3作品を通して感じる三橋とチームメイトの成長
そして選手ひとりひとりの心情にも注目してください
ーー2018年にスタートした舞台『おおきく振りかぶって』はこれまでに3作品を上演。そのすべてで西銘駿さんは主人公である西浦高校野球部のエース・三橋廉を演じています。まずはこれまでの3作品を振り返っていただき、その印象をお聞かせください。
「このシリーズは僕にとって初めての主演舞台でした。人気コミックが原作ということもあり、1作目のときはすごく不安で、みんなで“これでいいのかな?”と探り探り作っていたところがあったんです。でも回を重ねるごとに、どんどんとみんなの意識も変わっていって。その姿が、劇中で描かれている新設野球部のチームとしての成長ともリンクし、今年上演した3作目の『秋の大会編』では完全にひとつのチームとなって取り組むまでになったんです。そうした過程も含め、本当にかけがえのない作品になっていまね」
ーー三橋は投手としての才能を持ちながらも、自分に自信のない気弱なエースです。西銘さんはこの役をどうとらえていらっしゃいましたか?
「最初はあまりにも僕と真逆すぎてびっくりしました(笑)。三橋はちょっとしたことで落ち込むし、そうかと思えばエースであることにすごい執着がある。僕は明るく、そのときそのときを楽しくすごせればいいやっていう性格なので、“どう演じたらいいんだろう?”とすごく悩んだんです。そんなとき、高校時代にまさに三橋そっくりな友人がいたのを思い出して。それで久々に再会し、彼からいろんな言動を盗ませてもらいました。そうした形で役を作っていったのは初めてだったので、すごく新鮮でしたね」
ーーまた、今シリーズは3作すべて成井豊さんの脚本・演出です。稽古や本番を通して印象的だったことはありますか?
「成井さんはとても“声”を大切にされる方なんです。僕はそれまで映像のお仕事をメインにさせていただいていて、表情や体の動きを大事にしてたので、声に強く意識をもっていくという経験は初めてのことでした。ただ、そこで学べたことはとても多く、言葉の強弱やセリフの微妙なイントネーションなど、細かく指導していただいたので、すごく勉強になりましたね。また、ステージ全体の見え方にも絶対に妥協されない方で。セリフを話している人以外の役者たちのリアクションや表情にもしっかりと個性を付けていかれるんです。そのことで登場人物の一人ひとりが輝いて見えるし、物語にもテンポ感が生まれる。“こうした一体感の作り方もあるのか”とすごく驚きました」
ーー今回の特集では2月に公演を終えたばかりの最新作『秋の大会編』も放送されます。西銘さんが感じる見どころは?
「ひとつは西浦高校の野球部員たちの心の動き。これまでの2作品は三橋の成長物語としての要素が強かったのですが、『秋の大会編』ではチームとしての変化が強く描かれています。甲子園に向けてのひとりひとりの気持ちであったり、チームメイト同士で切磋琢磨する姿が見られ、より群像劇としての面白さが出ていると思います。もうひとつは三橋がずっと憧れている武蔵野第一高校の投手・榛名君(神永圭佑)との対決。三橋とバッテリーを組む阿部君(大橋典之)は中学時代に榛名君との間に確執があり、阿部君は彼を見返したいと思っているんですね。そうしたバッテリーとしての戦い方や心情が見られるのも『秋の大会編』の魅力ですね。しかも三橋にも変化があり、どうしても榛名くんに勝ちたいという思いやチームを背負うことへの意識が強まっていく。僕も台本を読んで『う〜、三橋ぃ〜!』って感動したので(笑)、その成長した姿にもぜひ注目していただきたいです!」
ーー最後に、この『おおきく振りかぶって』の舞台は西銘さんにとってどのような作品になっていますか?
