EXILEのパフォーマーとしてライブやTV等で活躍し、舞台にも勢力的に臨む橘ケンチが、手塚治虫の名作を原作にしたミュージカル『ドン・ドラキュラ』(4月9日より公開)の主人公ドン・ドラキュラ役を務めることとなった。世代を問わず誰もが知っている名作とのコラボレーションに意欲をみせる彼が、舞台稽古の忙しい中、作品の見どころと役者としての想いを熱く語ってくれた。
― 舞台稽古の様子はいかがですか?
楽しいですよ。共演者の人たちと稽古しながら、それぞれの芝居のスタンスとか人間性がわかってくるので。舞台は映画やドラマなどとはまた違う感覚があるので新鮮ですね。
― 今作品のオファーを受けた理由は?
以前からお仕事をご一緒させていただいているプロデューサーの松田さんから、「ケンチには役者としてアカデミックなイメージがある。手塚治虫さんや伊坂幸太郎さん、太宰治さんなどの漫画家や文学者の方とコラボレーションしたアカデミックなイメージを持った作品を演じるのは、ケンチの役者としてのプランディングにピッタリ合うのではないか」とおっしゃっていただいたんです。その話に共感できましたし、ましてや、これまでたくさん読んできた手塚先生の作品。そんなステキな話でしたら是非やりたいです!と伝えました。
―父親役、ましてや人間ではないドラキュラ役と聞いたときの率直な感想を教えてください。
すごく興味のある分野でした。僕はきっと変身願望が強いと思うんです。特殊メイクするのも好きですしね。普通の人間を演じることも確かに面白いですが、全く違う存在というのは、自分の想像力とかアイディア次第なので、ぜひ挑戦したいと思いました。
実は僕、以前から「ドラキュラっぽいね!」って言われることもあって・・・ついに来たか!って感じでしたよ(笑)。
― 今回のドラキュラは、美女に弱くて惚れっぽい、ちょっと気が弱くて不器用というちょっとお茶目なキャラクターですよね?
ドラキュラが世界的にブームになった時は、一般的に人々を恐怖に陥れる妖怪のような存在だったのですが、手塚先生が書かれた『ドン・ドラキュラ』は、そのイメージを全部ひっくり返すようなキャラクターで、発行当時でもとても斬新だったようです。見た目はドラキュラだけど、性格は三枚目でおっちょこちょい。娘のチョコラにもすぐ怒られちゃうんです。すごく人間的なキャラクターに表現されています。
― そんな愛すべきドラキュラと、ケンチさん自身が似ている部分はありますか?
あると思いますよ。僕も二枚目な人間ではなくて三枚目な部分も多くて・・・(笑)。これまで演じた作品の中にもコメディー的なものもありますしね。
― ドン・ドラキュラは女性に弱いようですが、ケンチさんは好きな女性の前ではどうですか?
僕はガンガン行くほうかもしれないですね(笑)。好きな女性には自分からアタックするタイプだと思います。ドン・ドラキュラと似ているところもあるし、違うところもありますね。
― ドン・ドラキュラにはチョコラという娘がいますが、ケンチさんがもし娘を持ったらどんなお父さんになると思いますか?
今回、チョコラ役の神田愛莉ちゃんと親子を演じさせてもらって、娘さんを持つ世のお父さんの気持ちが少しだけ分かったような気がします。僕が娘を持ったら大変かもしれないですね。彼氏なんか連れてきた日には・・・ハハハ、大変ですよ~!
娘は超~可愛がると思いますね、きっと。だから娘に寄ってくる男には超~厳しいですよ(笑)。
― いつもはEXILEのパフォーマーとしてステージに立つケンチさんですが、演劇の舞台はどんな刺激がありますか?
これまでも多くの演劇の舞台に立たせてもらいましたが、今回の舞台はいつもとは少しスタンスや取り組み方が違うんです。もちろん、今までも役を精一杯演じてきましたが、ありがたいことに、今回はプロデューサーさんから「せっかくだから、ケンチの好きなことをやろうよ」と声をかけていただき、製作段階から参加させてもらっています。キャスティングや演出に関しても僕の意見を取り入れてもらいました。今回は、僕が表現したいものをたくさん出すことができる舞台になると思います。自分がアイディアを出し、それを具現化できるということで、自分にとってまた違うやりがいも出てきました。もちろん主演として役を務め上げることも大事ですが、それ以外に今回の興行がどんな影響力をもって、どういう広がり方をしていって、どのように楽しんでもらえるかということを考えるいいタイミングになりました。
橘ケンチが初めて舞台に立ったのは、EXILEに入る前、二代目J Soul Brothers時代の2008年5月。MATSU&USA主演の劇団EXILE第二回公演 『CROWN~眠らない、夜の果てに・・・』でアンサンブルとして舞台に立った。それから主役を演じ今に至るまで、彼の中で芝居の魅力、役者としての想いがどんどん大きくなっているようだ。
芝居って、やればやるほど好きになりますね。僕は、追求することが好きなんです。例えば、自分が演じる役をとことん追求したくなる。十分向き合ってきたけれど、違う角度から見てみるとこんな表現方法もあるなと思えてくるし、どこまで突き詰めても答えがなくて・・・。そうやって表現者として追求していくことが、自分自身の成長につながっている気がするんです。それは、芝居をしていて日々、一瞬毎に感じます。そんな話をEXILEのメンバーともよく話すんですよ。
稽古場では自分が出るシーン以外でも見学しています。単純に人の芝居を見るのが好きなんですけどね。「役者ってなんだろう」っていつも考えながら日々稽古をしているところもあるけれど、自分の妄想や想像が膨らんで一人でニヤニヤ楽しんでいるところもあるんです(笑)。自分だけで作る役づくりと共演相手との距離間の中で築いていく役づくりも両方必要ですから、全体を見るということも大事ですね。
― EXILEのメンバーのみなさんから、今回の出演に関して何か声をかけられましたか?
