ミュージカル『October Skyー遠い空の向こうにー』が、10月6日(水)にシアターコクーンにて日本初演の幕を開ける。
(東京公演は10月24日(日)まで。大阪・森ノ宮ピロティホールにて 11 月11日(木)~11 月14日(日))
本作は、元NASAの技術者ホーマー・H・ヒッカム・Jr.によるベストセラー自伝小説「ロケットボーイズ」を原作にした青春映画から生まれたミュージカル。
1957年世界初の人工衛星、ソ連のスプートニクが、アメリカの上空を横切った時の輝きに魅せられ、ロケット作りに夢をかけた高校生たちの成長を描いた感動作だ。
今回Astageにご登場いただくのは、本作で主人公のホーマー役を演じる甲斐翔真さん。
2016年に「仮面ライダーエグゼイド」でドラマデビューし、「花にけだもの」「覚悟はいいかそこの女子。」映画「君は月夜に光り輝く」「君が世界のはじまり」など、数々の映像作品で活躍。2020年1月に『デスノート THE MUSICAL』主演・夜神月役でミュージカルデビューを飾ってからは、ミュージカル『RENT』ロジャー役、ミュージカル『マリー・アントワネット』フェルセン伯爵役、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』ロミオ役と、ミュージカルでも大躍進を続ける若きスターだ。
―本作に出演が決まった時と、台本を手にして稽古が始まって以降では、作品への印象に変化はありますか?
最初はどんな作品なのかと思い、映画を見ましたが、お話が良過ぎて、映画としても素晴らしかったので、始めはミュージカルになったときのイメージがわきませんでした。
でも台本を読むと映画の質感とはまったく違っていました。音楽もノリノリの曲が多くて、ミュージカルとして、映画とはまた違った新しい可能性を試せるのではと思いました。ただ、最初に本読みをしたときに感じた「なんて良い話なんだ」という思いは変わりません。
「夢や希望」がテーマなので、終わった時に心明るくなる作品です。ぜひ楽しみにして頂きたいと思います。
―甲斐さんの演じるホーマー役について教えてもらえますか?
1957年のアメリカの田舎の炭鉱の町のお話で、高校を出たら炭鉱夫になるのが当たり前で、それ以外には、アメフトで特待生になって奨学金で大学に行くくらいしかないほどの貧しい町なのに、ホーマーは当時の敵国・ソ連の人類初のロケットの発射を見て、「あれを作りたい」という夢を抱いて、信じ続けて叶えていきます。
たくさんのロケットが飛ばされている現在とは違って、初めてロケットが飛ぶという時代なので、周りの人はホーマーを絵空事に溺れてしまった少年だと、まったく理解してくれません。そんな時代にもかかわらず、自分の信じるものを見つけて走り出したという点では、今の僕たちも学ぶべきことがあるのかなと思っています。
―好きをみつけて、没頭していくのですね?
はい。でもホーマーが生まれながらにして、そうなのかといえば、たぶんそうではないと思うんです。
本読みした時に感じたのですが、ホーマーのお父さんは炭鉱町のリーダーで、最初の頃の彼はその息子というだけで、人物像はぼんやりしていて、どういう人なのかよくわからないんです。ホーマーはこのミューカルの主人公なので「この町から抜け出したい」と主旋律を歌うんですが、現実だったら心のなかでそっと思っているだけで、口に出したりはしていないですね。「何者にもなれないでいる人」だったと思います。
本読みの時に、板垣さんが学校のヒエラルキーの話をされて、ホーマーはそのどこにも属さないとおっしゃっていました。だから「何かを追い求めたい」というエネルギーが溜まっていて、ロケットという目標を見つけて歩み出した瞬間からとんでもない速さで向かっていくんだと気付かされました。目標を見つける前は助走で、助走も大事なんだと感じました。
―甲斐さんも芸能界という厳しい世界で夢を追っているおひとりだと思います。ホーマーと重なる点も感じますか?
「夢を追っている」というのは共通点かもしれませんが、僕とホーマーの違いは、僕は逆境に向かうような生き方はしてこなかった…というところです。周りに応援してくれる人が多くて、ホーマーのように「絶対無理だよ」「平凡に生きた方がいいよ」と言う人がいませんでした。僕は反対する人を押し切ってまで成し遂げたことはないので、そこは違うと思います。
―甲斐さんは「仮面ライダーになりたい」と言って実現されたことが印象深いです。近々ではミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で、甲斐さんが初登場された場面で「ロミオが来た~!」と強烈に感じました。その後に甲斐さんのインタビューを拝見したら「登場したときに、ロミオだ!と思ってもらえるように」とおっしゃっているのを見つけました。なので、甲斐さんは「こうしたい」「こうなりたい」と言ったことは叶えていく、有言実行というか、有言実現される方…という印象があります。心掛けていらっしゃることがありますか?
