12月8日(水)と開幕が迫った注目のミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』から、ラオウ役を演じる福井晶一・宮尾俊太郎に取材が叶った。
最強の敵、ラオウを演じる苦労と意気込みを語って頂きました。(取材は11月半ばです)
―お稽古が始まっての感想を教えてください。
福井:とにかく大変です。ミュージカルですから歌あり、ダンスあり、いろんな要素が詰まっていて、さらにワイヤーアクションがある。筋トレにも毎日励んでいます。稽古が始まって1か月半ほど経ち、今日は初めて通してやります。まだまだやることがたくさんありますが、やっと骨組みが見えてきた。ここから積み上げていく段階で「新たなミュージカルが出来上がってきた」という印象です。
宮尾:大変です。(苦笑)公演の1か月前に通し稽古ができるというスピードで進んでいるので、頭と肉体がほとんどパンクしている状態です。正直、回復の時間も足りないようなスピード感で進んでいます。でも、今日通し稽古ができる。まだ本番まで1か月あるのだと思うと、希望が見えてきたような気がします。「本当にすごい舞台になるな」と実感しています。
―ラオウを演じることで、心にも影響がありますか?
福井:誰よりも屈強で強くいなければいけないのですが、大貫くんが予想以上に鍛えてきていたので、本当に大変なんです!稽古しながらも稽古をしながらも毎日必死に筋トレやってます。ただ筋肉がつき体が大きくなることで自然とラオウの居方が様になってくるところがあります。それからワイルドホーンさんの楽曲がかっこよくて、ラオウの威厳や強大さを表現してくれているので、曲からヒントを頂いているなと思います。
宮尾:ラオウの絶対に引かない、自分の信念を曲げずに貫いていくという姿勢・その要素は、今までバレエを続けて来た自分にも有ると思ったのですが、改めてラオウの台詞を見ると、恐ろしいほどの強さで。劇中には出てこない台詞ですが「俺に後退はない。有るのは前進勝利のみ」と思って毎日、闘っています。
―Wキャストとして、互いがすごいと思うところは?
福井:バレエの世界を極めた人が、新しい世界にチャレンジするという姿勢が素晴らしい。それこそ「後退はない」じゃないですが、男気を感じます。稽古を見ていても、時にはバレエの癖が出てしまって修正が必要なときもあったりして、大変だと思いますが、そこにくらいついて何度も何度も繰り返して稽古している姿を見ると、僕も見習わなくてはと思います。同じ北海道出身で、そこにも縁を感じますし、一緒に稽古できて光栄ですし、楽しいです。
宮尾:福井さんはミュージカルのキャリアがしっかりありますし、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンを演じた方なので説得力が素晴らしい。台詞も素晴らしい、歌も素晴らしい、見せ方も素晴らしい。今回はオリジナルの新作を作るので、いろんな動きをやってみるのですが、毎回新しい違う形を見せて、演出家にインスピレーションを与えていらっしゃるので、本当に凄いなと毎日感じています。
福井:ありがとうございます。(笑)
―お互いのラオウになった時の魅力を、どのようにご覧になっていますか?
福井:宮尾君は登場してきたときのオーラが圧倒的です。手足の長さ、スタイルのすばらしさもありますし、やっぱりスターのオーラがすごいです。それはバレエのプリンシパルとして何年も踊ってきた宮尾君にしか出せないものです。それから、昔から大貫君と親しいということで、二人にしかなせない、言葉を交わさなくても身体がぶつかるだけで交わせる会話というのがすでにあることが羨ましい。今回はそこも楽しみにしているところですが、僕はまだ、大貫君と一緒にまだそれほどやっていないので、これから僕もそこまで近付けたらと思っています。
―稽古場ですでにオーラがすごいとなると、本番で衣装・メイクがつくのが待ちきれないですね。
福井:しかも、その二人が踊らずに闘うんです。すごいですよ!
宮尾:ありがとうございます。福井さんは声の表現がすごくて、飾る必要が何もない。気持ちがあって言葉が出てくる。歌に強烈な説得力ある。ワイルドホーンさんがいらっしゃって福井さんが歌われたのを聴いた時に、僕はびっくりして失神しそうになりました。それと同時に「僕はどうしよう!」「これに追いつくのは絶対無理だ」とあきらめそうになりました。それくらい素晴らしいものでした。
それから、福井さんの持つ圧倒的な貫禄が、ラオウにとてもマッチしていることです。その存在といで立ちだけで空間が支配されて、福井さんラオウに集中される。それは身につけようと思ってもすぐには難しい。羨ましいです。
―では、このカンパニーならではの魅力は?ラオウ役のおふたりはまとめ役でもありますか?
