますね。ちょっと怖く感じることもあるけど、今のところ何もなく終わっています(笑)。
堀田:ちょっとわかるかも。声がおかしいとか、表情が全然変わらなかったりしますよね。
西野:逆に、この人は本当に(自分のことを)思って言ってくれているんだと伝わってくることのほうが多いかもしれません。嘘だったら、こんなに言ってくれないだろうと思うので。
堀田:嘘と言っても種類がたくさんあるじゃないですか。自分にとって得になる嘘をつく人もいれば、相手に対しての優しい嘘もある。なので、気遣いの優しい嘘は、受け取るほうは嬉しいことなので、気づいても気づかないふりをしたり・・・。
私は相手のことを思って「これは言わない方がいいかな」と考えてしまうほうなので、一概に“嘘”がいいのか悪いのかは判断できないですね。
― ワンシチュエーションの撮影ということもあり、共演者の方たちとずっと一緒にいらっしゃったと思いますが、撮影はいかがでしたか?
西野&堀田:楽しかったです!!
― 互いに胸に一物を持っている役どころのお二人ですが、普段仲が良いゆえに切り替えて演じることの難しさはなかったですか?
西野:私の役はあまり表面的に感情を出さないので、それほど難しいと感じることはなかったです。たぶん真由ちゃんや(中条)あやみちゃんのほうが激しいので大変だったと思います。
堀田:そうでした(笑)。2人の言い合いのシーンで後半はアドリブだったので大変でしたね。控室でずっとお喋りしていて、みんなでクイズをやったりしている途中に(出番で)呼ばれて、集中して演技して。“カット!”がかかると「あのクイズは何だったろう」って(笑)。仲がいいからこそ、切替えが上手くできる関係性だったのかもしれません。よく知っているから、どんなものが来ても受け止められる気がしました。
― 特に現場のムードメーカーはどなたでしたか?
西野&堀田:(声を揃えて)重岡さん!(笑)
西野:朝からずっとあのテンションで変わらないんです。ずっと高いテンションで毎日のように(岡山)天音くんに絡んでいました(笑)。みんなでカードゲームで遊ぶこともありましたが、男子と女子と分かれて話をしていることも多かったです。
― 皆さんが打ち解けるきっかけは何だったのでしょうか?
堀田:共演経験が少しずつあったので、知らないうちにフワっとまとまっていった感じでした。実は、劇中で温子と由梨江が使っている部屋が私たちの控室だったんです。ベッドには“寝ないでください”って張り紙があったのに、いつの間にか誰かが昼寝したりしていました(笑)。テレビもあったので、みんなで朝のニュースを見て、呼ばれたら撮影に行く・・・みたいな。一緒に住んでいるような感じで、控室が一緒だったというのも良かったと思います。
― 重岡さんがムードメーカーだったそうですが、皆さんを引っ張っていたのはどなたでしたか?
西野&堀田:う~ん、特にいないかも(笑)。
西野:引っ張っていたのとは違いますが、私は戸塚さんが面白くてツボでした。みんなに色々イジられていました。
堀田:戸塚さんは優しいので、みんなのイジリを優しく受け止めてくれていました(笑)。
― 飯塚監督からの演出で印象に残っていることはありますか?
堀田:私は以前『虹色デイズ』(2018年)という作品で、飯塚監督とご一緒しましたが、今回は『虹色デイズ』の時とは逆のキャラクターでした。挑戦的な役を託してくだって嬉しく思います。飯塚監督は、リハーサルをきっちりやるという印象があって、以前もクランクインする前からみんなで集まって本読みをたくさん重ねました。準備時間を取るので、ちょっと舞台っぽい感じもしましたし、しっかり人間関係を作ってから始めて、その空気感を大事にされる方。今回もクランクインする前から色々お話しながら役を作っていきました。アドリブが多いというのも、任せられている感じがして、現場はもうアドリブ合戦という感じでした(笑)。あやみちゃんと対峙するシーンでは、(台本の)セリフは短かったのですが、その後の掛け合いになっても監督が“カット!”をかけないので、そのまま続けなくてはいけなくて。その様子を見ている周り人(キャスト)もいるので、けっこう大変に感じましたね。
西野:私はあまり喋らない役なので、表情や視線に関して「ここは、由梨江的にはこう思っているから」とアドバイスをくださいました。
― もし、お二人が由梨江や温子のように密室で同じ状況に置かれて、1人ずつ消えていくシチュエーションに陥ったら、どのような行動に出ると思いますか?
堀田:部屋から出ないです。ドアをノックされても出ないです(笑)。殺されたくないから、サバイバルには参加しません(笑)。
西野:私は、とりあえず絶対にこの人は“白”と言う人を1人だけ見つけて、ずっと一緒にいます。アリバイのためにも一緒にいます。そういう方法で身を守りたいですね。もう1人いれば話し合って推理することもできるので。
― これまでも共演経験があるお二人ですが、今回の共演で何か新しい発見などありましたか?
