お芝居の面白さを知った作品から転機となった舞台まで
僕の演劇人生の歴史が詰まったような5作品です
ーー衛星劇場では8月から2ヵ月に渡って松下洸平さんの出演舞台を特集いたします。その前半となる8月の放送作品の中で、音楽劇『リタルダンド』と『ヴィラ・グランデ 青山 ~返り討ちの日曜日~』はどちらも2011年の上演でした。
「僕が演劇をはじめて間もない頃の作品で、当時はわからないことだらけでしたし、きっと共演者の皆さんも、演出のG2さんや倉持裕さんも、僕の扱いに困ったことだろうと思います(苦笑)。『リタルダンド』では劇中でギターを弾くシーンがあるのですが、G2さんにお芝居だけでなく、ギターの稽古も付けていただいたのが印象深いですね。また、『ヴィラ・グランデ 青山』は竹中直人さんと生瀬勝久さんによる『竹生企画』というシリーズの第一弾でした。お2人には、稽古や本番を通していろんなことを教わりましたし、一緒にお芝居ができるのが本当に楽しくて。“いつかまた、このお2人と共演したい!”と心の底から感じ、僕に大きな目標を与えてくださった作品だと言えます」
ーーいずれも豪華キャストとの共演でしたが、作品を通してご自身が成長を感じたのはどんなところでしたか
「『リタルダンド』は吉田鋼太郎さん演じる父親が若年性アルツハイマーを患うという物語でした。稽古に向けて、僕も病気のことや、それを支える家族についての勉強をしたのですが、単純に知識を入れるだけではダメなんだと感じました。むしろ、知識がないからこそのリアルな演技もときには必要だということを学べた作品でした。また、『ヴィラ・グランデ 青山』では竹中さんと食事をした際に、『どうしてお芝居を続けていらっしゃるんですか?』と質問したことがあって。少し間があって、『……洋服を買うためかな』っておっしゃったんです(笑)。“でも、それを聞いて自分も些細なことでもいいから、お芝居を続けるやりがいをたくさん持っていたいな”と思ったのを覚えています」
ーーまた8月放送の作品に、井上ひさしさん原案、栗山民也さん演出の『木の上の軍隊』もあります。こまつ座の〝戦後“命”の三部作〟のひとつに数えられる作品ですが、松下さんにとってどのような舞台だったと感じていますか?
「栗山さんとは2011年のミュージカル『スリル・ミー』で初めてお仕事をさせていただき、以来、お芝居のいろはを教えていただきましたが、特にこの『木の上の軍隊』は僕の演劇人生の転機になった作品だと言えます。戦中のほとんどを木の上で隠れて過ごしたという実話に基づいた物語で、実際に僕も現地の沖縄に行き、その木に登ってみました。そこから見た光景は忘れられないですし、“役者が舞台上で何を感じるべきか”という大切なことを知ることもできました。それに、僕の演じる新兵は無垢な青年で、なぜ戦わなければいけないのかさえもわかっていない。けど、得体のないものを信じる力だけは持っている。僕もこの仕事を続ける上で、成功するかどうかはわからないけど、自分を信じ続けるしかないという意味で、とても共感を持つことができた役でしたね」
ーーそして9月には2017年の出演作品である崩壊シリーズ『リメンバーミー』と、音楽劇『魔都夜曲』も放送されます。
「『リメンバーミー』はただただ笑ってもらえるコメディです。物語の背景や俳優の心理描写など、細かいことは何も考えず見てください(笑)。僕もこの作品に出ているときは“自分へのご褒美だ”と思って楽しんでいました(笑)。一方、『魔都夜曲』は僕の所属する事務所(キューブ)の20周年公演ということで、いろんな先輩方とご一緒できたのが思い出深いです。また、演出の河原(雅彦)さんが、『役者は演じるのが仕事だけど、舞台の上で嘘はつきたくない』と話していたのも印象的で。僕も普段からそうありたいと思っていますが、改めて、舞台上でお芝居という嘘が真実になる瞬間を常に見つけていきたいと思うようになりました」
ーーこうして振り返ると、今回放送される5作品はご自身にとってどのような舞台だったと感じていますか?
