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ブロードウェイミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』 sara&豊原江理佳インタビュー sara「この作品が“みなさんのホーム“になれるように、稽古を頑張る所存です!」 豊原江理佳「私に自分の半分を誇りに思っていいと教えてくれたミュージカル」

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世界中で最もチケットが取れないミュージカルと言われる『ハミルトン』を生んだブロ-ドウェイの異端児リン=マニュエル・ミランダの処女作、ブロードウェイミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』(以下、『イン・ザ・ハイツ』)が、9月22日(日・祝)天王洲 銀河劇場から再々演の幕を上げる。(京都・名古屋・神奈川公演あり)

2008年度トニー賞最優秀作品賞を含む4部門、2009年度グラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞し、21年に映画化もされると、ゴールデングローブ賞主演男優賞にもノミネート。ラップやサルサ、ヒップホップなどの楽曲を多数使用して、ミュージカル界に新風を吹き込んだ傑作ミュージカルだ。

物語の舞台となるのは、マンハッタン北西部、移民が多く住む町ワシントンハイツ。
両親の遺した商品雑貨店を守りながらドミニカで暮らす事を夢見ているドミニカ系移民のウスナビを主人公として、ワシントンハイツに住む人たちの夢と現実、そして複雑な思いを、多彩な音楽とダンスに乗せて描いていく。

今回、新キャストとして出演するsara(ワシントンハイツの希望の星として名門大学に進学したニーナ役)と豊原江理佳(ヘアサロンで働きながらも外の世界に憧れているヴァネッサ役)が取材に応じてくれた。
saraも豊原も、幼い頃から歌やダンスを磨いてきた実力派。ともに関西出身という共通点もあり、時に関西イントネーションを交えて、たっぷり語ってくれた。

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-5月31日には本作のキャストが出演して、スペシャルイベントが行われたそうですね。
二人:すごく盛り上がりました!
sara:300人のお客様がオールスタンディングで、ソロやラップが終わる度に大歓声で盛り上がってくださった。普段の舞台では返ってこないリアクションを直に感じて、とても新鮮で嬉しくて、こちらもテンションが上がりました。
豊原:本当に楽しかったです。ニューヨークでミュージカル『ジャージー・ボーイズ』を観たときに、カーテンコールで杖をついたおじいさんが、立ち上がって杖をついたまま踊り出したのを観て「なんて素敵!」と思ったことを思い出しました。
『イン・ザ・ハイツ』も、踊れる曲も盛り上がれる曲もいっぱいあるので、公演本番でも観客のみなさんも踊ったり声を出したりして盛り上がってもらえたら嬉しいです。
sara:イベントに参加されたお客様が、公演でも同じように心を解放して楽しんでいただけたら嬉しいなと思います!
豊原:公演本番でも是非、いっしょに盛り上がってください。
sara:お願いします!!

-おふたりは本作が初共演だそうですが、イベントやお稽古などを通して、お互いにどのような印象を持たれましたか?
豊原:私はいろんな方から「saraちゃんは明るくて面白い子」と聞いていましたし、歌もSNSなどで拝見していたので、「こんなに素敵な歌を歌われる方なんだ」と、お会いできるのをずっと楽しみにしていました。お会いして、まず感じたのは、saraちゃんの笑顔を見ると、私もつい笑顔になっちゃうなと。(笑)
そして、『イン・ザ・ハイツ』はとっても好きな作品で、楽曲もよく聴いていたのですが、saraちゃんの歌声には気持ちが乗っているというんでしょうか。「すっかりニーナだ」と思ったし、思っていることが伝わってきて、私も笑顔になったり、切なくなったり、テンションが上がりました!
これから稽古ではいろんな壁にもぶつかると思いますが、支え合いながら稽古していけたらいいなと思っています。

