KAATと新ロイヤル大衆舎が協同して挑む舞台『花と龍』が、2025年2月8日(土)から2025年2月22日(土)まで、KAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演される。
原作は、芥川賞受賞作家・火野葦平が自身の両親をモデルに、激動の時代を生きるゴンゾと呼ばれる荷役労働者たちを中心に描いたスリリングな長編小説。幾度も映画化されてきた人気の物語が、齋藤雅文の脚本、長塚圭史の演出、山内圭哉の音楽で、新たにKAATの舞台に登場する。
出演は、新ロイヤル大衆舎の福田転球、山内圭哉、長塚圭史、大堀こういち、そして安藤玉恵、 松田凌、村岡希美ら個性あふれる俳優たち。
さらに客席前方には桟敷席を設置。舞台上には地域の店舗が屋台として並び、観客は開演前の舞台で飲食できるという、前代未聞!楽しみふくらむ舞台だ。(開演中も桟敷席、一階席のお客様は飲食ができる。)
2024年末に、稽古を終えた松田凌を訪ね、本作への意気込みを聞いた。
―この作品との出会いは?
この作品にご出演される方々が、僕にとっては昔から作品を拝見させていただいていた方ばかり。求めていた場所(舞台)のひとつだったので、「願ってもないお話しをいただいた!」という感じでした。
―松田さんが高校生のときにスズナリで観劇されて俳優になることを決心されたというエピソードは有名ですが、昔からご覧になっていたというのは、スズナリ以前からよく観劇されていたのですか?
幸いにも、叔母から映画、演劇、音楽、漫画など、サブカルチャーを教えてもらっていたので、その影響はとても大きくて。僕が最初に連れいってもらった舞台は、小林幸子さんのコンサートだった気がします。まだ小学生だったので、元々は興味が無かったのですが、観たらとても面白くて。それからは叔母から「今度、こういう公演があるらしいよ」と聞くと、僕が「観に行きたい!」とお願いして、一緒に行ってもらうようになりました。自分から演劇に惹かれていったと思います。
初めて東京に行って観たのが、その高校2年の冬のスズナリでの観劇でしたが、それから高校を卒業して上京するまで、あと2回ぐらい、叔母と一緒に東京に舞台を観に来ました。
―本当に演劇がお好きだったのですね。さて、すでにお稽古が始まっていると伺いましたが、お稽古はいかがですか?
まだ稽古が始まって間がないのですが、皆様のお芝居に「素敵だな」「とてもいい場所にいるなぁ」と感じて「俺もこの座組のひとりなのだから頑張らねば」と思っています。正直言いますと、新ロイヤル大衆舎は、僕にとっては演劇のドリームチームのひとつなんです。なので、稽古が始まって間もないこともあり、緊張とでもいうのでしょうか。「僕が福田転球さんとふたりでお芝居をしている!」「山内圭哉さんが、大堀こういちさんが稽古場にいる!」「長塚圭史さんが演出されている!」というような気持ちが、まだ拭えないでいます。
20代の自分なら、そういう自分の気持ちを素直にお伝えできるかな、とも思うのですが、30代になって「まだ若手です。お邪魔します」というような気持ちでは絶対にいけない。こんな気持ちは俳優として早く消して「皆様と並べるように」と思って稽古しているのですが…。
今日も初めて稽古したシーンが転球さんとふたりのお芝居で緊張してしまい、セリフはもちろん入っている(覚えている)のに全然出てこなくなってしまいました。本当に悔しくて恥ずかしくて。
でも、そうなってしまうくらい、この稽古場は自分にとって嬉しい場所です。これからは自分なりにしっかりと積み重ねて、この作品の一翼を担えるようにしっかりと稽古場に立ちたいと思っています。
―松田さんにとってのドリームチームですか!作品はいかがですか?
世界中のどんな国でも、時代によって生き方も人も変わると思うんです。その中で、この『花と龍』の激動の時代の日本に生きた人たちの繋がり、支え合い方、愛し方、働き方や生き方は、日本人として忘れてはいけない気がしています。この時代のように生きることは、今の世の中ではできないかもしれませんが。
フライヤーにも「たぎる生命力の物語」と書いてありますが、その生命力の強さ、義理や人情や、そういう時代の文化や匂いは、感じていただける作品ではないかと思っています。
そして、福田転球さん演じる玉井金五郎は男が男に憧れるような男なので、皆さんも玉井金五郎に惚れてしまうんじゃないかな。僕が演じる森新之助は玉井金五郎と盟友なので、玉井金五郎の人生に交わることができるのが、とても嬉しいんです。これからの稽古期間で転球さんに「頼りになるな」と思っていただけるようになりたいです。
―少し台本を拝見させていただきました。登場人物が生き生きとして、躍動感いっぱいだと感じました。
生々しさや、時代の匂いを感じるような瞬間や、ちょっと砕けた笑いや行き交う喧噪の中でのアクションシーンもありますが、長塚さんが「生々しさも必要だけれど、お芝居として成立させなくてはいけない」「今作はリアルではなくてリアリティを持って、俳優として情景が浮かぶようなセリフを放つお芝居ができたら、2倍、3倍面白くなる脚本だ」とおっしゃっているので、お芝居らしい演じ方もすると思います。僕もこれから長塚さんがどういうお芝居に作っていかれるのか、楽しみにしています。
―九州が舞台ということで、セリフも九州弁でおしゃべりになるのですか?