「役者としての黎明期の頃の作品もあれば、大きく成長するきっかけとなったものもあり、まさしく僕の歴史が詰まっていると言えます。これからもいろんな舞台に挑戦していきたいと思っていますし、9月には劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と緒川たまきさんの新ユニット『ケムリ研究室』の第一回公演『ベイジルタウンの女神』に出演させていただくことが決まっています。個人的に大好きなKERAさんの舞台に参加できることにワクワクしていますので、今回の放送で僕に興味を持っていただけたら嬉しいです!」
▼プロフィール
Kouhei Matsushita
1987年3月6日生まれ。東京都出身。2008年に『STAND UP!』でCDデビュー。音楽活動と同時に、09年にBROADWAY MUSICAL『GLORY DAYS』で初舞台を踏む。18年に『母と暮せば』、『スリル・ミー』の舞台で読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞などを受賞。また19年のNHK連続テレビ小説『スカーレット』では一躍注目を集めた。
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取材・文:倉田モトキ
撮影:宮田浩史
ヘアメイク:宮田靖士(THYMON Inc.)
スタイリスト:丸本達彦(UNFORM)
衣装協力:blurhms/WONDERISM(TEL:03-6805-3086)
ジャケット¥49,000、スタンドカラーシャツ¥23,000、パンツ¥29,000
その他スタイリスト私物
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『ベイジルタウンの女神』上演記念
俳優・松下洸平 舞台出演作特集
<8月放送作品>
■音楽劇『リタルダンド』
放送日:8月9日(日)午後6:00~
2011年/作:中島淳彦/演出:G2
出演:吉田鋼太郎、一路真輝、高橋由美子、伊礼彼方、松下洸平、市川しんぺー、山崎一
■こまつ座『木の上の軍隊』(2016年版)
放送日:8月14日(金)午後9:00~
2016年/原案:井上ひさし/作:蓬莱竜太 (※「蓬」は点一つ「しんにょう」)/演出:栗山民也
出演:山西惇 松下洸平 普天間かおり /有働皆美(ヴィオラ)
■舞台『ヴィラ・グランデ 青山~返り討ちの日曜日~』
放送日:8月21日(金)午後9:00~
2011年/作・演出:倉持裕
出演:竹中直人、生瀬勝久、山田優、谷村美月、松下洸平、田口浩正
■松下洸平SPインタビュー vol.1
放送日:8月9日(日)午後6:00 他
舞台『ベイジルタウンの女神』の上演を記念して、俳優・松下洸平さんの魅力に迫るインタビュー番組。特集放送さ れる過去の出演作品のことから、最新出演舞台『ベイジルタウンの女神』のことまで、じっくりとお話を伺います!
<9月放送作品>
■~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』
放送日:9月12日(土)午後9:00
2017年/作・演出:オークラ
出演:山崎樹範、松下洸平、味方良介、上地春奈、大水洋介(ラバーガール)、伊藤裕一、彩吹真央、梶原 善
■cube 20th. presents 音楽劇『魔都夜曲』
放送日:9月5日(土)午後8:00
2017年/作:マキノノゾミ/演出:河原雅彦/音楽:本間昭光
出演:藤木直人、マイコ、小西遼生、壮 一帆、松下洸平、秋 夢乃、コング桑田、春風ひとみ、山西 惇、村井國夫、橋本さとし、他
■松下洸平SPインタビュー vol.2
放送日:9月1日(火)午後0:15 他
舞台『ベイジルタウンの女神』の上演を記念して、俳優・松下洸平さんの魅力に迫るインタビュー番組の第2弾! 特集放送される過去の出演作品のことから、最新出演舞台『ベイジルタウンの女神』のことまで、じっくりとお話を伺 います!
<公演情報>
ケムリ研究室no.1『ベイジルタウンの女神』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/振付:小野寺修二/映像:上田大樹/音楽:鈴木光介
出演:緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平
望月綾乃、大場みなみ、斉藤悠、渡邊絵理、依田朋子、荒悠平
尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子
【東京公演】 2020年9月13日(日)~9月27日(日) 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】 2020年10月1日(木)~10月4日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【北九州公演】 2020年10月9日(金)~10月10日(土) 北九州芸術劇場 中劇場
お問合せ(東京公演):株式会社キューブ03-5485-2252(平日12:00〜18:00)
http://www.cubeinc.co.jp/