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舞台『血の婚礼』安蘭けい インタビュー「覚悟がいると思います。でも久々に感情を出せる作品」

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2022年9・10月に東京・シアターコクーンにてスペインの伝説的劇作家、 フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる官能的な演劇作品『血の婚礼』が上演される。
今、最も多忙といわれる演出家のひとり・杉原邦生が演出を手掛け、上演台本は田尻陽一が新たに翻訳。木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けい が出演する。
描かれるのは、一人の女をめぐり、 男二人が命を懸けて闘う愛と衝動の物語。若い男女が結婚式を迎えようとするとき、花嫁の昔の恋人が現れ、すべてを変えてしまう…。

今回、Astageにご登場いただくのは、花婿の母親を演じる安蘭けい。
本作への意気込みと共に、演じることへの思いも語ってもらった。

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―出演が決まった時の思いを教えてください。
私が蜷川さんのファンというのもあって、清水邦夫さんがロルカの血の婚礼を下敷きに創作された蜷川幸雄さん演出、窪塚洋介さんが主演された『血の婚礼』(2011年)を拝見しました。蜷川さんの世界観、演出は素晴らしかったのですが「重く救いようがないお話だ」と思ったくらい胸にズンと応えた覚えがあります。今回、お話をいただいたときには「あの『血の婚礼』か!」と思いました。忘れているところもあり、ロルカの原作からでもあり、台本を読んで「なぜ今、この時代にこの作品をやるのですか?」とプロデューサー尋ねました。「抑圧された現実が重なる状況に、舞台だからこそ感じられる熱情を表現したい、そこで人間らしさを再認識できるのでは」ときいて、すごく納得がいきました。同時に、自分が取り組むにはハードだなと思いました。

―脚本を拝見すると、最初から感情があふれ出る作品であり役柄であり、覚悟も必要かなと思いましたが。
覚悟がいると思います。でも久々に感情を出せる作品かなと楽しみです。

―この作品で出さなければいけない感情は?
悲しみが一番大きいのかなと思います。私が演じる母親には、自分が大切に育てた次男(須賀健太)が結婚するという喜びもありますが、それ以前に夫も長男も殺されてしまっている。根本が傷ついている人だから、例え笑っていても眉間に深く刻まれた皺は消えない…みたいな人なんじゃないかなと思っています。だから「傷ついた感情」は常にあると思います。

―深い感情をどのように自分の中から作って、表現していかれるのでしょうか?
私が在日三世なので、子供の頃には情熱的で感情表現もストレートな人たちが周りにいました。生きていくために一生懸命で、ハングリー精神のかたまりのような人たちの姿を目にしていたことが、こうした感情を表現する役柄でのお手本のひとつになるのかなと思います。

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―今回のように新しい作品に挑まれるときはどんなことを考えますか?
新しい作品に取り組むのは本当に楽しくて、毎回新しい作品をやりたいくらい…と言うと語弊がありますね。再演は再演で楽しみはあるんですけど(笑)。でも本当に、いろんなものに、いろんな人に出会いたい。生きている限り新しいものに出会いたいっていう欲があるので、新しい作品はまず楽しみです。でも作っていく段階は辛くて「ああ、辛いのが待ってるな。台詞覚えるのが大変だ」と思うと「はあ~」となるので(笑)、そこへの心構えは必要ですね。人間関係も、稽古から上演期間を含めると2~3ヶ月、キャストやスタッフの皆さんとの人間関係を積み重ねていかなきゃならない。人見知りなんて言っていられないから、朝起きたら「よし、今日もがんばろう!」みたいな心構えをいつもしなきゃと思っています。

―日々自分を奮い立たせていらっしゃるところがある?
あります。宝塚歌劇団では常に同じ組でお互いによくわかり合っている仲間でやっていたので、あとから考えると楽だったなと。宝塚を退団して間もない頃は、公演毎に「またイチから人間関係もつくらなきゃ」となって、そして「本当に一期一会だな」と思って千秋楽を迎える度に泣いていました。今はもう退団して13年も経つので、もう慣れてはいますけれど、感覚的には慣れていないところがまだたくさんあります。