sara:ありがとうございます!私も映画『リトル・マーメイド』の吹き替え版の主人公アリエルを拝見したときに「こんな素敵な方がいたんだ」と衝撃でした。出演されている舞台を拝見して、最初に「豊原さんの声が好き!」と思いました(笑)。技術的にも素晴らしいですし、私自身がハスキーに近い声色なので、江理佳さんのように透き通ったのびやかな声に、ずっと憧れていました。今回、稽古場で江理佳さんの声を初めて聴いたときに「ヴァネッサだ!本物だ!」と、飛び上がるようにワクワクしました。この作品には、ラップの男性陣が主旋律で、そこに女性ののびやかな声が響く曲がありますが、江理佳さんの声がハマっていて「お客さんとして聴いていたい!」というのが、今の感想です。

-『イン・ザ・ハイツ』という作品について、魅力に感じているところは?
豊原:日本語バージョンの歌詞に初めて触れたときに、ラップになっていることで、故郷に対する思いや感情が、ぐっと伝わってきて、ラップで表現する意味を感じました。翻訳は難しいと思うのですが、日本語歌詞にも、熱いものを落とさずに込められているのがすごいんです。イベントでMicroさんのラップを聴いたときには、感動して泣きそうになりました。ラップがこの作品の大きな魅力のひとつなんだと、改めて気づきました。

sara:本当にその通りだと思います。イベントでラップを聴いて、彼らにとっては、感情を表したり、コミュニケーションしたりするツールがラップで「これはコミュニティの話なんだ」とすとんと心に入ってきました。 ラップには心が動き出すような魅力があって、聴いていると、自分もラップができるような気になっちゃう。面白いです!

豊原:リン=マニュエル・ミランダさんが、この作品でのトニー賞受賞式で、ラップでスピーチをされて、最後にポケットからプエルトリコの旗を取り出されたんです。とても素敵なスピーチで印象深かったのですが、イベントで楽曲を聴いて、改めて“故郷のために”というミランダさんの思いを感じました。それをお客様にも伝えられるように頑張りたいと思います。

sara:ミランダさんは、その後(トニー賞11部門受賞の)ミュージカル『ハミルトン』を作られました。従来のミュージカルとまったく違うものを作って、でも「確かにこれもありだな」と、全世界に思わせた人。その方の作品を、この日本で、しかも日本のキャストで今やることの意味や、それで生まれる、それでしか生まれない化学反応が、きっとあると思います。
そして、日本のお客様がどう感じ取って、自分と重ね合わせるのか。自分たちのコミュニティのことに思いを巡らせるのか、逆に、別のところで同じような思いをしているコミュニティの人たちへの思いに繋がっていくのか。共感できる登場人物がいると思うと、ミュージカルって、すごく素敵ですよね。

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-今、saraさんから「この作品から、それぞれのコミュニティやルーツに思いを巡らす」というお話がありましたが、豊原さんはいかがですか?
豊原:深い思いがあります。
sara:聞かせてください!
豊原:私もウスナビに似たところがあるんです。私はドミニカ共和国出身で、半分はドミニカ共和国の血だけど、ほぼずっと日本にいて、ドミニカ共和国に行った記憶がなく、家にもドミニカ共和国を感じるものがなくて、漠然とした憧れがありました。思い描いてるものがどんどん膨らんでいくところなど、ウスナビと重なる部分もありました。でも、いじめられることもあったし、「なんだか嫌だな」「恥ずかしいことだ」と思ったこともあります。ルックスだけではなく、アイデンティティとしても「自分はなにか?」「なにかある」と感じていたのです。でも教えてくれる人もいませんでした。
そんな私に一番刺さったのが、 12歳の時に初めてブロードウェイで観た『イン・ザ・ハイツ』でした。二幕でみんなが国旗を持って踊る場面で、行ったこともないのに、自分の国のことを誇りに思って、いつか帰りたいと国旗を掲げている人たちを見て「私はこの血を持っているんだ」と、初めて自分のもう半分を肯定できたような気持ちになりました。
日本に来てから初めてドミニカ共和国に行ったのは19歳で、その時に、父がポケットから国旗を取り出していたので、あちらでは特別なことではなさそうでしたけど。(笑顔)
でも、この『イン・ザ・ハイツ』は、私に自分の半分を誇りに思っていいと教えてくれたミュージカルでもあります。誇りを持って生きている人たちを描いているのが、素晴らしいと思っています。
sara:最高です!