「舞台の大変さ、面白さ、達成感、終わったあとの寂しさなど、あらゆることを教えていただきました。正直にいうと1作目はプレッシャーだらけでした。でも、今はこんなにも多くの方に愛される作品になったんだという実感があります。また、素晴らしい原作への感謝の思いでいっぱいですし、自分の主演作が3作も続いたことで自信にもつながりました。僕の役者としての原点は『仮面ライダーゴースト』ですが、舞台の原点は間違いなくこの『おお振り』だと感じていますね」
▼プロフィール
Shun Nishime
1998年2月20日生まれ。沖縄県出身。男劇団 青山表参道Xのメンバー。2014年、JUNONスーパーボーイコンテストでグランプリを受賞。翌年、『仮面ライダーゴースト』の主人公・天空寺タケルに抜擢され、注目を集める。最近の出演作にドラマ『Re:フォロワー』、舞台『ダンガンロンパ3』など。2020年4月W主演舞台『タンブリング』2020を控えている。
――
取材・文:倉田モトキ
撮影:鷹野政起
ヘアメイク:牧野裕大(vierge)
スタイリング:三宅 剛
舞台「おおきく振りかぶって」 シリーズ3作を衛星劇場で4月にテレビ初放送決定!
■舞台「おおきく振りかぶって 秋の大会編」
放送日:4月11日(土) 深夜0:30~2:45 他
2020年2月14日~2月24日/東京・サンシャイン劇場
[脚本・演出]成井豊 [原作]ひぐちアサ(講談社「アフタヌーン」連載) [出演]西銘駿、大橋典之、渡邊安理、白又敦、大野紘幸、安川純平、竹鼻優太、中村嘉惟人、湯本健一、齋藤健心、 亀井賢治、澤田美紀、筒井俊作、神永圭佑、佐伯亮、島野知也、越智友己、永岡卓也、松本祐一、西川俊介、 鶏冠井孝介、吉田英成
夏の大会の5回戦、美丞大狭山高校との一戦では、阿部の負傷もあって、西浦高校は敗北してしまう。百枝の鼓舞のもと、 西浦高校は校内での合宿でチームの目標を掲げる。同じく夏の大会の準決勝、A R C学園高校と武蔵野第一高校の一戦は、 A R C学園高校のコールド勝ちとなり、武蔵野第一高校はベスト4止まりとなった。長い間、榛名の“カベ”として上を目指す こともなく榛名の球を受けてきた秋丸を、榛名はやる気にさせねばと思うようになる。
■舞台「おおきく振りかぶって」(2018年公演)
放送日:4月11日(土) 午後7:30~10:00
2018年2月2日~2月12日 東京・サンシャイン劇場
[脚本・演出]成井豊 [原作]ひぐちアサ(講談社「アフタ ヌーン」連載) [出演]西銘駿 猪野広樹ほか
祖父の経営する中高一貫校の中等部から県立西浦高校に進学した三橋廉。 中学時代は野球部のエース投手であったが、チームメイトから「ヒイキでエー スをやらせてもらっている」とうとまれ続けたため、極端に弱気で卑屈な性格 になってしまった。暗い思い出をぬぐいきれないまま、野球への未練と共に放 課後の野球グラウンドを眺めていると、新設されたばかりの硬式野球部の女 性監督、百枝まりあから強引に入部させられてしまう。部員はわずか10人、全 員1年生の中で、はからずもエースを任される三橋。三橋の秘めた力をいち 早く見抜いた捕手・阿部隆也との出会い、あらたなチームメイトに支えられな がら、エース三橋、そして西浦高校野球部の挑戦が始まる。
■舞台「おおきく振りかぶって 夏の大会編」
放送日:4月11日(土) 午後10:00~深夜0:30
2018年9月6日~9月17日 東京・サンシャイン劇場
[脚本・演出]成井豊 [原作]ひぐちアサ(講談社「アフタ ヌーン」連載) [出演]西銘駿 猪野広樹ほか
野球部に強引に入部させられ、はからずもエースを任される三橋だったが、 捕手・阿部隆也のたぐいまれなリードとチームメイトからの信頼に助けられ るのだった。そして遂に迎えた初の公式戦である夏の大会では、前年度甲 子園出場の強豪・桐青高校を相手に幾度となく訪れるピンチを切り抜け、 見事に初戦勝利をおさめた。自分たちの実力に戸惑いながら勝利の喜び に沸く西浦高校野球部。はたして彼らの快進撃は続くのか…。
©ひぐちアサ・講談社/「舞台おおきく振りかぶって」製作委員会