そうですね、各々がいろいろな映画やドラマなどにも出演しているので、お互いに「今度、こういう作品やります」「OK、観に行きますね~」という会話はよくしています。そうそう、このポスターチラシのビジュアルはみんなに褒められましたよ。これ、かなりこだわって作ったんです。カッコよくてミステリアスなドラキュラを全面に出してみました。“ドン・ドラキュラ”とのギャップも狙ってね。
―ドラキュラのイメージがピッタリでステキですね。
ありがとうございます! こういうの僕、似合うんですよ(笑)。
― これまでも映画、舞台、ドラマなど多くの「ドラキュラ」が演じられてきました。今回の『ドン・ドラキュラ』で伝えたいことは何ですか?
いろいろな意味で全て裏切って新しいドン・ドラキュラ像を作りたいですね。人間の本質をあぶり出して、それを問いかけるような。世界では戦争やテロなど悲しい出来事がありますが、それは人間が生み出しているもので、人間だけが自分が生きること以外に、感情や考えだけで仲間であるはずの同じ人間や他の生物を殺してしまう。それを解決し乗り越えて行くために必要なものは、やはり人間同士の愛ではないでしょうか。今回の舞台ではドラキュラと娘の親子愛に着目していただければいいなと思っています。
― 『ドン・ドラキュラ』の他に、好きな手塚治虫作品はありますか?
一番よく読んだのは、『ブラック・ジャック』です。強きをくじき、弱きを助けるところが子供心にカッコいいキャラクターだなと思っていました。
― 今後演じてみたい役はありますか?
今回のドン・ドラキュラのように、振り切った役は演じていて面白いのでいろいろやってみたいです。人間ではない役がいいですね。妖怪でもいいし、ロボット役でもいいし、二重人格のキャラクターにも興味があります。『ダークナイト』のバットマンの宿敵ジョーカーもいいなぁ。あのキャラクター大好きなんです。
― 英語と中国語もお得意のケンチさんですから、今後海外の舞台に立つこともあるのでは?
やってみたいですね、興味あります。今、EXILEは「日本を元気に!」というテーマで活動していますが、日本全国で、ライブや舞台を生で届けていくことはもちろんですが、日本の人々はスポーツ選手や役者など、海外で挑戦する人をよく応援しますよね。そういう日本の盛り上げ方もあるのかなと思います。将来的にチャンスがあれば、ぜひ挑戦したいですね。
― 公演の見どころと、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。
今回は僕が一番得意としていること、自分の能力を最大限に活かした舞台になると思います。EXILEのライブ経験で培われた、体を使った表現ができる役者として、芝居とライブの相まった新しいエンターテインメントをお届けします。劇場全体を『ドン・ドラキュラ』ワールドにして、その世界観に浸って楽しんで欲しいです。そして何かを感じとって考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。ぜひ、血を吸われに来てください!(笑)
手塚治虫×橘ケンチ(EXILE)
舞台『ドン・ドラキュラ』
ルーマニアのトランシルヴァニアから現代の日本に移り住んできたヴァンパイア親子。練馬の屋敷に執事のイゴールと住んでいる。その名も高きドラキュラ伯爵は、人間嫌いだけれど美女には弱い。父の干渉をちょっぴり疎ましく思う、本当は父親思いの中学生の娘チョコラ。ありとあらゆる手段でドラキュラを駆逐しようとするヘルシング教授や、ドラキュラの存在を信じない人々を巻き込んで織り成すドタバタコメディ。
公演期間:2015年4月9日(木)~14日(火)
劇場:AiiA 2.5 Theater Tokyo
原作:手塚治虫
脚本・演出:徳尾浩司
出演:橘ケンチ(EXILE) 原田夏希 池田鉄洋 神田愛莉 根本正勝
平田敦子 野添義弘ほか
プロデューサー:松田誠
主催:ネルケプランニング
公式ホームページ:http://www.nelke.co.jp/stage/don_dracula/
公式Twitter:https://twitter.com/dracula_stage
EXILE Official Website:http://exile.jp/index.php
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