映画『Vision』の公開記念舞台挨拶が、6月9日、東京・新宿ピカデリーにて行われ、W主演のジュリエット・ビノシュと永瀬正敏、共演の夏木マリ、岩田剛典、美波と河瀨直美監督が登壇した。
河瀨監督の生まれ故郷の奈良県を舞台に制作した本作は、フランスの女性エッセイスト・ジャンヌが、吉野の山奥で出会った山守・智と出会い、山守り森で生活する人々と関わりながら幻の薬草“Vision”を探していく様を描く。ジャンヌ役をフランスの名女優ジュリエット・ビノシュ、智役を永瀬正敏がW主演で務め、山深い森と共に生き鋭い感覚を持つ老女・アキ役を夏木、智と生活を共にすることになる謎の青年・鈴役を岩田、ジャンヌの通訳兼アシスタントの花役を美波が演じる。
大きな拍手で迎えられたビノシュが「こんにちは、皆さん愛してます」と日本語で挨拶すると、他の日本人キャストたちは揃って「ボンジュール!」と挨拶し、会場は和やかな雰囲気に。
河瀨監督は、映画の冒頭でジャンヌが電車に乗って吉野にやってくる場面について言及し、「シナリオにはジュリエットが泣くとは書いてなかったのに、彼女が涙を流したんです。その意味をみんなで共有できて心が震えました」とコメント。
一方のビノシュは、「いつも日本に来ると、東京や大阪などの都会を訪れることが多かったのですが、今回は吉野の山深い森に招待され、とても大切なものをシェアすることができました。河瀨監督は詩人」とニッコリ。「私はいつもシェアするということを大切にしています。誰とシェアするのかということも大切。流した涙は“幸せ”から流れた涙だったと思います」と続け、本作への出演に充実感をのぞかせた。
撮影期間中に、ビノシュと永瀬が森でデートしたことを明かした河瀨監督。永瀬は「一緒に森を歩いてみたりしたんですが、彼女がずっと『本当に美しい』とおっしゃっていて、その姿がジャンヌとリンクしていました」と振り返った。それを受けビノシュは「空気、風、色彩、光に小さなディティールを感じました。生きているなと感じ、自分と向き合うことで心が穏やかになりました」と話す。
また、本作で英語のセリフに挑戦することとなった岩田は「(台本を見て)どうしようかと思いました(笑)」と明かしつつ、「すべてがアドリブのような感じ。日常生活を切り取るように撮影しました」と吐露。ビノシュとの共演シーンについて「包み込む母のような存在に助けられました。目と目が合うだけでわかりあえるような。微妙な表情の違いが(観ている人に)伝わると思います」と語ると、ビノシュから「最初から『なんだかこの人知ってる、また会えたな』という気持ちでした。日本に息子がいるとは思ってもいませんでしたが(笑)」。岩田も「僕も、フランスのお母さんだと思っています」と嬉しそうにほほ笑んだ。
そんな二人を微笑ましく見つめていた河瀨監督は、現在、岩田がドラマ「崖っぷちホテル!」に出演中ということで「ドラマとは全く違う岩田くんが見られますので、ドラマを観ている方は、劇場にも足を運んでいただければ」とアピール。すかさず岩田も「同じくそう思います」と照れ笑いした。
夏木は念願のビノシュとの再会を喜び、「現場では私語厳禁でしたので、再会して初めてご挨拶しました(笑)」と笑顔を見せ、「彼女が以前『絵を描くことも、演技も動くことから始まる』と話されていて、そのことを徹底的にお話したい」と意気揚々。ビノシュの通訳としても活躍した美波は「彼女は想像を超えて、深く日本のことを知ろうとしていて、徹底的に勉強されていました。日本人の私のほうが恥ずかしく思うくらい・・・」とビノシュの作品への姿勢に感服していた。
イベントの終盤には、永瀬からビノシュへ「Vision」と書かれ森をイメージしたグリーン色の特製和傘をサプライズでプレゼントする場面も。大喜びのビノシュは登壇者たち一人一人とハグ。「こんな大切な和傘を・・・。パリの街で差す裕樹があるかわからないけど、やってみようかしら(笑)」とお茶目に笑った。
最後にビノシュから「誰もが自分の中にある暗闇や影を明るくしたいいと思っている。そのためには自分と向き合わないといけない。また成長できる1つの神話のような『Vision』はその可能性のシンボルではないでしょうか」と観客に語りかける。河瀨監督は「以前、カンヌ国際映画祭でビノシュが『映画は光だ』と言った言葉がとても印象的だった。光がなければ私たちは存在することもない。その原点に返って10作目の本作を作りました」と作品への熱い思いを伝え、舞台挨拶を終了した。
ジュリエット・ビノシュ 永瀬正敏 岩田剛典 美波 森山未來 コウ 白川和子 ジジ・ぶぅ 田中泯(特別出演) ・ 夏木マリ
監督・脚本 河瀨直美
製作:LDH JAPAN SLOT MACHINE 組画
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
プロデューサー:宮崎聡 Marianne Slot 河瀨直美
撮影:百々新 / 照明:太田康裕 / 録音:Roman Dymny 森英司 / 美術:塩川節子
編集:Francois Gedigier 渋谷陽一 / 音楽:小曽根真
企画協力:小竹正人
制作プロダクション:組画
配給:LDH PICTURES
【2018年/日仏/110分/シネマスコープ】
©2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.
公式サイト:http://vision-movie.jp/
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