-素敵なお話をありがとうございます。saraさんはニーナ役とご自身との共通点を感じますか?
sara:たくさんあります。ニーナが一番感情移入できる登場人物です。
大きな挫折があったり、申し訳ない気持ちや、誰にも何も言えないような複雑な思いがあったりする時は、家に帰っても、故郷に戻っても、「自分が安心できる場所って、どこだっけ?」という気持ちになります。みんなは変わらず温かく受け入れてくれるけど、「すごく安心できた場所だったのに、もうそうじゃない」と感じて、「自分にはそんな価値がない」と思ってしまう。それがこの作品でのニーナのスタートです。「自分はこの人たちの期待に応えられていない」という、息ができなくなるほどの辛さや、そのときに歌う♪Breatheという曲に、すごく共感しました。
たぶんニーナは理想が高くて「ここで育った自分が頑張んなきゃ」という責任感や、いろんなものを背負ってきた人だと思います。だけど、やがてゆっくり呼吸できるようになって、ベニーに「おかえり」と言ってもらって、重荷をひとつひとつ下ろしていく。いろんな人に助けてもらったり、怒られたり、みんなとの関わりの中で自分を取り戻して、もう1回夢に向かう決意をする。その一つひとつが刺さって、愛おしいと思うので、お客様にもそこを自分に引き寄せて観てもらえるようにしたいと思います。

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-楽曲の話がでましたが、歌も大変ですね
豊原:デュエットもあるし
sara:大きなソロ曲もあるし
ふたり:修行です!(笑)

-saraさんが、歌よりもダンスを先に学んでいて、ミュージカルへのきっかけもダンスだったと伺いました。
豊原:ジャンルは?
sara:シアタージャズとか、ジャズダンスから始めました。楽しかったです。
豊原:ダンス、楽しいですよね!

-この作品は歌もダンスもたっぷりですね。
sara:ただラテンの踊りやリズムが理解はできても、自分の身体に入ってないので、すごく難しかったです。
豊原:シンコペーションですね。
sara:そう!
豊原:私も裏拍のリズム感があまりなくて、ラテンダンスなどを勉強しなきゃと思っています。
sara:音楽監督の岩崎廉さんに「音に伸びがあったり、1つの音の音価、時間の感じ方も違ったりする」と言われた時に、世界が開けたような気がしました。「住んだ場所の天候や、流れてる音や、食べてるものでも、リズムって違うんだ」と。
豊原:食べてるものでも?!(笑)
sara:リズムが違うと、愛情表現も違うでしょ!(笑) どういうリズム感で育ってきたのかで、感情の持っていき方も日本人とは全然違うと思うのです。逆に言うと、それは役作りのヒントになると。面白いですね。
豊原:私の勝手なイメージですけど、saraちゃんはそういうグルーブを持ってる人のような感じがします。
sara:グルーブ感がある音楽は好きで、よく聴きます!「音楽をもっと感じたい!」という感じかな。(笑)

