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sara「言葉に耳を傾けてみると、見えてくるものがすごく豊かな2作品」本日初日!サイモン・スティーヴンス ダブルビル『ポルノグラフィ/レイジ』インタビュー

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2025年2月15日(土)~ 2025年3月2日(日) に世田谷パブリックシアター シアタートラムにてサイモン・スティーヴンス ダブルビル『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』が上演される。
英国を代表する劇作家のサイモン・スティーヴンスの異なる時期に書かれた、異なる場所を舞台とする2作品を、同じ演出家、同じ出演者で同時上演(ダブルビル)する公演で、連続爆破テロ事件を題材として、被害者・実行犯などの日常生活を7つのオムニバスで描く『ポルノグラフィ』を一幕に、大晦日の都市の混乱を群像劇で描く『レイジ』を二幕で上演する。

演出は、白井晃、野村萬斎、蜷川幸雄、サイモン・マクバーニーといった名だたる演出家の作品に演出助手などで参加し、厚い信頼を得てきた桐山知也。亀田佳明 土井ケイト 岡本玲 sara 田中亨 古谷陸 加茂智里 森永友基 斉藤淳 吉見一豊 竹下景子という豪華な俳優陣が出演する。

今回、Astageのインタビューにご登場いただくのは、ミュージカルに、ストレートプレイにと大活躍中のsaraさん。『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』という作品の魅力やダブルビルの面白さについて語ってくれた。

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―2作品を一幕と二幕で上演するとのこと。どんな役を演じるのですか?
違う場所を舞台に、違う時期に書かれた2作品なので、出演者全員が一幕と二幕でまったくの別人を演じます。ただ、亨(田中亨)くんと私だけは一幕と二幕で別人だけれども、どちらでも弟と姉とを演じます。

―脚本を拝見させていただいたのですが、『ポルノグラフィ』には役名がなく、2作品ともト書きがほとんど無く、戸惑いました。saraさんは、初めて脚本を読んだときから、稽古を経て作品についての思いに変化はありましたか?
この脚本を初めて読んだときには、自分の出演シーンはなんとかイメージできたのですが、その他のシーンはイメージすることが難しかったです。どの作品でも、読み合わせで芝居が立ち上がっていくときには発見が多いものですが、この作品の初めての読み合わせで印象がすっかり変わりました。人の声を通すと、すごく腑に落ちるという感じがして驚かされました。百戦錬磨の先輩方ばかりということも大きいと思いますが、みなさんの声に言葉を保証する豊かさのようなものがあって、大勢で会話する場面では、声に出して読み進めるほどにテンポが生まれて、重ねていけばいくほど脚本には書かれていないことが立ち上がってきて。そして立ち稽古に入ると「セリフがない時に、その人はどうしているんだろう」というところから、 脚本には書かれていない人と人との関係性などが現れてきて、毎日稽古場で「勉強になる!」と感じています。桐山さんの発想も素晴らしくて、舞台美術もすごいんです。上演するからこそ、この戯曲の面白さが立ち上がってくるのだと思いました。

―すごい舞台美術とは?
華やかな舞台セットということではありません。役者としては、ほんとに頼るものがない、逃げ込む場所がない感じで、ボクシングのリングのようなイメージを受けました。客席と舞台は隔てられてはいるのですが、俳優は縦横無尽に動き回り、舞台と客席の垣根が無い感じが、この作品らしいと思います。引いてみることができないぐらいに言葉のシャワー、言葉のナイフが飛んできて、お客様も傍観することができない、逃げられない。「誰にでもありえる」という感覚になるのではないかと思います。

―これだけ豪華なキャストの方が出演されて、しかも縦横無尽に動き回る?!
もう目が忙しくて、相当びっくりすると思います。特に『レイジ』は目まぐるしくシーンが変わっていきます。桐山さんは、この2作品の同時上演にあたり“世界”というキーワードをよく出されています。この戯曲が書かれた時代は今とはちょっと違いますけど、それでも他の先輩方の芝居を通して見ていると「現代をよく映し出す演出、演技、舞台美術になっているんじゃないかな」「今の世界が立ち上がってくる」と強く感じています。

―2作品を同時に上演する面白さを感じておられる?
亀田さんが「状況や相対する人が違うと人は変わるから、ひとりの人間の人格やアイデンティティは、意外に揺らいでいるものかもしれない」とおっしゃっていました。ある人に対してはものすごく強く出るけれども、ある人に対しては歯が立たないみたいなこと、ありますよね。今回は、人と人との関係性がテーマになっている配役であり、仕組みになっていると思うので、そういう目線で見るとすごく面白いと思います。『レイジ』と『ポルノグラフィ』の登場人物は別人ですけれど、でも同一人物でもあり得たかもしれないという世界観があぶりだされるような演出になっているのではないかなと思います。
同じ状況や境遇になったことがなくても、人との間に流れる空気感や、言葉を言ってしまった後の感覚や、言葉を受けた後の感覚に、「なんだか、知っているな」と思うようなことがありませんか。 私自身、お稽古場で他の方々の芝居を見ていて、「この感覚、この時間の感じ方ってあるな」と思うことがあります。サイモン・スティーヴンスさんの言葉がすごく巧みなので、いつの間にか、自分自身がリングに立たされているような感じがしたり、誰かに自分を投影したりしながら観てしまうかもしれないと思います。

