城田優、瀬戸康史、和田正人などを輩出しているD-BOYSの弟分で「演劇で関西を元気にしたい」という大きな志のもと、大阪で定期的に自主公演を行っている演劇集団、劇団Patch。
2012年10月の初公演以来、公演を重ねて、今ではメンバーが多くの舞台やドラマ・映画などで活躍。関西では人気も実力も認められる劇団へと成長した。
2016年春、劇団Patchは少年ジャンプ連載中の人気時代劇ギャグ漫画『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』の舞台化に挑戦。初めてのミュージカルとなった「Patch stage vol.8 浮世戯言歌劇『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』高尾山地獄修業編」は大反響を呼び、早くも再演が決定。10月に「天晴版」にグレードアップして上演される。
Astageでは、この作品で初演に続き主演をつとめる磯部磯兵衛役の井上拓哉にインタビュー。劇団Patchの「磯ミュ」にかける思いを聞いた。
「Patch stage vol.8 浮世戯言歌劇『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』高尾山地獄修業編」母上役の中山義紘インタビューはこちらから!!
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―再演を聞いた時はいかがでしたか?
ギャグ漫画の「磯部磯兵衛物語」を舞台化するときも驚きましたが、再びあの磯兵衛がやって来るとは自分でもびっくりしました。1回経験してお客さんの反応も分かっているので、今度は余裕をもってできるかなと楽しみだとも思いました。
―初演のお客様の反応はどうだったか…。それを井上さんがどう受け止めて次回に向けて考えていることを教えて下さい。
初演の時には王道のギャグ漫画で主役を演じるということで、本番前にはお客様の反応が気なっていて、正直言うと不安もありました。でもいざ本番をむかえてみると、自分が予想したのではないところで笑いが生まれて「こんなところで笑ってもらえるのだ」と感じました。そこから次に活かしたいと思っているのは「ここでは笑ってくれるだろう」と余裕を持つのではなく、「ここでも笑いをとるの?!」という予想外の笑いをお届けできたらと思います。
―関西人に「おもしろいこと、言って」と期待してはいけない…と言われたのですが…。
関西人すべてが面白いことを言えるわけではないので。(笑)
―そのあたり、井上さんご自身のキャラはいかがですか?
僕は劇団Patchの中では年下の方で、先輩や年上の方の中にいたので、強引に皆をひっぱっていくのではなく、一歩引いたところから冷静に周りを見てしまう。「冷めてる」とか、よく言われます。
―でも「磯兵衛」ではひっぱっていく立場ですよね?
そうなんです。ただ今回は座長としてひっぱっていく意識は表に出さずに、自分が一生懸命がんばって役をまっとうすることで周りがついてきてくれたら、僕が目指す座長…僕らしい座長になるのかなと思っています。
―「背中を見せてついて来い」というのでしょうか?
そんなかっこいいことは言えないですけれど、理想としてはそうですね。
―磯部磯兵衛というキャラクターと自分自身との共通点は?
磯兵衛はニートで「楽をするにはどうするか」を懸命に考えています。そんな気持ちは、僕が小中学校の男の子だった頃を思い出すとなんとなく共感できる気がします。女の子に対する気持ちや、エッチな本への好奇心とか、学校さぼりたいとか…そのあたりは昔の自分とリンクして「分かるなぁ」と思えました。役づくりとしては、磯兵衛はただのヘタレじゃない、愛されている漫画のキャラですから、それを舞台の上で表現しなきゃならないんです。でもやり過ぎてもいけない。笑いをとりにいくと滑ってしまったりしますし、そのさじ加減が難しくて悩んだ部分でした。
―笑いをとるのは難しいですか?
難しいです!稽古では何回もやるので、周りも次第に笑わなくなる。すると、「ホントにおもしろいかな?」と不安に思えてくるんです。でも本番となると、お客様も結構笑って下さいました。自分も毎回新鮮な気持ちで挑むということを心がけていました。
―漫画というモデルがはっきりある演技はいかがでしたか?
僕自身も劇団Patchとしても、初めての原作があるものを舞台化して2.5次元の世界に足を踏み入れました。最初は「キャラクターがあるんだから、絶対簡単だろう」と思っていたんですが、キャラクターを目指してやってみると、何か物足りないというか、未完成な感じがする。そこに自分の個性を少し加えていい感じにしていくようにしました。
―自分の個性とは、どんなところですか?
僕はかなりなまけもの…マイペースなんです。そのあたりがリンクして面白いなぁと思いました。そしてこの作品はミュージカルなんです。歌って踊ると、どうしてもキャラにブレが出てしまう部分がある。歌と踊りで混乱した時もあったのですが「役のまま楽しむ」という楽しみ方を本番中に見つけることができました。
―初演の「高尾山地獄修業編」から「天晴版」とタイトルが変わりますね。そのあたりは?
