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「芝居の中で僕が生きている様をご覧になって頂きたい」『エジソン最後の発明』東山義久インタビュー

劇作家・演出家 青木豪の作・演出作品『エジソン最後の発明』に、東山義久が出演する。
東山義久といえば、ミュージカル『エリザベート』のトートダンサーとして名を広め、以来、ダンサーとして、ミュージカル俳優として数多くの舞台で主演をつとめ、また“DIAMOND☆DOGS”のリーダーとしても活躍。彼ならではのスケールの大きな、妖美とも形容される美しさあふれるダンスでファンを魅了し続けている。

その東山義久が瀬奈じゅんと共演し、青木豪の新作、ストレートプレイに出演するという。
なんと、今回はダンスも歌も封印?! 

だが「ダンスが見られないのは残念」と思うなかれ!
「芝居が好き」と言い続けてきた東山義久が、新たな東山義久をつくりつつあるらしい。
楽しい中にも苦闘を重ねる(?!)稽古場で、その様子を聞いた。
(稽古の進展状況などは、インタビュー時の3月半ば様子です)

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―今回は瀬奈さんと東山さんがご一緒とのこと。お稽古始まっても、やっぱり踊る場面はないのでしょうか?
全然ないです。青木さんの脚本でしっかり稽古しています。僕もですが、瀬奈さんもどちらかといえば“ショー”のイメージが大きいですよね。でも、オファーを頂いた時から「歌わないし、踊らない」と聞いていました。逆に「楽しいな」と思いました。

―では、本当にストレートプレイなのですね?
ホントにストレートプレイです。ものすごい量の台詞があります。(笑) 普通の俳優さんから見れば普通の量だと思うのですが、僕からすれば驚きの量です。

―これまでのインタビューなどで「実は芝居が大好き」とおっしゃっていたようですね。
はい。出来るかどうかはさて置き(笑)、お芝居が大好きなんです。しかも、今回ご一緒させて頂く方々は「初めまして」だけれど、小野武彦さんを筆頭に演技の素晴らしい、すごい方々ばかり。最初は「どうしよう…」と思っていたのですが、みなさんが素晴らしいので、一緒にいるだけで自分もなんだが芝居が上手くなったような気がしています。(笑) いや、なんとか追いつきたいとがんばっているところです。毎日が刺激的です。

―毎日が刺激的とは、いいことですね。
すごく楽しいです。最近の仕事では、僕が一番年長とか、リーダーというポジションにいることが多いのですが、ここでは僕がキャリア的にも年齢的にも男では一番下と言っていい。新鮮ですね。たとえば、稽古が終って「飲みに行こう!」となった時、最近の現場では誰かが店の手配をしてくれることがほとんどだったのに、ここでは僕がやります!(笑)

―本当に楽しそうで、仲も良さそうですね。ところで、東山さんのストレートプレイと言えば…
久しぶりです。初めてストレートプレイに出演させて頂いたのは、宮本信子さん、布施明さん、山路和弘さんとご一緒させて頂いた『王様とおばさん』(2008年)。そして『宝塚BOYS』(2010年)ですね。
ついこの前まで出演していた『ALTAR BOYZ』をご覧頂いた方が、会場で本公演のチラシをご覧になって、まったく違うキャラクターで驚かれていたようです。

―本当に驚きましたよ。本作ではラジオのパーソナリティ役を瀬奈さん。その父で、下町の工場の社長役を小野武彦さん。東山さんの役柄は、技術畑出身のラジオ番組のディレクター。瀬奈さんの恋人役ですね?
僕自身は文系なので、自分とは随分違う役ですね。青木さんから「チャラいあんちゃんみたいな人を欲しい」というリクエストがあり、製作サイドから「いい人、いるよ」と候補に挙がったのが僕だったようです。なので、チラシの僕とはちょっと違った僕になりそうな気もします。こっちに近付けた方がいいのかな?(笑)

―チラシの絵は、俳優の岸祐二さんがお描きになったそうですね。岸さんの東山さんのイメージでしょうか?
岸さんとは『レ・ミゼラブル』(2005年)アンジョルラス役でご一緒したのですが、その頃の印象でしょうか。(笑)

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―そうでしたか!では今回の役は、どんな感じなのでしょうか?
僕は髪を切ろうかと思っていたのですが、青木さんが「いそうにないディレクターがいい」「金髪もそのままでいいよ」とおっしゃるので、髪はこのままでいこうかと思っています。
ラジオのディレクターといえば、スタジオのブースの外から「はい、どうぞ」とアクションするイメージですが、今回は出張ロケ放送というシチュエーションで、いろんな放送器材をもって出かけるんです。いろんなことが起こる中、それを僕1人で当り前に使いこなしつつ、セリフもある。そこが、今は大変です。(笑) 先日もニッポン放送の方に機材の扱いについてのレクチャーに来て頂いたのですが、「これの時にはこっちは使えない」「このスイッチを入れてる時には、こうしないと」「2本のマイクは・・・」と、もう頭の中が大混乱。(苦笑い)僕が不器用なので、もう一度来て頂こうと思っているんです。(笑)