西野:真由ちゃんは以前から柔らかい雰囲気があって、そういうところは今回も変わらなかったのですが、やはりお芝居が印象的でした。“温子、いいなぁ”って思っていたので、そのお芝居を近くで見ることができて嬉しかったです。
堀田:普段からお話しさせていただいていても、とても落ち着く空気感があって凄く好き、自分らしくいられるんです。なぁちゃんがとても柔らかい雰囲気を持たれているので、とても穏やかな気持ちになれる。温子は凄く勝気でワガママな役柄でしたが、カット!がかかると、一緒にお話しして(自分に戻る)切り替えができていた気がします。
― 確かに、お二人はちょっと似た雰囲気をお持ちですね。
西野:分類すると一緒かもね(笑)。
堀田:ジャンルがね。燃焼感が一緒かも(笑)。
― それでは、お話できる範囲で本作の見どころや注目ポイントをお聞かせください。
西野:初号試写で観た時に内容も知っていて仕組みも分かっているはずなのに、物語に入り込んでしまって、観客の皆さんと同じような感覚になっていました。1度観て、もう1度観るとまた違う発見があって面白いと思います。
堀田:最後まで誰が犯人なのか、これがオーディションなのか、事件なのか、本当に分からない。私も本を読んでいたので知っているはずなのに、凄く楽しめました。トリックが二重三重になっていて、余計に分からなくなってくる。あと、エンドロールが面白いです。その後の続きの映像がエンドロールでも流れて。ずっと演技が続いていて、物語を最後の最後まで楽しめるので凄く好きです。
【西野七瀬(Nanase Nishino)】
1994年5月25日生まれ、大阪府出身。2011年、乃木坂46の第1期生オーディションに合格しデビュー。2018年12月にグループを卒業。2017年に『あさひなぐ』(英勉監督)で映画初出演で主演を務める。主な出演作にドラマ「あなたの番です」(19/NTV)、「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(20/CX)、「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」(21/NTV)、「ケンシロウによろしく」(DMM TV)、「ポケットに冒険をつめこんで」(TX)など。映画『孤狼の血 LEVEL2』(21/白石和彌監督) では日本アカデミー賞優秀助演女優賞、新人俳優賞を受賞し、他にも『恋は光』(22/小林啓一監督) 、『シン・仮面ライダー』(23/庵野秀明監督)などに出演。2024年はドラマ『大奥』(CX)、映画『52ヘルツのクジラたち』(成島出監督)に出演するなど、話題作が控えている。
【堀田真由(Mayu Hotta)】
1998年4月2日生まれ、滋賀県出身。2014年に「アミューズオーディションフェス2014」でWOWOWドラマ賞を受賞。翌年にドラマ「テミスの求刑」(15/WOWOW)で俳優デビュー。2017年にNHK連続テレビ小説「わろてんか」に出演し、2020年からファッション誌「non-no」の専属モデルを務め、結婚情報誌「ゼクシィ」CMにも出演。主な出演作にNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22)、NHKドラマ10「大奥」(23/NHK)ドラマ「風間公親-教場0-」(23/CX)のほか、映画では『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(19/河合勇人監督)、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(21/大友啓史監督)、『ハニーレモンソーダ』(21/神徳幸治監督)、『禁じられた遊び』(23/中田英雄監督)など。『バカ塗りの娘』(23/鶴岡慧子監督)では映画主演、ドラマ「たとえあなたを忘れても」(23/ABC)で地上波連続ドラマ初主演を務めた。
映画『ある閉ざされた雪の山荘で』
<物語>
劇団に所属する役者7人に届いた、4日間の合宿で行われる最終オーディションへの招待状。
新作舞台の主演を争う最終選考で彼らが“演じる”シナリオは、【大雪で閉ざされた山荘】という架空のシチュエーションで起こる連続殺人事件。
出口のない密室で一人、また一人と消えていくメンバーたち。
果たしてこれは、フィクションか? それとも本当の連続殺人か?彼らを待ち受ける衝撃の結末とは――
重岡大毅
中条あやみ 岡山天音 西野七瀬
堀田真由 戸塚純貴 森川葵
間宮祥太朗
原作 東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」(講談社文庫)
監督 飯塚健
脚本 加藤良太 飯塚健
音楽 海田庄吾
製作幹事・配給 ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション ファインエンターテイメント
©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社
公式サイト https://happinet-phantom.com/tozayuki/
X/Instagram/TikTok @tozayuki_movie
#ある閉ざされた雪の山荘で
#閉ざ雪
#事件が始まる
1月12日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
◆スタッフクレジット
<西野七瀬>
ヘアメイク : 猪股真衣子(TRON)
スタイリスト:森田晃嘉(MiNTSS)
<堀田真由>
ヘアメイク :河嶋希(io)
スタイリスト:辻村真理
撮影:松林満美