言霊は存在していると思っています。自分自身への暗示でもありますし、周りの人にも「そうなるよ」というイメージを持ってもらって流れをつくれたら…というのもあります。「言うのは簡単だ」と言いますが、言うことで伏線ができるわけで、その後は行動で突き進んでいくだけ…。(笑) 言葉にしていくことは、とても大事だと思います。
『ロミオ&ジュリエット』もインタビューを先に読んだのでは?(笑)
―いえいえ、本当に公演を先に見ましたよ。(笑)
さて話を『October Sky』に戻して、本読みからお稽古へと進んで、稽古場はどういう感じですか?
日本初演のミュージカルなので、かたちの無いものをイチから作り上げています。キャストが立って動いて、演出の板垣さんも探りながら…という感じで、僕らと一緒に悩みながら作り始めました。板垣さんは俳優に寄り添ってくださる方で「どんなアイデアを持ってきてもいいよ」という雰囲気の稽古場です。一日の稽古で作ったものを最後に通して見ると「あっ!ミュージカルになっていく!」と実感しています。
―大きな楽しみのひとつ、楽曲については?
楽曲はとても素晴らしいのですが、個人的にはこれまでのミュージカルで一番難しいと感じています。日本で一度も歌われていない曲ばかりというのもありますが、僕がこれまで歌ってこなかったカントリー調や懐かしい感じのロックの曲があり、馴染むのに時間がかかりました。それは作曲者が、時代を映した音楽にしようという意図したのだと思います。
他には、終わったとたんにわーっと拍手したくなるようなミュージカルらしい壮大な曲もあります。聞きやすくて、メロディに心揺さぶられる曲も多いと思います。
―歌についても、オペラの歌唱を勉強したり、韓流ミュージカルから学んだりと、甲斐さんは研究熱心、努力熱心な方ですね。最近は、歌についてどんな研究を?
研究しているつもりはなくて、ただ歌うのが好きで、歌が上手くなりたい。仕事のためもありますが、それ以上に、もうただただ歌が上手くなりたいんです。
最近は、韓国の素人の方も出る歌番組を見ていますが、レベルがすごく高くて。そこで「母音をどう発声しているか?」というようなところに注目したりしながら、発声法を学んでいます。そういう見方ができるようになったのも、この1年半に学んできた成果かもしれません。
―以前、韓国ミュージカルの俳優(チョン・ドンソク)さんに「なぜ、韓国には歌が上手い方が多いのか?」と質問したときに「韓国語は、普通に話すだけで喉(声帯)の開け閉めをするから」と教えて頂いたことがあります。
本当にそうだと思います。日本語は口すらほとんど閉じていても話せますけれど、英語も韓国語も中国語も、それでは話せないですから。だから普段からやり続けるしかない。
―というのは?歌のレッスン?
ただ歌い続ける。とにかく歌い続けるしか上手くなる方法はないと思っています。やりたいと思いながら、できていないのは英語や韓国語の勉強です。
―やはり努力家なんですね。コロナ禍の中での公演も経験されての思いもお聞かせいただけますか?
コロナによって悪いことが本当に多かったですが、でも本当にわずかかもしれませんが、良い意味で見えてきたこともあったと思います。ゾンビ映画でも人間の卑劣さや悪いところが浮き彫りになりますが、人の暖かみが見えてくることもありますよね。
地球全体がおなじ問題を抱える局面を迎えて、オリンピックだと、選手たちの目やその過程を見ていると、こちらも燃え上がってくる。スポーツとエンタメの違いはありますが、僕らもそんな存在でありたいと再確認できた感じがします。
どこかマイナスな気持ちを抱える人が多いこの時代に、エンタメを届けることが、いかに人の心を救っているのかということを、お客様の反応をみていると、すごく感じます。
―最後に、本作を観に行こうか、お悩み中の方へ、メッセージをお願いします。
僕もお客様として『October Sky』に出会ったなら、「知らない作品だな」「シアターコクーンでやるの?」と思うでしょうから、悩んで頂いている時点で嬉しいです。
でも「つまらない作品だったら、正直につまらないと言うよ!」と言いたいくらいに面白い作品です。
壮大さや華麗さとは違いますが、自分を登場人物に重ねることができる、心の琴線に触れるようなリアルさが「ある、ある」と思える作品です。
実話なので物語の展開にも無理がなく、その時代を切り取ったお話です。原作や映画がそもそも、とっても面白い作品なので、ミュージカルは絶対に面白いです!是非来て頂いて、日本初のこの作品が生まれる瞬間を目撃して頂きたいです!
October Sky-遠い空の向こうに-
【東京公演】2021年10月6日(水)〜10月24日(日)@Bunkamuraシアターコクーン
【大阪公演】2021年 11 月11日(木)~11 月14日(日)@森ノ宮ピロティホール
上演台本・訳詞・演出:板垣恭一 脚本:ブライアン・ヒル&アーロン・ティーレン
作詞作曲:マイケル・マーラー
出演:甲斐翔真 阿部顕嵐(7ORDER) /夢咲ねね /栗原英雄 朴璐美
中村麗乃(乃木坂46) 井澤巧麻 福崎那由他
畠中 洋 青柳塁斗 筒井俊作 礒部花凜
中本雅俊 角川裕明 大嶺 巧 秋山エリサ 國末慶宏 砂塚健斗 Sarry
高木裕和 倉澤雅美
公式HP:https://october-sky.jp/
主催:アミューズ