福井:石丸さんは、情熱があって諦めない姿勢で演出されます。石丸さんの演出を経験したことがある方もない方もいて、最初は戸惑いもあったかもしれないですが、石丸さんの情熱に感化されて、今は皆がひとつの方向を向き始めて良い状態にあると思います。
カンパニーのまとめ役といえば、リュウケン役の川口竜也さんがしっかりといろんなところをサポートしてくださいますので、僕らは安心してラオウ役に集中できます。
宮尾:このスピードで稽古を進めてこられたのも石丸さんのお陰です。石丸さんは作品にも俳優にも絶対に最後まで責任を持つというユリアのような深い愛の下で、大切にしたいところをとても大事にされる素敵な方です。
そして、振付の辻本知彦さんが違った角度からいろんなスパイスを入れてくださっていて、それが今までにない形をつくる要素のひとつになっています。中国の顔安さんも加わって、さらにいろんな角度からのものが加わって化学反応が起きていて、それが一つのものになろうとしていて、そして俳優陣は毎日それぞれに闘っていて…非常に尊い時間になっています。
―舞台の上でも、その戦いが毎日繰り広げられるのでしょうか?
宮尾:本当にケガに気を付けたいと思います。
福井:正解がまだわからない状態で、動きも台詞も変わっています。覚えては捨てて、また新しく覚えての繰り返しですが、オリジナル作品の最初のカンパニーでしか味わえないことなので、そこに立ち会えるオリジナルキャストに選ばれたことを光栄に思っています。皆がそういう思いを感じながらやっていると思います。
―稽古に入って気づいたラオウの魅力は?
福井:子供の頃に見ていたので、ラオウの印象は強烈でしたが、改めて原作を読み、アニメを見て、いろんな愛が描かれていることや人間ドラマまでは理解できていなかったと気が付きました。特に今回のミュージカルでは、3人の兄弟愛は繊細に描かれていて、3人それぞれの思いや宿命の対決は、演じていてもグッとくるものがあり、見どころばかりです。誰よりもラオウは愛に飢えている男なのに、それを絶対に認めない、見せない。最後の最後で、ラオウの人間らしい部分が見える…そんなところを舞台で表現できればと思っています。
宮尾:最初は圧倒的な強さのラオウというイメージでしたが、彼も愛に気が付きますよね。本当は愛のある人で、それに自分で気が付いても最後まで受け入れない。その揺るがない強さ。そして自分の強さで乱世は治めたけれど、今やその強さは必要がなくなってしまって、自分を止めるものを求めていたのではないかと。「どこかでケンシロウに倒されることを望んでいたのかもね」とユリアが原作で言っていますが、そう思ってもいいのかなと思い始めています。そこは今まで気付けなかったラオウの深さです。
―観劇を迷っている方へメッセージをお願いします。
宮尾:絶対に今までになかったミュージカルになります!それに、僕は「再演は絶対無理!不可能だ」と思っていますから、今回を見逃すと二度と見られないかもしれません(笑)
福井:可能性はありますね。(笑) オリジナルならではのことがたくさんあって、ダンス、殺陣、音楽、いろいろな方の力が結集してとんでもない舞台になっています。僕はジャン・バルジャン役が一番キツイと思っていましたが、正直言って、ラオウの方がキツイです!(笑) これだけ激しい殺陣をやる舞台は最初で最後かもしれません。今年最後の舞台、ぜひ観に来てください。
―大変ではあっても楽しみながら作っておられるのが伝わってきました。
宮尾:限界を超えるとこうなってしまいます!(笑)
福井:闘うだけでなく、汗と涙が散る、誰が観ても楽しめる作品になると思います。
ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
原作:漫画「北斗の拳」(原作:武論尊 漫画:原 哲夫)
音楽:フランク・ワイルドホーン
演出:石丸さち子
脚本・作詞:高橋亜子
ケンシロウ 大貫勇輔
ユリア 平原綾香 May’n (Wキャスト)
トキ 加藤和樹/小野田龍之介(Wキャスト)
シン 植原卓也/上田堪大 (Wキャスト)
リュウケン他 川口竜也
トウ・トヨ 白羽ゆり
マミヤ 松原凜子
レイ/ジュウザ 伊礼彼方/上原理生(交互で役替わり)
ラオウ 福井晶一/宮尾俊太郎(Wキャスト)
2021年12月8日(水)~29日(水) 日生劇場
2022年1月8日(土)9日(日) 梅田芸術劇場メインホール
2022年1月15日(土)16日(火) 愛知県芸術劇場大ホール
主催:ホリプロ/博報堂DYメディアパートナーズ/染空间 Ranspace/イープラス
企画制作:ホリプロ
(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111
公演ページ https://horipro-stage.jp/stage/musical_fons2021
北斗の拳オフィシャルウェブサイト:http://www.hokuto-no-ken.jp/