―亀田さんは文学座の先輩でもありますね。共演はいかがですか?
ずっと一方的にいろんな作品で拝見させてもらってきて、稽古場でご一緒するのは今回が初めてで、凄まじいといいますか・・・すごいです。立ち稽古の初回から、ご自身が考えておられる役が出来上がっていて…。今回は特に全員、言葉の量が多いので、それをどういう風に立ち上げるかに、俳優さんのそれぞれの個性が出ていて、亀田さんは本当に表現が豊か。ひとつの言葉のイメージが本当に多くて、アンミカさんじゃないですけど、「200色あんねん!」といいたくなるような感じです。しかも、それがすごく鋭く刺さってくる。そんな亀田さんと稽古場でご一緒して、質問もできたりする。今、すごく有難い環境にいます!

―「演劇が楽しくてしょうがない」という感じが伝わってきました!
「最高!」と「苦しい!」のハイブリッドみたいな感じです。(笑)

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―saraさんの今後の抱負や目指している姿をお聞かせいただけますか。
昨年はミュージカルとストレートプレイを行き来するようなスケジュールで活動していました。やればやるほど、ミュージカルとストレートプレイは、同じ芝居という枠組みですけれど、全然違っていて、でもどちらも同じぐらい好きで、両方の魅力を改めて再確認したような1年でした。特にストレートプレイに関しては 去年はシェイクスピアの『オセロー』や、『NOT TALKING』という4人のモノローグだけの朗読劇をやって、ミュージカルだと、気持ちや考えなど大事な部分は、歌になって表現されるのですが、ストレートはそこが、ストレートならではの曖昧さというのか、余白というのか…私が尊敬してる鵜山(仁)さんはノイズという言葉を使われますけれど・・・はっきり見せずに、関係性などで長い時間をかけて表現していく。昨年はそれを面白いと感じた1年でした。なので、今回も含めて、ストレートプレイはこれからもすごく探求したい、がっつり取り組んでいきたいと思いますし、ストレートをやればやるほど、またミュージカルのことが好きになっていくので、両方とも、興味がある、やりたいと思ってることに挑戦していきたい。ビビッと来たものをとにかくやってみようと思ってます。どうなりたいというよりも、これまでに出会った作品や、桐山さんや素晴らしい先輩方との出会いが今の自分にすごく影響していますし、そうやって作品ごとの出会いを大切にして、興味を持ったものをまた次の作品に注いでいくというようなサイクルを、これからも続けていきたいと思っています。

―では、最後にsaraさんから、お客様へ『ポルノグラフィ/レイジ』の観劇おススメポイントを教えてください。
たくさんありますけれど、やはり見ていて面白いなと思うのは、人間同士の関係性です。『ポルノグラフィ』に関しては、私と亨くんと、吉見さんと(岡本)玲さんのシーンだけが2人芝居で、他はほぼひとりでモノローグのようなかたちで進んでいきます。ひとり語りの場面では、物語を聞いているようでもあり、その人の主観だけで話すので、「なぜ、この人はこういう決断をして、こういうことになったのだろう」と謎解きをするように考えさせられずにはいられない時間になると思います。しかも、『ポルノグラフィ』には役名がないのがポイントで、自分のことではないとはいえ、「この感情って、みんな持っているな。その一線を越えるか、超えないかは本当にあと一歩の差」だという気持ちでご覧いただくと、思わぬ発見があったり、自分が今まで立ち入ったことがない領域…人間の根源的な部分に気付かされたりするのではないかと思います。二人芝居では、駆け引きの面白さがあるので、言葉に耳を傾けてみると、見えてくるものがすごく豊かな2作品なので、そこを楽しんでいただきたいと思います。

★メインビジュアル【文字なし】PORNOGRAPHY-RAGE_A4-h1_mainvisual-2_ss2

サイモン・スティーヴンス ダブルビル
『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』
2025年2月15日(土)~ 2025年3月2日(日) シアタートラム
約3時間15分(休憩15分含む)
1幕『ポルノグラフィ』1時間55分/休憩15分/2幕『レイジ』1時間5分
【作】サイモン・スティーヴンス
【翻訳】小田島創志(『ポルノグラフィ』) 髙田曜子(『レイジ』)
【演出】桐山知也
【出演】
亀田佳明 土井ケイト 岡本玲 sara 田中亨
古谷陸 加茂智里 森永友基 斉藤淳 吉見一豊 竹下景子

公式HP:https://setagaya-pt.jp/stage/16041/