―ということは、プロの仕事をする東山さんの姿を見せて頂けるんですね。
仕事はプロらしく「できる人」だけれど、ちょっと抜けているところもある。そして恋人のお父さんの前ではちょっとね…。(笑)

―人間味ありそうですね。小野さんと瀬奈さんと絡む芝居が多いのでしょうか?
そうですね。最初から3人でしっかり芝居します。小野さんは本当にお嬢さんがいらっしゃるそうで、瀬奈さんともすごく自然に接しておられます。僕はもう小野さんが瀬奈さんの本当のお父さんに見えていて、普段から「お義父さん!お義父さん」って呼んでいます。(笑)
青木さんが当て書きもしてくださっているので、僕も瀬奈さんもキャストはほとんど実年齢に近い役で、みなさん、自然です。僕もしっかりセリフを入れて、皆さんが作っている役を見ながら、自分の役を作りたい…と思っています。

―「役をつくる」ということでは、「芝居が好きだ」と感じた作品があったのでしょうか?
『宝塚BOYS』の時、演出の鈴木裕美さんのもとにキャストが集まって最初の1週間はじっくり本読みだけをしました。例えば「うん」という1つのセリフについて、「どう思って『うん』なのか」…疑って「うん」なのか、すごく賛同して「うん」なのか…と、すべてのセリフに「どう思っているから、このセリフになる」と書いていく。全員がそれを教えてもらいました。
歌は歌詞を間違えようと、曲が終われば終わる。ダンスもソロではちょっと違うのですが、ユニゾンだと曲が終われば終わる。けれどお芝居は全てがみんなへのバトンで、僕も受け取るし、次に渡さなきゃならない。だから終わらないんです。お芝居は個人プレーではできない。歌やダンスは、ある程度の個人プレーができるジャンルだと思うので、そこが大きな違いだと思います。たくさんのシーンをみんなで作って作って、つなげてつなげて、やっと1つの芝居になる。それが魅力ですし、面白い、楽しいと思うところですね。僕がしっかりできればバトンを渡せる。最後に小野さんや瀬奈さんが演じる親子の関係がグッとくるところまで、みんなで一生懸命作っていく。
僕も“DIAMOND☆DOGS”を作って14年。そこで作っているのはショーで、僕は僕なりに仲間意識をもって「これは彼のために」「このスタッフのために」と作っている。でも、そっち側はなるべく見せないようにやるのがショーの世界。下では苦労しても、かっこよく見せるのがショーです。でも、お芝居というのは、その中身も見せる。「ここを皆で作っているんだ」というのを見せていくので、僕にとっては新しいジャンルで、とても面白いです。

―お芝居がそんなにお好きとは、意外です。
踊りや歌もいろいろやらせて頂いたのですが、こっちの方が好きですね。上手く言えないのですが、こんな芝居の方が僕自身に近いものが出せるんじゃないかと思っています。かっこつけることもないし…。全部そのまま…って感じですね。

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―ショーでは演出もされる東山さんですが、青木さんの演出はいかがですか?
ショーやライブの演出とは全く違いますね。皆さんで青木さんを真ん中に囲んで、シーンを止めてありとあらゆるディスカッションをしながら作りあげていきます。「自然にやること」が、すごく難しいと感じています。

―東山さんも積極的に意見を出されているのですか?
僕はまだ意見を出すほどではありませんが、他の方の意見を受け取らなきゃいけないので、皆さんが動かれるのに合わせて「だったら、僕はこう動かなきゃ」とどんどん変わっています。例えば「8人がどこにいるか」ということでも、僕ならキレイにならべてしまう。けれども、普通に人がいる時には、微妙な人間関係が反映されて、険悪な2人はちょっと離れて立っていたり、「この人は、ちょっと…」と思う人がいれば、ぎゅっと集まる人たちと、1人ポンと離れている人がいたりする。そのシーンだけで物語がある。今は稽古場で、そういうことを丁寧に考えて作っているところです。

―お芝居の面白さが垣間見えた気がします。最後に、この作品で「東山義久のここ、いいよ」という点と、お客様に楽しんで頂きたいところを教えて頂けますか?
僕自身の「ここ」と言えるところはないんですが、こんな素敵な芝居に挑戦して、その8分の1として芝居の中で僕が生きている様を是非ご覧になって頂きたいな、と思います。
そして作品としては脚本が本当にハートフルなコメディで、すごくいいんです。登場人物は8人だけで、そのどのキャラクターも特別です。小野さんと瀬奈さん演じる親子を軸として、始まりから笑ってしまうのに、最後の方にはグッとくるところがたくさんあるんです。これで本番にお客様が入って、セットや照明が加わったらと考えると、お客さまに共感して頂けることがたくさんあると思います。色々なセリフ、言葉を聞いて楽しんで頂きたいと思います!

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『エジソン最後の発明』
作・演出:青木 豪
出演:瀬奈じゅん、東山義久、岡部たかし、まりゑ、安田カナ、武谷公雄、八十田勇一、小野武彦
【東京公演】2017年4月2日(日)~23日(日)シアタートラム
【名古屋公演】5月1日(月)青少年文化センター アートピアホール
【大阪公演】5月2日(火)3日(水・祝)サンケイホールブリーゼ
詳細はこちら https://edison.amebaownd.com