森新之助は、はじめは山口弁で、後半は北九州弁で話します。僕は生まれも育ちも関西ですが、九州という土地が好きなんです。祖父が大分で、祖母が鹿児島なので、少なからず「自分には九州の血が流れているんだ」と思いますし、九州男児と言えば器が大きい、人を大切にする、どっしりとした信用できる人が多いイメージがあると思うので、そのあたりは大切にしたいです。
―そして、もうひとつ。物語の面白さに加えて、舞台上の屋台で観客が食べ物を食べられると聞いてびっくりしました。
フライヤーに山内さんと長塚さんとKAATの制作課長の伊藤さんの話が載っているので、是非フライヤーを手に取って見ていただけたらと思います。
出演するにあたって、長塚さんから「今作はこういう仕掛けをしたい」とお話しを伺った時には、僕も「ワクワクするなぁ」と少年のような気持ちで聞きました。面白そうですよね。ホント、どうなるんですかね?(笑)
観劇に来てくださる方々も、自分を知って舞台を観に来てくださる皆さんも、観劇への固定概念が変わるのではないかと思いますよ。楽しみにして来てもらえたら嬉しいですし、僕も楽しみです。
―この2024年を振り返っていただきつつ、2025年への抱負をお願い致します。
2024年を漢字ひと文字で表すなら「長(おさ)」です。今年は「舞台『舞台刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯」で隊長になり、その作品とスターフライヤーさんとのコラボで飛行機にプリントしていただいた時には機長になりました。舞台『東京リベンジャーズ』ではずっと総長をやり、リーディングミュージアム〜東京国立博物館〜「東京方舟博覧記」で館長を、「進撃の巨人」-the Musical- では兵長と、一年中、「長」でした。そうした重き役を自分が演じることができることは、たいへんありがたいことでもあり、不思議に思っていることでもあるのですが、すこしでもそれに相応しい俳優に近づけていたらと思う一年でした。
僕は新しい場所が好きです。カッコつけた言い方をすると、新しい世界に行くのがとても好きです。この『花と龍』は、まさに新しい世界。初めてご一緒する方々もいらして、演出していただいたことがない長塚さんの下で舞台に立てる。まさに僕が望んでいた場所です。
僕が俳優を続ける理由のひとつは、そういった新しいものと出会うためです。なぜかというと、とても心が潤うから。自分が俳優を志したあの時の心の灯は、コロナ禍やいろいろなことで消えかかる瞬間もありますが、そこにまたきちんと栄養を与えると消えないようにできる。大きくできるんです。
この一年も、心を焚きつけられるような一年にしたいと思っています。ということは、新しい出会いと挑戦がいっぱいあると思っていただけたらと思います。
―ニューヨーク公演でも、新たなものを獲得されましたか?
そうです。ニューヨーク公演も飛行機にプリントされるることも、人生に一回有るか、無いかのようなことで、貴重な経験をさせていただいたと心から思っています。ニューヨークの舞台には、これからも機会があれば立ちたいです。
―心の炎に薪がどんどん足されているようですね。では、最後に作品を楽しみにしている方、そしてまだ迷っている方にメッセージをお願い致します。
まずこのインタビューをご覧になってくださっている方へ、『花と龍』を是非とも観に来ていただきたいですし、いろいろな方に伝えていただけたらと思っています。ものすごく面白い瞬間に立ち会える作品、いい出会いができる作品になると思います。
そして、2025年も松田凌という俳優に注目していただけたら、興味を少しでも持っていただければ、面白い出会いがいっぱいある…かもしれません。(笑) 楽しみにしていてください。
―松田さんがどんどん新しい世界に連れていってくださるんですね?
はい。必ず! 大きなことをいうと、後悔させない自信があります。
ただ自分でも「気をつけないと」と思うのは、僕はたまに燃えすぎてしまう時があるんです。真っ赤な炎だけじゃなくて、冷たく静かに見えても実は火力の高い、青い炎も覚えたいと思っています。
―『花と龍』そして、これからの松田さんのご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。
KAAT×新ロイヤル大衆舎 vol.2
『花と龍』
2025/2/8(土)~2025/2/22(土) KAAT神奈川芸術劇場 <ホール>
【原作】火野葦平 【脚本】齋藤雅文
【演出】長塚圭史 【音楽】山内圭哉
【出演】
福田転球 安藤玉恵
松田凌 村岡希美 稲荷卓央 北村優衣
山内圭哉 長塚圭史 大堀こういち ほか
【料金】桟敷席・一階席:8,800円 / 神奈川県民割引・平日夜割:7,900円 / 二階席:6,000円 / 24歳以下:4,400円 / 高校生以下:1,000円 / 満65歳以上:8,300円 / やさしい鑑賞回(2/19水):3,500円
公式HP: https://www.kaat.jp/d/hanatoryu
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