映画『Vision』の完成報告会見が、4月26日、ホテル雅叙園東京にて行われ、主演の永瀬正敏をはじめ、共演の夏木マリ、岩田剛典、美波と、河瀬直美監督、本作のテーマ曲を担当した小曽根真氏が出席した。
世界中で高い評価を受ける河瀨監督が、生まれ故郷の奈良県を舞台に制作した本作は、幻の薬草“Vision”を探すフランスの女性エッセイスト・ジャンヌが、吉野の山奥で出会った山守・智と大自然の中で心を通わせていく様を描く。ジャンヌ役をフランスの名女優ジュリエット・ビノシュ、智役を永瀬がW主演で演じた。
今作で劇映画10本目となった河瀬監督は「この時代にこの映画を誕生させたことを誇りに思っています」と目を輝かせ、「吉野の方々のサポートがあったからこそできた作品です」とロケ地となった吉野の地元の方々に感謝の気持ちを伝える。また、本作の企画のきっかけについて問われると「森をテーマにもう一度(作品を)描きたいと思っていました。吉野の植林の担い手がいない現状に、人間の肝となるところがあると感じたんです」と、作品企画への思いを吐露。
『あん』『光』に続いて河瀬作品に参加した永瀬は「昨日完成作品を観ました。毎回河瀬さんとご一緒すると、作品を観たあとすぐには立ち上がれなくなったり樹木希林さんを抱きしめたりするんですが、今回は家に帰ってから震えてきてしまって。結局寝れずに徹夜でここに来ました」と明かし、「毎回、新しい体験をさせてくださる」と、河瀬監督への信頼をのぞかせる。
さらに、河瀬監督の独特な作品へのアプローチを“河瀬メゾット”と表し、「撮影が始まる2週間前から可愛い犬(劇中の登場する“コウ”)と山で暮らしていました。役作りというか、智として血液や心を入れ替える作業を丁寧にやらせていただき、山守の人たちのお話を聞いたり、チェーンソーの講義なども受けさせてもらいました」と振り返る。智の目の前に突然現れる山守・鈴役を演じた岩田について「岩田くんは特殊伐採の講義も受けていましたね。大きな木の高いところまでするするって登って。2日間でやれちゃったんですよ。カッコいい!」と称える場面も。為替監督も「芸能人やめたら、山守やったら?」と声をかけると、すかさず岩田は「いやいや、めちゃくちゃ筋肉痛になりましたよ」と苦笑い。
今回、河瀬組初参加となった岩田も「“河瀬メゾット”の洗礼をたくさん受けました。演じるというより、そこに生きて暮らすということ。クランクインする1カ月前から森に住んでくれと言われていたんですが、ツアー中だったので物理的に難しかった。でも、劇中に登場する納屋に少し住ませていただいて、起きると顔にカメムシが3匹付いていて…。虫と共存していましたね(笑)。ところが、早々に風邪を引いてしまい、少し下山したところの民宿をお借りしました」と告白。永瀬が暮らす家の風呂がかまど式だったことから、岩田は「あのお風呂、ホント怖かった。一瞬でシャワーして、すぐ部屋に戻りましたから」と刺激的な生活を体験したようだ。また「衣装合わせのときに、夏木さんや美波さんが近くにいらっしゃったんですが、(劇中では夏木と美波とは会うことはないので)監督から挨拶も目を合わせることもしてはいけないと言われました。昨日始めてご挨拶させていただいたんです(笑)。初対面シーンを新鮮な状態で撮るため、永瀬さんとの接触も撮影前まで禁じられました」と、その徹底した環境作りに驚いていた。
撮影が終わっても顔つきが変わっていたらしく「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEのメンバーから『本当に森の人になってるよ!』『大丈夫?』って言われました(笑)」と笑った。
自然と共存しながら森で暮らす女・アキ役の夏木も、河瀬メゾット初体験。「生きて暮らしている間にドキュメンタリーのカメラが入ってきている感覚。(劇中の出てくる)よもぎ団子も全部手作り。よもぎを摘んでくるところからあんこ作りまで全て。私、今よもぎ団子のプロになれます!」と話し、「1000年生きる人物ということなので、2週間iPhoneも取り上げられまして。SNSはお休みで、商売上がったりでしたよ」と言って会場の笑いを誘う。続けて「2週間おかゆを食べてすっかりダイエットもでき、他ではできない経験をさせていただきました(笑)」と、楽しそうに撮影を振り返っていた。
会見のラストには、スペシャルゲストとして本作の音楽を担当したジャズピアニスト・小曽根真氏が登場。テーマ曲をアレンジを加えて生演奏を披露し、会見に華を添えていた。
映画『Vision』
【STORY】
夏、緑が青々と茂る奈良の神秘的な森。紀行文を執筆しているフランスの女性エッセイスト・ジャンヌは、通訳兼アシスタントの花とやってきた。彼女は、薬草の一種で幻の植物“Vision ”を探している。旅の途中、森で暮らし、森を知り尽くす山守の無口な男・智と出会うが、智も「聞いたことがない」という。やがて、言葉や文化の壁を越えて、心を通わせていく2人。季節は流れ、森が赤く色づく秋。智のもとに、山守の若者・鈴が姿を見せ、運命の歯車が動き出す……。ジャンヌがこの地を訪れた本当の理由とは何か?山とともに生きる智が見た未来(ビジョン)とは?
出演:ジュリエット・ビノシュ 永瀬正敏 岩田剛典 美波 森山未來 田中泯(特別出演)・夏木マリ
監督・脚本:河瀨直美
企画協力:小竹正人
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
プロデューサー:マリアン・スロット 宮崎聡 河瀨直美
配給:LDH PICTURES
公式サイト:http://vision-movie.jp/
※河瀬監督の「瀬」は旧字体の「瀨」が正式
6月8日(金)全国ロードショー