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-最後に本作の見どころ、おススメポイントをお願いします。
sara:大きく2つの魅力があるとしたら、よく取り上げられるものは音楽。もうひとつは物語のメッセージで、この作品には“ホーム”というキーワードがあります。
今、この時代はボーダレスで、“ホーム”は1つでなくていいし、いろんなところに自分の居場所があっていいと思うのです。「こんな作品あったな」「あの人も頑張ってたから私も1歩踏み出してみるか」と、人生のひと節一節で思い出して、ちょっと頑張れる、そういうことが“ホーム”だという気がしています。音楽や好きな作品が“ホーム”になれると思うし、私が自分の居場所を考えた時に、音楽や好きな作品が“ホーム”として大きな存在になると思います。そして「この作品がいろんな人の“ホーム”になったらいいな」と思っています。
この作品の中ですごくいい言葉だと思っているのが、ベニーがニーナに言うセリフです。「お帰り」と言ってもらえることは、なかなかないことだけれど、音楽や演劇や劇場にも、それができると思います。それがこの作品を上演する意味かなと思うし、そんなふうに助け合って生きていきたいと思います。この作品がそんな“みなさんのホーム“になれるように、稽古を頑張る所存です!

豊原:ステキです!! この作品は、一見すると、すごく遠いニューヨークに住む人たちの話ですけれど、私の演じるヴァネッサは日本で例えると、田舎で暮らしているけれど、とても東京に行きたがっている女の子です。周りの人はみんな方言で喋っているけど、自分は絶対に標準語で話しますし、「いつか絶対にここから出ていくんだ」という思いを強く持っています。
私も関西から上京して来たのですが、大人になると、特に故郷を離れると、自分のルーツや故郷について考えることがあると思います。その時に思い浮かべるのが、実家じゃなくても、恋人の腕の中やワンちゃんでもいい。そんな自分にとっての安心できる場所として思い出してもらえるような温かい作品になるように、この作品が日本のみなさんに身近に感じてもらえるように、素晴らしいキャストのみなさんとたくさん話し合いながら、お稽古を頑張っていきたいと思っています。

ヘアメイク:スギノトモユキ/野中真紀子 (eclat)

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Broadway Musical 『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』
原案・作詞・作曲 リン=マニュエル・ミランダ
脚本 キアラ・アレグリア・ウデス
演出・振付 TETSUHARU
翻訳・訳詞 吉川徹
歌詞 KREVA
音楽監督 岩崎廉
出演
ウスナビ:Micro [Def Tech]/平間壮一(Wキャスト)
ベニー:松下優也

ニーナ:sara
ヴァネッサ:豊原江理佳
ソニー:有馬爽人

ダニエラ:エリアンナ
カーラ:ダンドイ舞莉花
ピラグア屋:MARU
グラフィティ・ピート:KAITA

ケヴィン・ロザリオ:戸井勝海
カミラ・ロザリオ:彩吹真央

アブエラ・クラウディア:田中利花

ハイツの人々: SHUN MAOTO LEI ‘OH 鈴木恒守
SATOKO MORI TokoLefty 根岸みゆ 秋野祐香

スウィング:梅津大輝 江崎里紗

公式HP https://intheheights.jp/
公式X @intheheightsjp

★東京公演:2024年9月22日(日・祝)~10月6日(日) 天王洲 銀河劇場
アフタートーク対象公演/登壇者
9月26日(木) 13:00公演 Micro、松下優也、豊原江理佳、エリアンナ
9月27日(金) 13:00公演 平間壮一、sara、有馬爽人、KAITA
9月29日(日) 12:00公演 Micro、sara、戸井勝海、彩吹真央、田中利花
10月4日(金) 13:00公演 平間壮一、豊原江理佳、有馬爽人、ダンドイ舞莉花、MARU

★京都公演:2024年10月12日(土)~13日(日)京都劇場
アフタートーク対象公演/登壇者
10月12日(土) 17:30公演 松下優也、sara、MARU、彩吹真央

★名古屋公演:2024年10月19日(土)~20日(日) Niterra 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
アフタートーク対象公演/登壇者
10月19日(土) 13:00公演 平間壮一、豊原江理佳、有馬爽人、エリアンナ

★神奈川公演:2024年10月26日(土) 大和市文化創造拠点シリウス 1階芸術文化ホール メインホール

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