―新しい出会いといえば、本作では演出の杉原邦生さんですね。杉原さん演出の「藪原検校」ではラップがあって新鮮でした。
この作品でも生演奏やダンスがあるそうなので、重いお話だと思っていましたが、もっとポップになるのかも…。そこも楽しみです。

―音楽が生演奏はお好きですか?
生演奏は演技との掛け合いになるので、良い相乗効果が生まれるといいなと思っています。生演奏だときっかけが難しいというストレスもあるのですが、そこがまた面白い。舞台上ではハプニングがつきもので、それは嫌いなんですけれど好きなんです。(笑) もちろん怪我や事故に結びつくアクシデントは困りますが、そうでないハプニングがあると、さっと冷静になる自分がいて、「生だ」「生きている」と感じると同時に、「お客様にも喜んでもらえるといいな」と考えます。ライブならではのものが生まれるのがやっぱり生演奏。好きですね。

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―さて、ちょっとこの作品から離れますが、本当にたくさんの役を演じてこられている安蘭さん。最近は特に新しい作品の発表がある度に「今度はこんな役を?」と思うことが多いです。
それが嬉しいんです。あまりひとつに染まりたくない気持ちがあるのかも。

―コロナ禍を経て、舞台や演劇について安蘭さんが抱かれている思いを聞かせください。
自分でも「舞台をやり続いている理由は?」と振り返って考えたことがあって、本当に“好き”なんです。「舞台に立つのが好き」「演じるのが好き」なんです。演じてない自分が舞台に立つのは、すごく恥ずかしいんだと、実は最近知ったんです。(笑) 舞台上で挨拶しようとすると、緊張し過ぎて言葉が出てこない。演じていると楽なのに、演じてないとダメなんです。
こどもの頃を思い出すと、人前で歌ったりしていたので、人前にでるのは恥ずかしくなかったので、ただ自分の気持ちを言うのが恥ずかしい人間なんだなと思います。演劇をやるのは、自分の気持ちを言えない私が、自分を表現するためなんです。
だから歩みを停めたくない。自分を表現したいし、自分も自分が知りたい。自分の可能性はもっとあるのではないかと思い続けているので、挑戦し続けていきたいです。

―つい、自分から目をそらしたり、逃げてしまったりする自分が恥ずかしくなりました。
逃げる時は逃げていいじゃないですか。ただ女優は嫌なことや辛いことを芸の肥しにできる…そう思っています。女優でなかったら辛いだけだと思うと、女優でよかったと思います。

―最後にご覧いただく方へ、また迷っている方へメッセージをお願いします。
コロナ禍が続く中で足を運んで頂く方へお伝えできるメッセージがこの作品にはあると思います。杉原邦生さんの下で『血の婚礼』がどう生まれるのか、是非目撃して頂きたいと思います。

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舞台『血の婚礼』
<スタッフ>
原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻訳:田尻陽一
演出:杉原邦生
音楽:角銅真実、古川麦

<キャスト>
木村達成
須賀健太
早見あかり

南沢奈央
吉見一豊
内田淳子
大西多摩恵
出口稚子
皆藤空良

安蘭けい

<東京公演>
期間:2022年9月15日(木)~10月2日(日)
会場:Bunkamuraシアターコクーン
主催・企画制作:ホリプロ

<大阪公演>
期間:2022年10月15日(土)~16日(日)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

<演奏>
古川麦
HAMA
巌裕美子

公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/chinokonrei2022/
公式Twitter:https://twitter.com/chinokonrei #舞台血の婚礼

*衣装 LANVIN COLLECTION
問合せ先 ランバン コレクション
0120-370877

*アクセサリー NATURALI JEWELRY
問合せ先 ナチュラル ジュエリ 新宿高島屋店
03-3351-5107