天晴版と題名が変わり、キャストも一部変わります。さらにグレードアップして笑いの質を高めて、貪欲に関西らしさを前面に出したいと思っています。
初演の時に気付いたのは、お客さまと一緒に楽しむことが、お客様も僕たちも一番楽しいんだということ。初演の時には、終演後(カーテンコールで)お客様に動画撮影をしてもらってツィッターに上げて頂いたりしました。ライブかと錯覚したくらいお祭りのように盛り上がりました。
観ていただければ、原作をご存じの方は「あ、あのシーンだ」となると思いますし、原作を知らない方ももちろん楽しめますよ。面白い舞台ですので、気軽に観に来て頂けたらと思います。
―みなさんが上半身脱いで踊っている動画を拝見しましたよ。鍛えておられますか?
はい、ジムに行っています。(笑) 「筋肉へ」という筋肉を称える曲があるんですが、観にきてくれた友人も「筋肉の歌が頭から離れへん」と言うくらいとても耳に残る曲らしいです。「ミュージカルとして成立出来たのかな…」と、とても嬉しいことばでした。
次回はもっとムキムキになっていると思うので、そこも楽しみに来て下さい。(笑)
―「磯兵衛」シリーズはそれ以前の劇団Patch作品とは、ずいぶん違った雰囲気の作品ですね?
これまではシリアスな会話劇やチャンバラ時代劇をやってきましたが、「磯兵衛」はエンターテイメントの王道をいく舞台。誰が見ても…舞台を観たことがない方でも楽しめる作品です。この作品をやってみて「こういう作品の方が劇団Patchらしい」と気が付いたというのはありますね。劇団Patchの「若さと男だけ」という特徴を活かすことができる作品だと感じました。「絶対にオレの方がおもろい!」ってメンバー全員が思っているので、いい感じに切磋琢磨でき、「もっと上へ上へ」という雰囲気になりました。劇団Patchだからこそできた作品かなと思いました。なので、再演となってとても有難いです。
―演出の末満健一さんから稽古中に言われた言葉は?
いっぱいあります。まず、何かをやると「おもんない!」「はい、次」を何度も繰り返されたり…。本当に厳しい言葉だと「なんで役者やってるの?」「もっとないの?」と。やっぱり一番印象的なのは「おもんない!」ですね。今回はギャグ漫画が原作で、僕は主役なので、かなりグサーっときました。でもその言葉を頂いたお蔭でいろいろ模索できました。
―末満演出の方法というのは?
末満さんはだいたい作品の流れを一気に作って、その後に芝居を見ていく…という作り方です。だいたい1週間でまず、全部作ってしまいます。芝居については、基本的にまず役者がやってみる。それを見て…という感じですね。
―母上は磯兵衛をとても愛していますが、母上を演じた中山義紘さんとはいかがでしたか?
「磯兵衛」以前から中山からの愛を感じていましたが、磯兵衛を終えてから、その愛がグレードアップして、怖いくらい愛されています…と、自分で言うのもなんですが。(笑)
―その愛をどんな時に感じますか?
「これはアウトでしょう」と思うのですが、写真を撮っているときにお尻を触ってくるんです。(爆笑)
―母上役の影響でしょうか?
所作などをとても気にして研究して、徹底していましたから、衣装を着た瞬間から女性にしか見えなかったです。
―では最後に皆さんにメッセージをお願いします。
初演を観て下さった方も違う作品として楽しみにして頂けると思いますし、初演を見逃した方も今度は是非、劇場に足を運んで頂けたらと思います。
大阪のみの公演ですが、まず大阪で「磯ミュ」を有名にして、いずれは東京でも「磯ミュ」シリーズを上演したいと思っています。是非応援をよろしくお願い致します!
井上拓哉
1995年11月7日生まれ 兵庫県出身 劇団Patch(1期生)
劇団Patch 旗揚げ公演「OLIVR BOYS」以来、Patch stage8つの全公演に出演。
【映画】「僕は友達が少ない」、神戸三宮映画祭出品映画「ラブラブROUTE21」勅使河原役
【ドラマ】KTV「大阪環状線~ひと駅ごとの愛物語」、NHK「歴史秘話ヒストリア」ジョン万次郎役、EX「刑事110キロ」
大阪夏の陣 400年天下一祭PR武将隊「大阪RONIN5」では真田幸村役 をつとめた。
劇団Patch http://www.west-patch.com/
公演情報
Patch stage vol.9 舞台「磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~天晴版」
脚本・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
出演:劇団Patchメンバー 他
上演日程:2016年10月20日(木)~25日(火) 全9ステージ
会場:ABCホール(大阪市福島区)